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【私の好きな日本遺産】伝統と交流の歴史が残る石の島「小豆島」 〜現代に息づく石の風景もご紹介〜香川県

こんにちは!2024年6月に日本遺産検定を取得し、日本遺産ソムリエとなった土庄(とのしょう)雄平です。「日本遺産」とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーのこと。現在、全部で104のストーリーが認定されています。
連載【私の好きな日本遺産】では、これまで全国を旅した経験の中から、筆者イチオシの日本遺産をピックアップし、その魅力や名残あるスポットをご紹介したいと思います。第7弾は、石切と交流の歴史が残る「小豆島」 です。
目次
建築文化を支えた花崗岩の名産地・瀬戸内
瀬戸内地域はかつて花崗岩の名産地として名を馳せ、その美しさと耐久性から多くの歴史的建造物や庭園に用いられました。特に江戸時代から明治時代にかけて、多くの石工がこの地域で活躍し、花崗岩を使った建築や彫刻が盛んに行われました。
この地域の花崗岩はその質の高さから全国的に評価され、多くの都市のランドマークにも使用されています。
切り出し途中の石材が醸すミステリアスな風景
その先駆けと言えるのが、大阪城の石垣です。徳川幕府が西国・北国の大名を動員し、約10年かけて再建したこの石垣には、瀬戸内の離島から運ばれてきた花崗岩が大量に使用されています。
小豆島も花崗岩の供給地の一つであり、この伝統は現在でも地域の文化と歴史に深く根付いています。その象徴的な場所が、島の北西部にある「天狗岩丁場」です。
大阪城の改修のために切り出されたものの、使用されなかった石材が今でも散在しています。整った形の石や、矢穴(石を切り出すときに掘られた穴)が刻まれた石など、山中に突如として現れる石切の風景は、まるで異世界のようです。
天狗岩丁場の入り口は、春には桜の名所としてひそかに話題を呼んでいます。歴史の痕跡に寄り添うように咲く桜は、まるで小豆島の歴史的背景に華を添えているようです。
天狗岩丁場
- 住所:香川県小豆郡小豆島町岩谷
- 料金:無料
- 電話番号:0879-82-7021(小豆島町商工観光課)
- 公式サイト:天狗岩丁場
石から信仰へ発展。神が宿る重岩
島の繁栄に欠かせない石が信仰に影響を与える点が興味深いです。その象徴が、小瀬石鑓神社のご神体である「重岩(かさねいわ)」でしょう。
麓から約20分歩くと、小さな祠が祀られた巨大な岩が現れます。不思議なことに落ちることなく絶妙にバランスを保っており、その姿はミステリアス。人が意図的に積み上げたのか、自然の力でそうなったのかは未だに謎に包まれています。
先ほどご紹介した天狗岩丁場の他に、小豆島には、大阪城の石垣に使われた石を切り出した場所が約20箇所ほど残っており、重ね岩のある小瀬の丁場もその一つだと伝わっています。
なぜこうなったか分からないからこそ、様々な可能性が考えられ、想像が膨らみますね!小豆島の美しい海や絶景パノラマを楽しめるという意味でもぜひ訪れてほしいスポットです。
重岩(かさねいわ)
- 住所:香川県小豆郡土庄町小瀬
- 電話番号:0879-62-7004(土庄町商工観光課)
- 料金:無料
- 公式サイト:重岩
小豆島の交流を石で表現。島中にみられる石の絵手紙
小豆島には、良質な花崗岩と全国から募集した絵手紙をコラボレーションさせた「石の絵手紙」が点在しています。これらの作品には、地元の石工職人の伝統技術と作家たちの想いが融合した、個性豊かな表現がなされています。
特徴的なのは、地元民や県外の人々が小豆島への思いを共に綴っている点です。例えば、土庄港の「灘のけんか祭り」を描いた絵手紙の読み手は、自分の地元の祭りと比較しながら、小豆島とのつながりを印象深く伝えています。鮮やかな絵と詩的な文章が心に響きますね。
小豆島には40以上の「石の絵手紙」が設置されており、その多くは土庄港から大部港をつなぐ北西部のエリアに集中しています。別名「小豆島 石の絵手紙ロード」と呼ばれている県道26号線沿いをぜひドライブしてみてください。
小豆島の至る所に設置されている「石の絵手紙」。それは、かつて日本全国と石材でつながり、船を介して様々な人が出入りした、日本遺産に認定されたこの島の「つながり」の歴史を、現代からフォーカスするものと言えるでしょう。
小豆島 石の絵手紙ロード
住所:住所:香川県小豆郡土庄町小海 県道26号線
公式サイト:小豆島 石の絵手紙ロード
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土庄雄平
- 1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部文化史学科・英文学科卒。サラリーマンの傍ら、自転車旅&登山スタイルで、日本各地を駆け巡るトラベルライター。春は桜を愛でながらサイクリング、夏は冷涼な北日本へ自転車で大冒険、秋は秘境の紅葉を求めて山登り、冬は輝く樹氷と白銀の世界に魅了される。そんな自然の中へ身を投じる旅がルーティーン。