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【静岡】廃材クラフト体験と古民家でオーガニックお茶体験をしてきた
皆さんこんにちは、たびこふれライターのえいたです。
少し前に静岡県の藤枝市でつゆ茶や合組(ブレンド)体験(※)をしましたが、それに続いて再び藤枝市に行く機会がありました。
藤枝市は焼津市に駿河湾との間を挟まれているため海に接していませんが、南アルプスへと繋がる中山間地域があり、自然豊かな里山の風景や幾筋もの清らかな川が流れているところです。
その自然豊かな環境にある工房で削り出しの箸作りと、オーガニック栽培によるお茶の飲み比べ体験をしてきました。
お金を出せば簡単に手に入るものを敢えて作ったり、有機栽培にこだわったストーリーを伺いながら飲むお茶の味は格別で、心が豊かになった体験でした。
>>前回の記事:【静岡県】玉露の里、藤枝でお茶尽くしの1日を過ごしてきました はこちら
目次
- 藤枝市の自然豊かな里山風景が広がる瀬戸ノ谷地区
- 木こりの現場で出た廃材からSDG'sを学んでクラフト体験
- クラフト体験工房はこんなところ
- 築100年を越える古民家でオーガニック茶体験
- 古民家レストランでいただく自然薯料理
- 最後に
藤枝市の自然豊かな里山風景が広がる瀬戸ノ谷地区
静岡県藤枝市はサッカーがさかんなところで平地部分の瀬戸川下流には住宅街が広がります。
一方、JR東海道線の藤枝駅から車で30分ほどの所には自然豊かな里山風景が広がります。
私が訪れた2月上旬には瀬戸川沿いの堤防には梅の花や早咲きの桜が花をつけていて、改めて静岡県は温暖な地なのだなあと実感しました。
ここでは川魚を釣ったり、薪でご飯を食べたりする田舎暮らし体験ができたり、古民家や温泉施設などがあります。
また藤枝市には国際品質評価機関「モンドセレクション」で4年連続の最高金賞に輝いたミネラルウォーター「藤枝の水」があります。
木こりの現場で出た廃材からSDG'sを学んでクラフト体験
地元の山で伐採された山桜からオリジナルの食器を作成
藤枝市の本郷地区で木工作家をされている加藤郁子さんの古民家工房で、木材の伐採で発生した廃材を使ってスプーンと箸作りにチャレンジしました。
一度にスプーンと箸を作ることはできないので、私は箸づくりを選びました。
さっそく製作開始です。
「それではひとあたの長さを測りましょう」と言われ、私はキョトンです。
ひとあた、は「一咫(※)」と書きますが、親指と人さし指を直角に広げた時の親指の先と人差し指の先を直線で結んだ長さで、その1.5倍の長さが手にあった箸の長さの目安なのだそうです。
(※ 咫は中国および日本で用いられていた長さの単位です)
<ひとあた半がいい塩梅>
今回の箸づくりに用いるのは山桜の廃材です。
木目が細かく硬いのでナイフを使う手にも力が入ります。
<留学生の李さんと廖さん>
私と一緒に体験をしたのは、静岡県の魅力を外国人にPRするための「しずおかPR隊」の一員として観光情報の発信や国際交流事業などの活動をしている留学生の李(りー)さんと廖(りょう)さんです。
『こんな硬い木を削って箸なんか作れるのだろうか』
と最初は思っていたのですが、少しずつ形が見えてくると削り出しの作業も楽しくなってきて、集中しているうちにあっという間に2時間が過ぎていました。
削り出しの作業が終わった後は、3種類の紙やすりを使って形を整えて、表面を滑らかにしていきます。
この仕上げ作業がなんとも言えず、自分が作った箸に命を吹き込むような気分でした。
こんな凸凹で左右非対称な形でいいのか? と思っていた形が滑らかな姿に変ってゆくのはモノづくりの醍醐味ですね。
最後の仕上げは蜜蝋を塗って完成です。
実はこの蜜蝋は加藤さんが飼っているニホンミツバチの巣から作られたものだそうです。
蜜蝋は六角形の形をした部屋の壁部分で、革製品のメンテナンスやローソク、クレヨンの材料などにもなっているようです。また、蜜蝋は保湿性があるのでハンドクリームにもなっていて、加藤さんの蜜蝋は赤ちゃんの保湿クリームにもなるのだそうです。(優しいですね)
全部の作業終了後、貴重な加藤さんのミツバチの蜂蜜を試食させていただきました。
ニホンミツバチから採れる蜂蜜は、いろいろな種類の花から蜜を採って来るので、香りと味がブレンドされて濃厚だけど爽やかでした。この蜂蜜は販売できるほどの生産量がないために非売品なのだとか。貴重な体験をさせていただきました。
クラフト体験工房はこんなところ
加藤さんの工房は藤枝市の本郷地区という中山間地域にあります。
ご主人がきこりの仕事をしていて、そこで出てくる廃材を切り出して器づくりをしています。自宅兼工房の玄関を入った瞬間に目の前に薪ストーブが目に入ってきました。壁には鹿の皮や猪の牙などが飾られています。
<パネルを用いてきこりの仕事を説明いただく>
きこりの仕事は、伐採だけでなく森林を守る仕事もあるそうです。放置されている森林は太陽光が森林内部全体まで届かなくなって地面に近い植物の成長が乏しくなります。そうして地面に近い植物がなくなると土壌が流出して土砂災害などが起こる可能性が高くなります。適切に森林を管理して、伐採した森林の再生を促して次世代に繋げるのがきこりの大事な仕事なのだそうです。
このような話を聞きながら作業をしましたので自分が作った箸がとても特別なものに感じられました。
<地産地消を実践>
加藤さんの家では星野ブラックという種類の鶏を飼っています。シマウマの模様のような羽の色で薄赤色の卵を産むそうです。クラフト製作の時に出た木屑と鶏の糞を混ぜて発酵させたものを野菜畑の肥料に使っていて無駄のない生活を送られています。卵を産み終えた年齢に達した鶏たちは美味しくいただいているとのこと。
人間本来の生活がまさにここにありました。飼っていた鶏を食べてしまう話も、すんなり心に入ってきました。
ちょっと憧れますね。
<加藤さんが製作した器>
<お疲れ様でした>
築100年を越える古民家でオーガニック茶体験
藤枝市滝沢地区にある古民家 椿邸でオーガニック(有機)栽培によるお茶の試飲を体験しました。
茶体験を主宰する杵塚さんは、茶畑と工場を持ち生産から製茶、販売までを一貫して行っている事業者です。一般的にはお茶を生産する農家と製茶・販売を手掛ける茶商に分かれていますが、よりよいオーガニック茶を提供するためにあえて自社で生産から販売まで全てを行っているそうです。
有機栽培されたお茶を飲み比べる
杵塚さんの茶畑で有機栽培が始まったのは1976(昭和51)年で、小さな茶畑からスタートし、現在では8haの広さの茶畑を展開されています。
藤枝のお茶の特徴は、山間地のために日照時間が平地よりも短く、温度変化が他よりも大きいなど環境ストレスが関係することで、香り高い銘茶となっています。
杵塚さんの畑では年間3回の収穫をするそうで、季節によりお茶の呼び方が異なっており、次のようになっています。
- 一番茶:新茶とも呼ばれ、4月下旬から5月上旬に摘採される茶葉で害虫がいない環境
- 二番茶:一番茶の摘採から45日後くらいの夏の時期に摘採する茶葉。この時期は"うんか"と呼ばれる害虫がお茶の芽を吸ってしまう
- 三番茶 摘み取り時期が遅いため、番茶(晩茶)と呼ばれている
では、さっそく試飲します。
<かぶせ茶>
かぶせ茶とは、新芽が出る頃から藁を編み上げて作った菰(こも)を茶畑に日よけとしてかぶせ、直射日光を遮って育てる栽培方法ですが、杵塚さんの所では通常の期間よりも長い間日影に置いておくそうです。
一煎目は、50℃くらいのぬるめの湯でいただきました。
玉露を飲んでいるようで、うま味が口の中一杯に広がりました。
次に二煎目は、70℃くらいのお湯でいただきましたが、同じ茶葉から抽出しているのに心地よい苦みが加わり爽やかな飲み心地となりました。
<茎茶>
仕上げ加工工程中、選別機によって新芽の茎だけを抽出したお茶を茎茶と呼びます。独特のさわやかな香りと甘みがありました。
<和紅茶>
香りをかいだ瞬間、口に含んだ瞬間、これまで味わったことのないお茶でした。
和紅茶は二番茶を使用しています。うんかによって新芽を吸われて発酵をした状態の茶葉は美味しい紅茶となるのだそうです。自然の成り行きを活かした、まさにオーガニック栽培ならではの産物ですね。
紅茶は緑茶と違う器でいただきました。
藤枝市を拠点に活躍されている陶芸家の器だそうです。提供する器まで藤枝産なんて素晴らしいですね。
古民家で宿泊体験もできる
茶体験をした椿邸は築100年を越える古民家で、一棟貸の宿としても利用できます。
ベッドルームにキッチン、ロフトも付いています。
調理器具や食器も完備されていて、食器には藤枝市内で活動している陶芸作家を中心とした作品もあります。
<ダウンライト照明の居間>
<梁が古民家を物語ります>
<天井が高いベッドルーム>
<秘密基地のようなロフト>
<キッチン>
<陶芸作品が食器として利用可>
<ありがとうございました>
古民家レストランでいただく自然薯料理
クラフト体験、オーガニック茶体験をした藤枝中山間エリアにある、築120年前後の古民家を改装したレストランで自然薯料理をいただきました。
内装は立派な柱や縦横無尽に張り巡らされた梁といろりや板の間、縁側等があり、いたるところに懐かしさを感じました。
<囲炉裏が懐かしさを演出>
<庭が見える席もあります>
【中里の庄・和(なごみ)】
- 住所:藤枝市瀬戸ノ谷3768
- TEL:054-639-0029
- 営業時間:11:00~14:30
- 定休日:木曜日・金曜日
- 公式サイト:中里の庄・和(なごみ)
最後に
いかがでしたでしょうか
きこりの仕事、茶農家の仕事を学びながらのワークショップ体験は持続可能な世界を考えるきっかけになった取材でした。
オーガニック茶体験の杵塚さんの農園には外国人のインターン生が農作業を学びに毎年やってくるそうです。これは日本文化として日本茶が世界に認められているのだと改めて思ったのと、日本茶の文化を世界に向けて発信し続ける杵塚さんの姿勢は素晴らしいと思いました。
クラフト体験の加藤さんは他県から移住してきた方で、杵塚さんは藤枝に生まれて一度海外生活を経験したのちにこの地に戻ってきました。いずれの方からもこの土地を愛する気持ちがヒシヒシ伝わってきました。
今回の旅は、明確なビジョンを持って地域を盛り上げていこうとするパワーを感じました。
皆さんもこうした目的を持った旅をしたくありませんか??
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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えいた
- 旅の臨場感が届けばうれしいです