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野菜や果物から始まる野菜ソムリエ的旅の組み立て方|北海道・夕張郡栗山町の旅

<TOP画像:栗山町の老舗酒造メーカーの「小林酒造」の資料館。秋は紅葉が美しいです>
野菜ソムリエの私が旅に出ようと思う時は、「気になる農産物の生育を見たい」とか、「それらを育てている生産者にお話を聞きたい」ということから始まります。
地図を広げてアクセスを確認し、周辺の観光情報を収集して旅のプランを固めていきます。今回は、ちょっとピンポイントですが、ある農産物をきっかけに3年間通った若い生産者さんの畑とその町を巡る旅をご紹介します。
目次
今回の旅のきっかけ!
ご存知ですか? 「大和ルージュ」という名の赤いトウモロコシ。
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<キラキラ輝くルージュカラーのトウモロコシ>
3年前はまだ試験栽培で、一部の生産者さんが栽培していました。北海道で栽培している人を探していたところ、種苗メーカーから紹介されたのが、北海道夕張郡の栗山町の中仙道怜さんだったのです。その後、ご縁があって今も怜さんの畑に通っています。
彼が住む栗山町。札幌中心部からも新千歳空港からも車で約40分。北海道の中央よりやや西方に位置します。アクセスも良く、歴史もあるステキな町です。
今回は赤いトウモロコシを栽培する怜さんと、彼が住む栗山町への旅をご紹介します。
赤いトウモロコシ「大和ルージュ」との出会い
「大和ルージュ」は見たことがありますか?食べたことがありますか?
「トウモロコシは何色?」と聞いたら、"黄色"と答える人が多いと思いますが、2002年に「ピュアホワイト」という白いトウモロコシが登場します。名前が現すように、白い粒。味はフルーツのように甘く、その後も白いトウモロコシの品種は増えました。
そして、3年前に試験栽培からスタートした赤いトウモロコシ「大和ルージュ」。
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<白色と黄色と赤色のトウモロコシ>
北海道では、他の地域に比べて栽培のスタートも収穫も遅い。沖縄など暖かい地域から大和ルージュに関する投稿を見ていて、北海道でも誰か栽培しているのかな?・・キラキラと輝くルージュカラーの穂、その美しいトウモロコシを見てみたい、食べてみたい。
野菜ソムリエ的好奇心がムラムラと湧き、ご縁があって種苗メーカーの方にその生産者さんを紹介していただいたというわけです。
生産者の情報はインスタから。栗山町在住で、その人は中学3年生だということだけ。彼と連絡が取れてから、「収穫のベストなタイミングに声をかける」ということで、いよいよそのタイミングが来ました。それが2022年9月25日だったのです。
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<穂を包む皮も赤みが出ている赤いトウモロコシ「大和ルージュ」>
丈がほかのトウモロコシよりも高い。その陰から怜さんが現れました。そう、それが初めての赤いトウモロコシと怜さんとの出会いの日。その日から、時々畑にお邪魔し、農作業のヘルプをさせてもらっています。
高校生farmer中仙道怜さんとの出会い
私と出会った2022年9月の時は、まだ中学3年生。当時は「中学生farmer」という肩書きで、祖父の畑を借りて野菜を作り、既に農家さんとして野菜を販売していたのです。
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<メロンはとても力を入れています。そして見慣れない野菜も多数栽培しています>
販売場所はネットと、毎週オープンする母親が経営するパン屋さんの棚などで。
出会ったその日は、年の差もなんのその、野菜談義をノンストップで3時間。3時間も野菜の話題だけで話が続くなんて、野菜ソムリエでもないかも(野菜から脱線してお酒やほかの食べ物の話になっていそう)!翌4月からは、近隣の農業高校に行くという話を聞いて別れました。
変わった野菜や野菜の花も美しい!
4月から彼の高校生活が始まりました。毎日アップされるインスタの情報から、平日は朝5時くらいから登校前と、帰宅後から夜までの時間で農作業をし、土曜日は近くの農家さんのところで自主研修。
日曜日の午前中は母親のパン屋さんのお手伝いをし、午後からは畑へと、毎日、時間をやりくりして農作業をしていることがわかりました。
そのような姿を見ていて、週1回程度ですが、自然と農作業を手伝うようになりました。
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<まだ土が凍っている寒い時期はトレイにタネを落として芽を出させます>
北海道の農業はまだ雪のある時期から行います。しかし、雪が残る凍てつく大地にタネを落とすわけにはいきません。ハウスの中で、トレイにタネを落として小さな芽を出させ、それを土が入ったポットに移植。そのように段階を経て、雪が溶けて大地が受け入れる状況になったら、外の畑に移植します。
寒さに強いものはそのままでもいいですが、弱いものはハウスの中。
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<トレイの中で芽が出たものはポットに移植されてさらに大きくさせます>
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<こちらは怜さんが最も力を入れているメロンの苗。メロンは接ぎ木をします>
スーパーでは見慣れない野菜も多く栽培しています。時にはタネ取りもします。
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<紫スナップエンドウとその花。花がピンクで可愛い!>
そんなことを3年間も続けてきてしまいました。この間まで中学生だったのに、もう高校3年生。そして卒業!ほぼ毎週日曜に出かけ、野菜談義をしながら農作業。農作業をするために通ったというよりも野菜談義をするために通ったという方が正しいかもしれません。
その野菜談義の中心は、「大和ルージュ」。一緒にトレイにタネを播いたり、畑に苗を落としたりして育てていきました。
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<収穫時を見極めている怜さん>
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<トウモロコシの赤ちゃん(ヤングコーン)のヒゲも赤いのです>
「大和ルージュ」は完熟する前は黄色いトウモロコシとあまり変わりませんが、熟してくると芯の部分から赤みを増してきます。
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<トウモロコシご飯の上に、蒸した大和ルージュをトッピングして>
赤色を生かすには茹でずに蒸す。またはトウモロコシご飯がおすすめです。赤い色素はアントシアニンの色。水溶性なのでゆでるとゆで汁に赤い色が移ります。炊き込みごはんにするとご飯にその色と栄養が移って綺麗です。私はこの食べ方が一番好きです。
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<昔の納屋を改装して作ったお母さんのお店。今や怜さんが栽培した野菜の比率が高くなっている?>
ちなみにお母さんのパン屋さんはこちら。パン屋さんの棚で足りなくなり屋外に野菜が並びます。
中仙道農園パン工房 Riren
- 所在地:北海道夕張郡栗山町字南学田376
- 電話:090-6268-8425
- Instagram:中仙道農園パン工房 Riren
栗に由来する栗山町
札幌中心部や新千歳空港から車で約1時間の距離にある栗山町。開拓時代に「角田村」と称され、1949(昭和24)年に町制施行して「栗山町」が発足。
「栗山」という語源は、アイヌ語の「ヤム・ニ・ウシ」に由来し、「栗の木の繁茂しているところ」に起源しています。私がこの町の中で一番通っているのが、「小林酒造」です。
小林酒造
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<この入口の奥に100年の歴史を感じる建物や資料館があります>
確かにお酒が目当てではありますが、明治11年創業、北海道最古の酒造メーカーで、約1万坪の敷地内には100年という歴史ある石倉やレンガ造りの蔵などが並んでいます。それらは国の登録無形文化財に指定され、カフェに利用されていたり、酒蔵は映画のロケ地にも使われました。
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<紅葉のきれいな時期には特に多くの人が訪れます>
小林酒造で使用する酒米は100%北海道米で、お酒は数々の全国日本酒品評会やフランスで開催されたコンクールで受賞しています。
小林酒造株式会社
- 所在地:北海道夕張郡栗山町錦3丁目109番地
- 電話:0123-72-1001
- 公式サイト:小林酒造株式会社
谷田製菓
小林酒造の近くには、大正2年創業老舗菓子メーカーの「谷田製菓」があります。
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<大正時代からあるきびだんごと、小林酒造の吟醸「北の錦」の酒粕を練り込んだ甘酒餅>
大正4年には、大正天皇の大嘗祭にちなんで「大甞飴」を、大正12年には「谷田の日本一起備団合」(きびだんこ)を販売します。その後も、北海道の特産物である牛乳やトウモロコシなどを加えたきびだんごを作り出しています。
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<地元の人気サツマイモの「由栗いも」を使った「畑のキャラメル」も人気です>
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<ちなみにこちらがその「由栗いも」です>
谷田製菓株式会社
- 所在地:北海道夕張郡栗山町錦3丁目134番地
- 電話:0123-72-1234
- 公式サイト:谷田製菓株式会社
栗のお菓子
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<6割が栗という「たっぷり栗のパウンドケーキ」と、カットした栗がコロコロと入っている「栗ころりんマドレーヌ」>
お菓子繋がりでは、「水上農園」の栗のお菓子も人気です。
地域の食材をより美味しく!
前述の中仙道怜さんの野菜を使用する町内の飲食店が増えています。その中の1店をご紹介します。
イタリアンを提供する「くりやまアンド・アム」。2018年にオープンした地産地消にこだわったレストランです。
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<ある日のコースメニュー。栗山町や空知エリアの農産物と空知のワイナリーのワインが楽しめます>
11:30~19:30の間、各時間枠、予約制でコース料理を提供しています(5500円、7700円、11000円、11001円~の4コース)。由仁町がある空知エリアは豊富な農産物や肉のほか、小規模のワイナリーが点在しています。
大喜多幸治シェフによる地域の食材とワインのマリアージュがゆっくりと味わえます。このお店は、前述の中仙道怜さんの野菜も季節ごとに使っています。
くりやまアンド・アム
- 所在地:北海道夕張郡栗山町湯地22-64
- 電話:0123-76-7558
- 公式サイト:くりやまアンド・アム
札幌からも新千歳空港からもほど近い栗山町。小さな町ですが、地域の逸材を温かく見守り、積極的に応援。随所で温かいおもてなしでやさしい気持ちにさせてくれます。
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吉川雅子
- 札幌生まれ、札幌在住。2003年に北海道で最初の野菜ソムリエとなる。現在は野菜ソムリエ上級プロ、青果物ブランディングマイスター、フードツーリズムマイスターなどの資格がある。
野菜や果物が好き。形や色、におい、育って行く過程、美味しさ、そして健康に良いこと。だから興味のある農産物のところに出かけ、その魅力を見聞きし、さらにお楽しみはお取り寄せ。それらを使って料理するのも好きです。




























