北海道 上川エリアの2つのニューウエーブ酒蔵(三千櫻、上川大雪)を訪問

北海道で「お酒といえばビール」というイメージが強く、日本酒のイメージはあまりないかもしれません。

もちろん北海道には長い歴史を刻んでいる老舗酒蔵もありますが、近年新たに北海道で日本酒造りを始めたニューフェイスの酒蔵もあるようです。

今回は、その中から北海道の真ん中あたりに位置する上川エリアの2つの酒蔵を訪れましたのでご紹介します。

東川町の三千櫻酒造と上川町の上川大雪酒造です。


目次

最近の日本酒製造事情

現在、日本酒は日本酒製造史上、最高の品質(お酒としてのレベル)なのだそうです。

フランスやニューヨークなど、世界中で日本酒の魅力が認知され、日本酒ファンが増えていると聞きますね。

ただ日本国内に於ける日本酒の消費量は、1973年のピーク時に比べて1/3以まで激減しているのだそうです。

日本酒の消費量減少の原因は、少子化や嗜好の多様化など、さまざまな理由があることでしょうが、消費量が減ってしまうことは日本酒製造業界にとって大きな問題です。

また、日本酒製造を取り巻く環境も、以前とは大きく変わったようです。
その中のひとつが地球温暖化です。

基本的に日本酒は寒い時期に造られます。
それだけ冷涼な気候と環境が日本酒を造るには必要ということです。

冷涼な気候と聞いて、思い浮かぶのは北海道です。
北海道でも昔から日本酒は造られていましたが、日本酒を飲む人口は本州の他の地域に比べるとそれほど多くはなかったようです。

また以前は、北海道で採れるお米は本州に比べると品質が高いとは言えない時代もありました。

しかし近年、米農家さんのたゆまぬ努力や品種改良が進むなどして北海道産のお米の品質は格段に上がりました。

そういうバックグラウンドも要因のひとつとして、北海道にもニューウエーブの酒造会社さんが増えているようです。

今回はその中から北海道の真ん中に位置する上川エリアの二つの酒蔵(三千櫻酒造(東川町)、上川大雪酒造(上川町))をご紹介します。

三千櫻酒造(みちざくら)

明治10年岐阜県中津川で創業し、143年の歴史を刻む老舗酒造会社。

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現在は東川町の田園風景の中に佇む三千櫻酒造。

エントランスでは、大きな杉玉が出迎えてくれます。

創業者は山田三千介さん。お酒の名前は創業者にちなんでいるのですね。

現在の代表取締役社長は6代目の山田耕司さん。

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2020年に岐阜県から北海道東川町へ移転されました。

三千櫻酒造が北海道に新天地を目指した理由は、大きく蔵の老朽化温暖化のふたつだそうです。
日本酒造りは冷却が大事。
そんな状況の中、東川町で"公設民営型"の募集があり、新たな挑戦を決意されたそうです。

※公設民営型とは?

地方自治体などの公共団体が施設を設置し、その運営を民間企業に委託する方式。
これにより、公共サービスの効率化や質の向上が期待される。

東川町は北海道の中でも大雪山系の水が豊富で、中硬水。

因みに上川エリアに含まれる旭川は"北の灘"と呼ばれているそうです。(兵庫県の灘は硬水で日本酒造りをしています。)

日本酒は硬水でも軟水でも造ることができますが、硬水の方が発酵しやすく造りが安定するのだそう。(中津川は軟水)

「これまでの慣れた土地を離れて北の地で酒造りをすることに不安はなかったのですか?」との伺ったところ、

山田社長はこう答えられました。

「ワイン造りは、言うならば農業だと思います。ワインの出来不出来はほぼぶどうで決まる。ぶどうの輸送は大変なので、ワイナリーはその土地を離れることは難しいでしょう。それに対して、日本酒造りは工業に近いと考えます。米はぶどうに比べ、運搬は難しくないので、製造拠点を移してもさほど酒造りに大きな影響はないだろうと思っていました。」と。

三千櫻酒造の一貫した信念は「報恩感謝の心」。

この言葉に込められた思いを山田社長に尋ねました。

「日本酒造りは自分たちだけで到底成り立ちません。関わってくれる人たちを裏切らないように、といつも意識しています。
例えば、PBブランドの製造を依頼されることがありますが、使う米、精米%、造りを他とは分けて、オリジナルの酒を造るようにしています。中身は他と同じ酒を使い、ラベルだけ張り替えるような不誠実な手抜きはしません。」

「ひとことでいえば「良いお酒を造る。」シンプルにこのことに集中しています。東川町に腰を据えたので、北海道産の酒造好適米「彗星」「きたしずく」「ななつぼし」などを積極的に使って日本酒を醸しています。」

  • 水と向き合い、米と向き合い、麹に語りかけ、麹の声をきく

取材後の感想

試飲をさせていただきました。

クリアですっきりした、清らかなお酒という印象を受けました。

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<伺った日にはショップで6種類のお酒が試飲できました>

良い水、良いお米で作られているな、と感じました。
「味もラベルも女性に好まれそうですね」と伺うと、お客さんには女性の割合が多いのだとか。

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統一感があり、カラフルなラベルに「今、旬の酒造会社」という印象を受けました。

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東川町に移転されてまだ数年ですが、日本酒AWARDグランプリ等、各賞を受賞されていました。

三千櫻酒造 基本情報

  • 住所:〒071-1402 北海道上川郡東川町西2号北23番地
  • 電話: 0166-82-6631

上川大雪酒造(かみかわたいせつ)

2016年、酒造りを休止していた三重県の酒蔵の酒造免許を受け継ぎ、これまで酒蔵のなかった上川町で酒造りを始めた酒造会社。
創業者である初代蔵元の塚原敏夫さんは上川町のレストランの副社長をしていました。
上川町は夏は旅行シーズンで多くの人が訪れますが、冬は閑散期。
年間を通じてレストランで働く人たちの雇用を維持できないかと考えていたそうです。
そして「日本酒造りは冬がシーズンだから良いのでは?」と思い至り、日本酒造りの経験はなかったが、挑戦することに決めたそうです。上川町に活気を生み出したいいう思いもあったそうです。

上川大雪酒造は「地方創生蔵」と呼ばれています。

その後、「帯広畜産大学」から日本酒造りの共同研究のオファーがあり、帯広でも酒造りを広げました。
そのため「大学酒蔵」とも呼ばれているようです。

北海道の素材を生かし、6次産業化 地方創生ビジネスを目指しています。

上川大雪酒造の目指すお酒は「飲まさる酒」

"飲まさる"とは、北海道弁で「ついついたくさん飲んでしまう酒」という意味です。

北海道産の酒造好適米(彗星、吟風、きたしずく)と地元で採れる良質の天然水を原料に、地元にこだわった日本酒を造ることで、北海道地域ブランドを全国へ展開することを目指しておられます。

取材後の感想

洗練されたシャープなお酒という印象を受けました。ワイングラスに入れて飲むと合いそうです。

上川大雪酒造の建物も"ザ酒蔵"という印象ではなく、クラフトビールを造っていそうなおしゃれな雰囲気を醸し出していました。

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ショップもおしゃれで、若い女性のお客さんがお酒を買っていかれました。

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訪れた日には4種類のお酒の試飲ができました。

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令和6年、全国新酒鑑評会で初の金賞を受賞されました。

上川大雪 基本情報

緑丘蔵(本社)

さいごに

文化、風土、気候、その時々の人々の嗜好、などさまざまな要因は時代とともに移り変わってゆきます。

昔ながらのやり方を愚直に守り続け、暖簾を繋いでいる老舗の酒蔵があっても良いし、守るところは守り、切り替えるところは切り替えて新たな挑戦をし続けていく酒蔵もあって良いと思います。

北の大地で新たなスタートを切った三千櫻酒造と上川大雪酒造から目が離せそうもありません。

※この記事は(公社)北海道観光機構道北地域分科会、あさひかわ観光誘致宣伝協議会の協力により、取材&制作しています。

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ローマと北京に駐在歴あり。海外渡航歴は36か国。日本は47都道府県踏破。「お客さんが”笑顔”で買いに来る商品」を扱う仕事がしたいと旅行会社に入って三十余年。今はその経験を基により多くの人に「旅の魅力」を伝えるべく“たびこふれ”にいます。モットーは「その土地の温度が伝わるような血の通った記事を書く。」旅はカタチには残りませんが生涯忘れられぬ宝物を心に残してくれます。たびこふれを通じて、人生を豊かに生きる力を秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきます。

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