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「アルプスのなまはげ」ペルヒテンがやってきた!|オーストリア

オーストリア西部のアルプス地方には、日本の「なまはげ」に似た伝統行事があります。
「ペルヒテンラウフ」と呼ばれるこのお祭りは、若者たちが恐ろしい怪物「ペルヒテン」に扮して、大きな音を立てて集団で村を走り抜け、子供たちを鞭でたたいて怖がらせるというもので、アルプスの村々の冬の風物詩となっています。
平地にあるウィーンでは、このペルヒテンの行事を見る機会はあまりないのですが、聞くところによると、泣く子も黙る、大人でも恐ろしいお祭りとのこと。本場アルプスではないですが、ウィーン郊外の村で、この「ペルヒテンラウフ」を体験できるところがあるとのことで、行ってみました。
目次
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<異形の怪物たちが集う、ペルヒテンラウフのお祭り>
クリスマスに恐怖のイベント
本場アルプスのペルヒテンラウフは、「冬を追い払う」お祭りとして、冬至から1月6日の間に行われます。ウィーン近辺ではあまり厳密ではなく、11月末から1月前半の間に開催されることが多いようです。
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<村の小さなクリスマスマーケット>
会場に到着すると、村のクリスマスマーケットが開かれていて、人々は屋台でグリューワインを片手に、ソーセージを食べて談笑しています。これから恐ろしいイベントが起こる雰囲気ではなく、家族連れの姿も見られます。
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<クリスマスマーケットの売店の側を、角を生やした怪物が歩いてきます>
しばらくすると、どこからともなくガチャガチャ、ガンガンという低い金属音や、重い足音が聞こえてきました。異様な雰囲気の中、会場の端の方で「キャー!!!」という女性の悲鳴や、子供の泣き声が響き、緊張感が走ります。
みるみるうちにクリスマスマーケットの細い通路のあちこちで、巨大な角を付けた恐ろしい形相に、長い毛皮をまとったペルヒテンたちが暴れ始めています。
二本足で立つ獣のような、昔話に登場する悪魔のような怪物たちは、祭りに集まった村人たちにそのおぞましい顔をぐっと近づけ、威嚇します。
スモークがたかれ、赤く照らされたペルヒテンは、どう見ても異世界から来た怪物です。腰からは異様な形をした巨大な鐘と鎖をぶら下げ、歩くたびにガラガラと低い轟音が響きます。手には木の枝でできた鞭を持ち、近くにいると、足やお尻を叩かれるので、逃げ回る人々の姿も。
悪魔のような存在を感じる、恐ろしいガラガラ、ガシャガシャという音と異様な光景。大人でも、目の前でペルヒテンが襲い掛かってきたら、恐怖で身がすくんでしまうほどです。想像の何倍も怖く、軽くトラウマになりそうです。
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<ホラーな魔女は、箒を鞭代わりに叩いてきます>
子供たちは泣き叫んで親に縋り付いたり、逆に強がってペルヒテンに雪玉を投げてみたり、鞭や枝でお尻を叩かれたりと、阿鼻叫喚。大人でも軽く恐怖を感じるのですから、子供は夜眠れなくなってしまいそうです。
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<ペルヒテンの背中についた巨大な丸い鐘と、木の鞭「ルーテ」>
ペルヒテンが持つ木の枝の鞭「ルーテ」は、実は、冬の悪い精霊を追い払うためのもの。冬の間の健康を願って、あえて叩かれに行く人もいます。
ペルヒテンの背中や腰についていて、異様なガラガラという音を立てる、球形やカウベル型の巨大な鐘の音も同じく、冬の災厄を払うためのもの。恐ろしい姿と音は、「怖い姿で冬を乗り越えよう」という風習なのです。
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<火と煙で、どこかの異世界に迷い込んでしまったかのよう>
そのうち、ペルヒテンたちは一か所に集まり、走り回り、暴れまわり始めます。鐘と鎖のガラガラ・ガチャガチャの音も轟音で、火と煙の悪魔集会のようです。これは、人間にとっても怖いですが、悪さをする冬の精霊だって、怖くなって逃げだしてしまうに違いありません。
次第に雰囲気に慣れてきた子供たちもこの集会に交じり、ペルヒテンを追いかけたり、追いかけられたり、子供たちVS怪物たちの雪合戦の様相になっていて、場が和んできます。
ペルヒテンたちも写真撮影に応じてくれたり、中には仮面を取って、親戚や家族と談笑する人の姿も。あんなに恐ろしい怪物たちも、中身は村の強くて優しいお兄さんたちだったんですね。
ペルヒテンって何者?
こんな異様で大迫力のペルヒテンラウフの起源は、暦のお祭りで、キリスト教以前からアルプスに住んでいたケルト人かゲルマン人が風習と言われていますが、詳しいことはわかっていません。
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<アルプスの文化を紹介する資料館に展示されたペルヒテンの仮面>
ペルヒテン ― 山の獣と神々の化身
巨大な角が生えた仮面は15キロ以上もあり、毛皮をまとうペルヒテンの姿は、山の獣や異教の神、伝説上の魔女などが混じりあった姿をしています。
恐ろしい姿をしていますが、アルプスの厳しい冬の災厄から村人を守ってくれるという、頼もしい存在でもあります。
クランプス ― 聖ニコラウスと現れる悪魔的存在
オーストリアには、もう一人、冬に登場する悪魔的な存在、「クランプス」がいます。こちらは、サンタクロースの起源となった「聖ニコラウス(ニコロ)」と一緒に12月6日に現れて、聖ニコラウスがいい子にお菓子をあげ、クランプスが悪い子を鞭で打つ、という役目があります。
ペルヒテンがヤギなどの山の獣をベースにした姿なのに対し、クランプスは真っ黒で、赤い舌が出ていて、悪魔のイメージに似ています。
冬の恐怖と祈り ― 二つの存在の役割
ペルヒテンは集団で村を走り回り、暴れまわり、人々を悪い精霊から守るために叩いてくれますが、クランプスは聖ニコラウスと対になって現れ、悪い子を鞭で打つ、という点も少し役割が異なります。
どちらも怪物のような異形の存在で、登場する時期も似ているので、混同され、伝統として混じってしまっている地域もありますが、オーストリア人も細かい所はあまり気にしていないようです。
まとめ
冬の恐怖のお祭り「ペルヒテンラウフ」いかがだったでしょうか?
小さな村が、悪魔や魔女の世界に飛ばされてしまったかのような、異様な雰囲気に包まれたお祭りでした。
このような恐ろしい風習を通して、病や飢餓などの冬の災厄を追い払おうとした、アルプスの冬の厳しさを想像すると、伝統に隠された、人々の願いや望みが見えてくる気がしますね。
ニーダーエースタライヒ州
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ひょろ
- オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。




























