【福岡県】タイムスリップ!九州炭鉱文化のふるさと直方の「石炭記念館」に行ってみよう。

昔は「九州や山口エリアは炭田、炭鉱の宝庫」と呼ばれ、日本の近代化を支えてきました。その中心のひとつだったのが、福岡県の筑豊エリアにある直方市です。

炭鉱で働く人々の熱気、昭和の暮らし、そして街に息づく誇り高き文化。今も直方には、その物語をたどれる場所があります。

今回は「九州炭鉱文化のふるさと」ともいえる直方市石炭記念館に行ってきました。圧縮空気式機関車や当時の道具、そして当時の息吹を伝える建物は、まるで時空を越えた旅の入り口。

あなたも炭鉱の町へタイムスリップしてみませんか。

目次

九州は炭鉱王国?

石炭記念館の看板
<石炭記念館の看板>

かつての日本において、「石炭」といえば九州を思い浮かべる人も多かった時代がありました。

福岡県の筑豊炭田、長崎県の端島(軍艦島)や池島、佐賀県の唐津炭田、熊本県の三池炭鉱など、九州各地には数多くの炭鉱が点在し、日本の産業革命を根底から支えていました。

現在、九州内の炭鉱は閉山してしまいましたが、その跡地や資料館、坑道跡、そして炭鉱住宅街の面影は、当時の熱気と人々の営みを伝える大切な文化遺産となっています。

九州を旅すると、まちの片隅や産業遺産の中に「炭鉱王国」の記憶が、今も息づいているのです。今回は、その中で筑豊炭田の中心都市だった福岡県直方市の「石炭記念館」をご紹介します。

直方市石炭記念館とは

日本最大級の石炭塊
<日本最大級の石炭塊>

直方市石炭記念館は、直方市の丘の上に静かに佇む建物です。元は大正11年に建てられた、日本石炭協会の前身である筑豊石炭鉱業組合の事務所。

その後は救護訓練所としても使われ、炭鉱での事故や災害に備える活動の拠点でもありました。昭和43年に「石炭記念館」として一般公開され、今では炭鉱の歴史を学べる貴重な場所になっています。

敷地内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのが屋外展示の数々。坑道で使われていた機械や車両、炭車、採掘道具などが並び、かつての現場の迫力をそのまま伝えてくれます。

屋外展示で出会った「エアーロコ」

エアーロコ
<エアーロコ>

展示の中でも目を引くのが、この淡い緑色の円筒形の車両、圧縮空気式機関車(エアーロコ)です。坑道内で人や石炭を運ぶための車両で、特徴は名前の通り「圧縮空気」で動くこと。

ガソリンや電気ではなく、メタンガス爆発の危険を避けるために安全な空気を動力源としていました。この車両は1つのレシーバーに圧縮空気を溜め、1回で約400メートルを自走可能。

今は錆びを帯びていますが、その姿からは坑内の厳しい環境で働いた年月がしのばれます。

石炭を運んだ鉄の馬「蒸気機関車」から火を使わない力持ち「電気機関車」時代へ

蒸気機関車
<蒸気機関車>

かつて筑豊炭田の主役として、真っ黒な煙と力強いドラフト音を響かせていた蒸気機関車。ドイツ生まれのコッペル32号機や国産SL C11形131号機は、まさに「鉄の馬」と呼ぶにふさわしい存在でした。

大量の石炭や資材を牽き、炭鉱と鉄道駅を何往復も往来したその姿は、地域の暮らしと経済を支える象徴だったのです。実際に目の前に立つと、その車輪の大きさや鉄の質感に圧倒されます。

鉄の表面に触れるとひんやりとしていて、まるで当時の息遣いが残っているような感覚になります。

電気機関車
<電気機関車>

その後、坑内で火を使う蒸気機関車はガス爆発の危険があるため、やがて火を使わない電気機関車が登場します。バッテリー式や架線式の電気機関車は、コンパクトながら力強く、安全性も高いため、坑内や構内の輸送に欠かせない存在となりました。

屋外ヤードに並ぶ両者を見比べれば、蒸気から電気へと移り変わった炭鉱輸送の進化を、目で、肌で感じることができます。

蒸気機関車の迫力を見たあとに電気機関車の前に立つと、そのコンパクトさに少し驚きます。しかし、無駄のない形と頑丈そうな車体は、坑内の暗闇を何度も行き来した頼もしさを物語っているようです。

「火を使わない」という安全性のために進化した姿に、技術の知恵と人々の工夫を感じました。

炭鉱時代の直方のにぎわいとこれから

かつて直方駅前に設置されていた坑夫像
<かつて直方駅前に設置されていた坑夫像>

昭和30年代、炭鉱の最盛期には直方のまちは人であふれ、商店街や市場がとても賑わっていました。給料日には映画館や芝居小屋が満席になり、料亭や食堂は夜遅くまで賑わったそうです。

その面影は、今でも直方駅周辺の商店街に残ります。アーケードには昔ながらの和菓子店や食堂があり、歩くだけで懐かしい気持ちになります。

石炭産業が衰退した今も、直方はその歴史と文化を大切に守り続けています。石炭記念館はもちろん、市内では炭鉱節や産業遺産を活用したイベントも行われています。

さらに、駅前や商店街には昔ながらの風情を残す店も多く、ゆったりと歩くだけで心が温まります。昭和の炭鉱が果たした役割、そしてそこに生きた人たちの存在を感じることができる場所でした。

旅のまとめ

直方市石炭記念館は、歴史をただ知識として学ぶだけでなく、見て・触れて・感じることで当時の空気を追体験できる貴重な場所です。

屋外のエアーロコや模擬坑道、本館展示室の生活資料は、昭和の熱気と炭鉱の誇りを今に伝えてくれます。

私自身は福岡に30年ほど住んでいますが、直方への訪問は初めてでした。記念館の展示物は、特に当時の生活の様子、祭りや行事などがしっかりと写真に残されていて胸に深く刻まれました。
また、スタッフの方の話は軽妙で奥深く、気づけば数時間があっという間。まるで昭和の炭鉱町に小旅行してきたような気分になりました。

歴史好きはもちろん、レトロ好き、産業遺産に興味がある方にも心からおすすめしたいスポット。次の休日は、直方まで足をのばしてみませんか?

直方市石炭記念館

  • 所在地:福岡県直方市大字直方692-4
  • 電話:0949-25-2243
  • 開館時間:9:00~17:00
  • 休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
  • 入館料:一般 100円
  • アクセス:JR直方駅下車徒歩15分JRバス下車徒歩15分駐車場4台あり
  • 公式サイト:直方市直方市石炭記念館 

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みちたび

福岡県在住、旅行会社勤務歴約30年です。現在は、東北地方と九州地方のツアーをコーディネート、ツアーコンダクターとして現地を案内しています。地元の人と一緒に情報発信しています。

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