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【旭川・上野ファーム】北海道の草花が創りだすドラマチックガーデン

北海道のほぼ真ん中、旭川市にある上野ファームは「北海道を代表するガーデン」のひとつです。
お米農家の上野さんがなぜこのような花のガーデンを始めようと思ったのか?
大雪~旭川~富良野~十勝へと約250km続く北海道ガーデン街道は、どのようにして生まれたのか?
北海道を旅するなら必見のこのガーデン、ご紹介しましょう。
>>北海道ガーデン街道の上川エリアの3つのガーデン(風のガーデン、大雪 森のガーデン)を紹介した記事はこちら ↓
(取材日:2025年7月30日)
目次
上野ファームとは?
北海道を代表するガーデンのひとつ。
北海道のほぼ真ん中の旭川市に位置しています。
季節によって魔法のように変化するドラマチックガーデン。
北国の気候風土で育つ草花が作り出すくつろぎの空間に浸れます。
上野ファームの起こり
オーナーの上野 砂由紀(うえのさゆき)さんは言います。
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<上野ファームオーナーの上野 砂由起さん(右)と妹の江里奈さん(左)>
「そもそも始まりは、観光のお客さん向けに作ったガーデンではないんです。上野家は米農家でした。昔、私たちが作ったお米はすべて農協に卸していました。それがある時から直接お客さんにお売りすることができるようになりました。そこで、わざわざここまで買いに来てくださるお客さんに楽しんでもらいたい、農家の姿を見てもらいたいと考えているうちに、『じゃ、花でも植えてみようか』ということになったんです。」
「うちは造園業はやっていなかったのでズブの素人が見よう見まねの手作りで始め、試行錯誤しながら少しづつ増やしていったんです。マザーズガーデン(後述)がこの上野ファームのスタートでした。」
「その当時(約40年前)、ガーデニングと称して外国風の庭園造りは巷でも話題になり始めていましたが、米農家で花を育てるところなど周りに一軒もありませんでした。上野ファームのコンセプトとして「誰かの家に遊びに来た」と感じてもらえたらうれしいです。花を見るだけでなく、庭の空間や散策を楽しんでもらいたいですね。」
「うちは宿根草(※)がメイン(約90%)でその都度植え替えはしていませんが、訪れる季節によって見られる草花が違います。
ですから1年を通して草花や自然を楽しんでいただけます」(冬季は休業)
上野ファームのようなガーデンは、上川エリア~十勝エリア間に点在していました。
それぞれが創意工夫をして独自文化のガーデンを創っていましたが、ある時「ドイツのロマンチック街道のように北海道ガーデン街道なんていう名前をつけて土地と土地を繋いでみたら面白いんじゃないだろうか」という話が起こり、北海道ガーデン街道は生まれたそうです。
※宿根草とは?
一度植えると毎年開花を繰り返す植物で多年草の一種。一年草は種をまいたその年のうちに花が咲き、枯れていくのに対して、宿根草は植えっぱなしで毎年同じ時期に花が開花し、季節感を感じさせてくれるのが魅力。
根が一年を通して育ち、休み、そしてまた再生する、というのが宿根草の特徴であり、本州では気温が高いため、宿根草は育ちにくく一年草が中心となる。宿根草は気候が冷涼な北海道ならではの草花といえる。
上野ファームへの行き方
- 車:旭川北I.Cから約20分。JR旭川駅から車で約30分。旭山動物園まで車で約15分
- 列車:JR石北線「桜岡駅」下車 徒歩15分 JR宗谷線「永山駅」下車、タクシーで10分
上野ファームではなにをする?
単にきれいに植えられている花を愛でる、ということではなく「花のある風景」を眺めながら森を散策したり、そこに居るだけで豊かな時間を過ごすことができます。
敷地内には射的山(標高171m)があり、少し急な坂を登った山頂には虹色の椅子、ブランコ、お地蔵さまが居て、360度の眺望が楽しめます。
上野ファームの見どころ(WEBサイト、パンフレットより引用)
ガーデンは9つのエリアで構成されています。
上野ファーム公式サイトのトップページには「入園」ボタンがあっていい感じですよ。
ノームの庭
美しい木々や素朴な美しさをもつ野草と色鮮やかな花たちが混じりあう自然風庭園。
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メルヘンの世界です。
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ここは真夜中にこっそり庭仕事を手つだうノーム(小さな妖精)が住んでいます。
白樺の小道
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ではこの白樺の小道、一緒に歩いてみましょう!
緑と白の色彩が美しい白樺の小道。春は白樺の隙間からスイセンやチューリップが顔をだし、華やかな雰囲気になります。
ミラーボーダー
鏡合わせのように左右対称に宿根草を植え込んだ帯状の花壇。
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そよ風とともに花の間を通り抜ける気分は、まるで蝶のように爽快です。
ではこのミラーボーダーを一緒に通りぬけて行きましょう!
サークルボーダー
大きな円を4つのブロックに分け、それぞれテーマカラーを決めて植え込んでいる庭です。植物がもつ微妙な色の変化や表情をバラと一緒に楽しめます。
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ロングボーダー
全長50mの長い花壇。高低差のあるでこぼこな植栽がまるで愉快な音楽を奏でるようにリズミカルな風景を演出しています。
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<ロングボーダー 上野ファーム公式サイトより>
マザーズガーデン
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庭づくりの第一歩はここから始まりました。形にとらわれないダイナミックな植栽が特徴で、植物たちの楽園のような庭です。
木の声が聞こえる庭
小さな池の周辺に、落ちついた葉色の植物を中心に植えています。風が吹くと、セイヨウハコヤナギの大木から囁くような葉音が聞こえます。
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ここを登っていくと射的山にたどり着きます。
射的(しゃてき)山
上野ファームの後ろにぽっこりと見える丘"射的山"。標高171m。
以前は屯田兵の射的訓練場として使われてきた歴史のある山で、石器なども出土した遺跡でもあります。頂上まで登ると「虹色の椅子」や「空のブランコ」があります。
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射的山山頂からの風景を動画でお楽しみください。
ノームの散歩道
「ノームの庭」から「射的山」までを結ぶ散策路。「森の扉」を開けて木立や木のトンネルをくぐり抜ける、秘密の散歩道をお楽しみください。
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<ノームの散歩道 上野ファーム公式サイトより(撮影:6月)
NAYA cafe(ナヤカフェ)
古い納屋(お米を貯蔵していた)をそのまま生かして改装したカフェ。
軽食やスイーツを提供し、ガーデン内でもピクニックのように飲食を楽しめます。
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取材後の感想
「私は花に詳しくないので。。。」とよく言います。
私もその一人です。
しかし今回お話を伺って「花に詳しい」とは、花の名前をたくさん知っているとか、そういう話ではない、ということがわかりました。
花の名前を知らなくても花は楽しめるのだと。
花や草を見て、匂いを嗅いで五感で「なんかいいな」と感じる、気持ちが落ちつく、それも花の楽しみ方です。
実際上野ファームでは、自然の景観を大切にしているため、花の名のネームプレートを射していません。
上野ファームは形式としては「英国風庭園」ですが、上野さんは言います。
「イギリスと北海道では育つ花も違います。北海道ならではの草花を北海道で育てるという意味で「英国風ガーデン」ではなく「北海道ガーデン」だと思っています」と。
また、花を楽しむとは花びらだけではなく草や葉も含めて楽しむということを教わりました。
ガーデン西口の入り口を入ると鶏の鳴き声が響きます。農家の朝、という雰囲気です。
上野さんの「観光地として始めたわけではない」というお話が印象に残りました。
ビジネスの手段というよりも、ここまで来てくれたお客さんを花や自然でおもてなししたいという気持ちが伝わってきました。
宿根草で1年間根が育つ過程(花の持つ力)を楽しむ、見守る。
ガーデン内のすべてのゾーンがパーフェクトに満開なわけではなく、休んで次の季節を待っている草花もいる。
自然のままの花の美しさも大切にしているため、枯れた花も敢えて切らずに残している部分もあります。
一番良い状態の花を持ってきて人工的に造られているガーデンは一見とても映えますが、どこか作り物のように感じます。
上野ファームは、生き続けている花(根)の1年を通じての変遷(人生)を見守り、楽しむ
射的山がとてもよかったです。
山というより小高い丘ですが、頂上から見える旭川や当麻の町並みが360度眺めることができ、ちょっとした山歩きも楽しめます。
ガーデン内には、途中腰をおろせる椅子やソファもあり、単に順路を1周するのではなく、1日中そこに居る時間と空間を楽しめます。
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たくさんの蝶が草花の周りを飛び交っていて、蝶にとってもここが楽園なんだろうなぁと感じました。
綺麗な花を植えて映える庭園というよりは、土にしっかり根を張って呼吸し、生きているガーデンという印象を受けました。
上野さんは別記事で紹介する富良野の「風のガーデン」のデザインの依頼をあの倉本聰さんから受けた方でもあります。
⇒風のガーデンについて詳しく書いた記事はこちらをご覧ください。
>>【富良野・風のガーデン】ドラマのロケセット用ではなく、このガーデンからドラマが生まれた
北海道ガーデン街道の上川エリアのガーデン(風のガーデン、大雪 森のガーデン)を紹介した記事はこちら ↓
>>「北海道ガーデン街道」上川エリアの3つのガーデンを巡る旅
【上野ファーム基本情報】
- 住所:北海道旭川市永山町16丁目186番地
- 電話:0166-47-8741
- ガーデン公開期間:2025年度 4月18日(金)〜10月19日(日) 予定
- ガーデン公開時間:10:00〜17:00
- 定休日:ガーデン公開期間中は休まず営業
- 入園料:大人1000円(高校生以上)中学生500円 小学生以下は無料
- 上野ファーム公式サイト
※この記事は(公社)北海道観光機構道北地域分科会、あさひかわ観光誘致宣伝協議会の協力により、取材&制作しています。
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シンジーノ
- ローマと北京に駐在歴あり。海外渡航歴は36か国。日本は47都道府県踏破。「お客さんが”笑顔”で買いに来る商品」を扱う仕事がしたいと旅行会社に入って三十余年。今はその経験を基により多くの人に「旅の魅力」を伝えるべく“たびこふれ”にいます。モットーは「その土地の温度が伝わるような血の通った記事を書く。」旅はカタチには残りませんが生涯忘れられぬ宝物を心に残してくれます。たびこふれを通じて、人生を豊かに生きる力を秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきます。




























