ギリシャの復活祭(パスハ)ギリシャ正教最大の華やかな祝祭とは?

ギリシャ正教 復活祭 パスハ イースター

<TOP画像:エピタフィオスが飾られたギリシャ正教会の内部>

ギリシャの宗教はギリシャ正教(キリスト教東方教会の一派)で、国民のほとんどが、ギリシャ正教徒です。「復活祭(ギリシャ語でパスハ、英語ではイースター)」は、ギリシャ正教の中でもクリスマスと並ぶ神聖な祝祭日とされ、みんな、ウキウキわくわく気分で心待ちにする行事!

それもそのはず。キリスト様が十字架にかけられてから、再びよみがえったとされる「奇跡の日」だからです。カトリックやプロテスタント(西方教会)の復活祭とは異なり、ギリシャでは、ギリシャ正教ならではの伝統や習慣が色濃く残っています。

復活祭前のこの時期は、冬から春の訪れと重なり、ギリシャの町や村は、色々な宗教儀式と賑やかな祭りが繰り広げられます。観光客にとっても、この期間にギリシャを訪れると、普段とは違う地元の文化を体験でき、楽しい旅の思い出になるのではないでしょうか。

今回は、ギリシャ正教の復活祭の伝統、主要な行事、そして観光客が楽しめる体験について紹介します。

目次

ギリシャ正教の復活祭とは?

ギリシャ正教会の天井画に描かれたキリスト像 
<ギリシャ正教会の天井画に描かれたキリスト像>

ギリシャの大多数の人々は「ギリシャ正教」であり、生活の中に宗教が根付いています。その信仰の中心にあるのが「イエス・キリストの復活」。復活祭は、キリストの受難と死を悼み、そして復活を祝うもので、ギリシャ正教において最も神聖な祝日です。

復活祭の日取りは、西暦325年の第1回「ニケア公会議」の決定を元にして決められます。 「春分の日の、次の満月後の最初の日曜日」が復活祭と定義されるのです。

そのため、日付は固定ではなく、毎年、異なる移動休日です。ギリシャでは、4月中旬から5月初旬になることが多いです。
ここでややこしいのは、キリスト教でも、西方教会と東方教会の暦の解釈が異なることです。

キリスト教は、1054年に東方教会と西方教会に分裂しました。カトリックやプロテスタントは西方教会、ギリシャ正教は東方教会に属しています。

西方教会の復活祭が「グレゴリオ暦」を元に決められるのに対し、ギリシャ正教(東方教会)の復活祭の日付は「ユリウス暦」に基づいて決定されるため、西方教会よりも遅くなるのが一般的。毎年変わりますが、2025年の今年は、たまたま、西方教会の国(フランス、スペイン、イタリアなど)と、ギリシャ正教の復活祭は4/20で同日となりました。

復活祭までの流れと主要な行事

ギリシャの復活祭は単なる1日のお祭りではなく、数週間にわたる準備と儀式を伴います。ここでは、復活祭に向けた一連の行事を紹介します。

1. アポクリエス(カーニバル)

ザピオン公園でのアポクリエスイベント
<アテネ・ザピオン公園でのアポクリエスイベント>

まず、復活祭までの節食期間が始まる直前に、アポクリエスと呼ばれるカーニバル期間(2~3月頃)があります。ペロポネソス半島のパトラのカーニバル(2025年は3月2日がハイライト)が特に有名ですが、各地で仮装パーティーやパレードなどが行われ、国中がお祭り騒ぎになります。

仮装衣装レンタル用の季節限定店舗が街にできて、子どもたちは、毎年、何の仮装をするかワクワクしています。

パトラのカーニバル名物の巨大な山車
<パトラのカーニバル名物の巨大な山車>

2. 40日間の「大斎(メガリ・サラコスティ)」

どんちゃん騒ぎのカーニバルが済んだ翌日は、一転して「カサラ・デフテラ(聖灰浄月曜日、2025年は3月3日)」という断食開始の日。人々は海辺や公園で凧揚げをしたり、甲殻類を中心としたシーフード料理やタラモサラダなどを楽しみます。

ギリシャの凧
<ギリシャの凧は6角形が多い>

そして、それに続く復活祭の準備は「大斎(メガリ・サラコスティ)」と呼ばれる40日間の節食期間です。この期間中、敬虔なギリシャ正教徒は肉、魚、乳製品、卵を避け、菜食中心の食事をとります。

これは、キリストの苦しみをしのび、自己浄化を行うためのものです。我が家などは、ほとんど従っていませんが。。。。人によっては、かなり厳しいルールや習慣に従っている人もいます。

ギリシャでは、節食カレンダーといって、日ごとに食べるもの、避ける物が指定されている暦があるのです。ワインがダメな日、オリーブオイルも禁止の日などもあるんですよ。

3. 聖週間(メガリ・エヴドマダ)

復活祭の1週間前から始まる「聖週間(メガリ・エヴドマダ)」は、最も重要な期間とされ、各日ごとに特別な儀式が行われます。

  • 聖木曜日(メガリ・ペンプティ)

伝統的に、この日に「赤い卵」を染めます。赤色はキリストの血を象徴し、復活の希望を意味します。スーパーでは染色されたゆで卵も売っていますが、染料を買ってきて家で染める家庭も多いです。

我が家も、子供が小さい時は、赤く染めて、その上にシールを貼ってかごに盛り、復活祭前の飾りつけとして楽しみました。

ワインと赤い卵を復活祭
ワインと赤い卵を復活祭のインテリアに/by_Alexandra_Torro_Unsplash>

  • 聖金曜日(メガリ・パラスケヴィ)

キリストの受難と死を悼む日であり、多くの人が喪に服します。夜には「エピタフィオス(キリストの墓を模した山車のようなもの)」が各教会から出発し、信者がキャンドルを持って行列し、しめやかな音楽と共に街中を練り歩きます。

エピタフィオス
<街を練り歩くエピタフィオス>

  • 聖土曜日(メガロ・サヴァト)

復活祭の前に教会前に集まった人々 
復活祭の前に教会前に集まった人々>

深夜、キャンドルを手に教会に人々が集まり、司祭の祈りや聖歌などを聞きながら、復活の瞬間を待ちます。深夜0時、司祭が「キリストは復活した!(クリストス・アネスティ)」と宣言し、信者たちは「本当に復活した!(アリソス・アネスティ)」と答えます。

この瞬間、花火や爆竹が鳴り響き、人々は互いに祝い合います。この風景を見ると、わたしはいつも日本の新年を思い出します。

<復活祭の花火と爆竹>

人々はランパダというキャンドルに教会から聖火をいただき、家に持ち帰って、家の各所に聖火で十字を切り、お清めします。

復活祭の食文化

復活祭の食事は、ギリシャの豊かな食文化が詰まった豪華なものになります。

パイダキャ 羊料理
<paidakia(パイダキャ)/羊料理はギリシャに来たらぜひトライしてみて>

1. マギリッツァ(羊の内臓スープ)

聖土曜日の深夜ミサの後、人々は「マギリッツァ」と呼ばれるスープを食べます。これは、羊の内臓とハーブを煮込んだもので、断食明けの最初の食事とされています。これから肉をがっつり食べるための、予行演習のようなものでしょうか。

マギリッツァ 羊の内臓スープ
<滋養を感じるマギリッツァ(羊の内臓スープ)>

2. ココレツィ(羊の内蔵料理)

羊の内臓を串に刺して焼き、輪切りにして出す伝統料理で、復活祭の祝いに欠かせません。ほろ苦いようなレバーと腸の組み合わせ、炭火焼きの香ばしさがなんとも言えず、好みは分かれますが、好きになるとクセになる味わいです。

3. 羊肉(ラム)料理

復活祭の日曜には、田舎では羊の丸焼きを家族や友人と囲んで食べるのが伝統でした。昔は、羊1頭を市場で買い、炭火を起こし、早朝から家族が手分けして庭などで半日がかりでグルグル手で回転させながらジワジワと焼いたそうですが、最近では電動の回転機ができたので、この作業も楽になりました。

今でも、庭のある家では一頭グリルをしたり、バーベキューをしたり、普通の家ではオーブンで焼いたり、レストランに行ったり、過ごし方は色々ですが、それぞれの家族でご馳走をいただきます。パイダキャと呼ばれるスペアリブも、かなり脂っぽいですが、おいしいです。

パイダキャ
<我が家の大好物 パイダキャ>

4. 赤い卵(コキノ・アヴゴ)

食卓には、赤く染められた卵が並び、家族や友人と「卵割りゲーム」を楽しみます。これは、キリストの復活と生命の再生を象徴しています。卵を手に持ち、上部と下部をお互いにぶつけあって、上下両方割れた方が負けとなります。

聖なる火と共に盛られた赤い卵
<聖なる火と共に盛られた赤い卵>

5. ツレーキ、イースタークッキー

ほんのり甘い、ツレーキというパンも定番です。1年中売っているパンですが、復活祭バージョンとして、赤い卵が載っているツレーキが売られます。また、サクサクのイースタークッキー、ウサギやひよこモチーフのチョコレートなども、パン屋さんやお菓子屋さんの店先に並び、復活祭の雰囲気を盛り上げています。

ツレーキ パン
<癖になるツレーキ、復活祭前には赤い卵が華やぎを添える>

復活祭時期の面白体験は?

1. コルフ島の「壺投げ」

ギリシャのコルフ島では、復活祭の朝に「壺投げ」というユニークな儀式が行われます。バルコニーから壺を外に投げて割ることで、悪霊を追い払い、新たな命を迎えるという意味が込められています。

かなりワイルドで壮観なお祭りなので、いつも怪我人や掃除の手間などを心配してしまいます。行かれる方は、くれぐれもお気をつけて。

コルフの復活祭 壺投げ
コルフの復活祭の風景/by-daniele-fasoli-unsplash>

2. アテネや島の教会での教会見学

ギリシャでは、どこにいたとしても、各町や島の教会では、復活祭前の1週間は、様々なミサが行われています。ミサに参加するのは自由ですし、復活祭前の木曜日頃に各教会で飾られる「エピタフィオス」というキリスト様のお墓を模したものは、教会によって様々な花で華やかに飾り付けられ美しいので、色々な教会の中に入ってみるのも楽しいでしょう。

復活祭前の金曜日、夜に行われるエピタフィオスの行進は荘厳で圧巻です。エピタフィオの中にはキリスト様のなきがらがあるという設定で、信者がキャンドルを持ちお葬式に参列しているという象徴的な行事です。

ミサ
<教会内は誰でも入れますが、ミサなどの邪魔にならないように>

エピタフィオスの行進を報道するテレビ
<エピタフィオスの行進を報道するテレビ>

3. 花火と爆竹の迫力満点の祝祭

復活祭前日の23:30頃から教会の前に行けば、厳かな復活祭の様子を見学することができます。アテネ中心部にいる場合、シンタグマ広場近くの「ミトロポレオス大聖堂」は特に盛大で、復活の瞬間に各地で花火が打ち上げられます。

最近改修されたばかりで、地下にミュージアムもあります。

ミトロポレオス大聖堂
<大統領就任式や有名人の葬儀なども行われるミトロポレオス大聖堂>

ミトロポレオス大聖堂

  • 住所:Pandrossou 1, Athina 105 56 ギリシャ
  • 開場:24時間
  • 入場料:無料

まとめ

ギリシャの復活祭(パスハ)は、宗教的な厳かさと、華やかなお祭りの両方を兼ね備えた特別な祝祭です。伝統的な儀式、美味しい料理、独特の文化体験が満載で、旅人にとっても忘れられない思い出になるのでは?

2024年は、外国からの友人とプラカのレストランに行きました。ライブ演奏もあり、とても良かったです。復活祭当日と翌日の月曜日(2025年は4月20日・4月21日)は、ほとんどの店や遺跡、ミュージアムも休みですが、プラカやモナスティラキ周辺のレストランは開いているところもありますので、ぜひ復活祭の陽気な雰囲気と、羊の料理を楽しんでください。

<レストランではライブ演奏も>

復活祭前の金曜日、土曜日も、営業時間が変則的になるところが多いので、観光や買い物をする際には、宿泊ホテルのフロントなどに確認すると良いでしょう。

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サラサ

ギリシャ人と国際結婚後、2000年からアテネに移住。趣味は旅行と食べ歩き。フリーランスでウェディングコーディネーター、通訳アテンド、折紙講師、ライターなどをしています。サントリーニウェディングの「グリークメモリー」運営、著書「太陽とエーゲ海に惹かれて きらめきの国ギリシャへ」(イカロス出版)

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