ウィーンの夏は渓谷で涼む!ハイキングは「クラム」に行こう!

日本に比べてウィーンは涼しいでしょう?とよく聞かれますが、一概にそうとも言えません。気温が上がってきた昨今、エアコンが日本ほど普及していないので、知恵を絞って猛暑から逃れる工夫を重ねる日々は、日本とはまた異なる苦労があります。

猫が家で一番涼しいスポットを陣取るように、ウィーンの人が見つけた涼しいスポットとは、どこだったでしょうか?今回の記事では、オーストリアの渓谷から、少し涼しさをお裾分けできればと思います。ハイキング好きな方は、オーストリア人らしい「涼むためのハイキング」の緩さや醍醐味を、感じてみてください。

目次

ヨハネスバッハクラムに架かる橋
<ヨハネスバッハクラムに架かる橋>

家庭でのエアコン事情と猛暑対策は?

欧州は日本と比べて湿度が低いので、欧州の33度は日本の29~30度程度に感じます。旅行で来られる方は、日本の感覚では3~4度ほど涼しく感じると覚えておくと便利かもしれません。

しかし、30度を超える日が続くようになったのは、この6,7年ほどの話。そのため、ほとんどの家ではまだエアコンがなく、庭のプールや地下室で涼むなどの対策を取っている人が多いです。家にエアコンもプールもない人は、ドナウ川や湖、公共プールなどの水辺で一日過ごす場合が多く、夏休みの水辺は大賑わいです。

観光地やレストランのエアコン率は年々上がっていますが、自然史博物館など現地人にも観光客にも人気の博物館でも、エアコンはついていなかったりします。35度を超えるような日に屋内で涼みたい場合は、事前にエアコンの有無の確認をした方がいいかもしれませんね。

こうして、エアコンがない前提で、数少ない涼しい場所を探しまわることになる夏のウィーン。しかし混雑するプールにも行きたくない。そんな人は、1時間ほど車を走らせて、アルプスの避暑地や谷川を狙うのがおすすめです。今回は、そんな穴場の渓谷ハイキングがどれほど涼しく感じるかをご紹介します。

涼めるハイキングのキーワード「クラム」とは?

日差しの強い、外気温35度の7月の日曜日。家の中は朝から30度を超え、気が付いたら頭はくらくらしています。こんな時にウィーンの人は、常備してある「ウィーン近郊川沿いハイキング」の本を取り出します。白羽の矢を立てたのは、ウィーンから南へ車で1時間の「ヨハネスバッハクラム」という渓谷。電車とバスでもウィーンから1時間強でアクセス可能です。

ハイキングガイドブックの「クラム(渓谷)」とつくスポットは、水遊びできるせせらぎや滝、そそり立つ岩壁に橋などの美しい景色も相まって、涼しく見どころの多い場所が多いです。

車を走らせ、ハイキング客用の無料駐車場に車を止めると、すぐそばに「ヨハネスの泉」という湧き水があります。1884年からここは地域の水道の源泉にもなっていて、蛇口からは飲み水も汲むことができます。この周辺の気温はまだ35度。源泉の水はとても冷たくておいしいです!ここで水筒にたっぷり水を汲んで出発です。

ヨハネスの泉の源泉
<ヨハネスの泉の源泉>

しばらくは小川沿いに平坦なハイキングコースを歩きます。まだまだ暑いなあ・・。渓谷はどこだろう?と思いながら歩いていると、突然前方から冷気を含んだ風が吹いてきました。あまりの温度差に、体が引き締まります。そして急に左右にそびえたつ岩壁。気が付いたら私たちは、28度の涼しい風が吹く、美しい渓谷に来ていました。

渓谷の風景
<渓谷の風景>

渓谷に入ると、道は岩だらけになり、橋や階段が設置され、子どもでも歩きやすく整備されています。高い岩壁は、薄灰色の石灰岩。岩から生える巨木は圧巻です。ロッククライミングのメッカとしても有名で、クライミングをしている人も多く見かけます。

クライミングコースを受ける人々
<クライミングコースを受ける人々>

ここは、19世紀にはすでに、この先にある石炭鉱山へのアクセスとして、鉱夫たちが通っていた道だそうです。戦後、橋や階段などを整備して以来、ウィーンの人たちに愛されるハイキングコースとなっています。

この渓谷の出口では、12月にはクリスマスマーケットが開かれます。それほど人気のコースということですね。私も一度来たことがありますが、黄昏時のハイキングの終わりに、クリスマスマーケットの屋台の光がほのかに見えたのが非常に印象的だったのを覚えています。

自然の作り出す温度差の恵み

渓谷自体は1kmと短いですが、6つの橋と整備された階段、ドラマチックな岩壁と変化に富み、ゆっくりと涼みながら自然に触れるにはぴったりのハイキングコースです。この自然の冷房をできるだけ長く楽しむため、ベンチで休憩したり、水に足をつけたりして時間を過ごします。

道中、川で水遊びができるスポットは多数あり、水遊び用の靴に履き替え、着替えやタオルを持参して川遊びする子どもたちの姿も見られます。水温は20度ほど。アルプス源泉に近い川は、夏でも足がしびれるくらい冷たいですが、この渓谷の川は程よく冷たく、長く入っていても大丈夫。大人も涼しい風が心地よいベンチで、ゆっくりと時間を過ごします。

川遊びにぴったりの谷川
<川遊びにぴったりの谷川>

渓谷を抜けて視界が開けると、ヤギの世話をしている農家を見かけましたが、急にまた35度の温かい空気に触れ、現実に引き戻されたようでした。温度差に驚いて、そのまま踵を返して渓谷に戻ります。なるべくこの渓谷に長くいて、涼しさを体に取り込みたい・・と、自然に足取りもペースダウンしつつ、ゆっくりと帰路につきます。

渓谷の出口には、田舎風のレストランもあり、食事やケーキ、アイスもあります。ハイキングの終わりにここで腹ごしらえをしてからウィーンに戻る人も多いようで、結構にぎわっていました。

レストラン
<ハイキングの終わりは、レストランで>

オーストリア 古い農具
<レストランの内装は、オーストリアらしく古い農具などで飾られています>

ウィーンに戻ると、夕方なのにまだ35度。いっそのことあの渓谷に住んでしまいたい・・と思うくらいの温度差でした。

まとめ

エアコンがない中、ウィーンの人が猛暑を生き残るための秘策の一つ、渓谷ハイキングを体験してみました。オーストリアには、このような渓谷のハイキングコースが数多くあり、「クラム」が語尾につくものはハズレがなく人気です。ハイキング好きな方は、夏のオーストリアを訪れた際に、渓谷の涼しさを体験してみるのもいいかもしれませんね。

Johannesbachklamm(ヨハネスバッハクラム)

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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