【12年に一度のご対面】国宝十一面観音(近畿)

六波羅蜜寺

<トップ画像:今年12年ぶりの御開帳を迎える六波羅蜜寺>

こんにちは!たびこふれライターの中尾です。

「国宝」とはその名の通り"国の宝"のことです。もう少し掘り下げてウィキペディアで調べてみると『近代以降の日本において文化史的・学術価値が極めて高いものとして法令に基づき指定された有形文化財を指し、具体的には、重要文化財のなかから特に価値の高いものとして指定した建造物、美術工芸品などをいう』と記載があります。

現在の国宝は文部科学省が文化財保護法によって指定したものです。国宝の総数は1,137件(文化庁:国指定文化財等データベースより)、建築物231件、美術工芸品906件が指定されています。美術工芸品906件の中で彫刻は140件指定されています。

今回ご紹介するのは、彫刻140件の内の1つ、十一面観音像です。日本国内には国宝の十一面観音像が7体あります。しかし、常に拝観できるものではありません。今年が12年に一度の「7体すべてを拝観できる年」なのです。詳しく説明いたします。

※参考資料:国指定文化財等データーベース

目次

十一面観音像とは

十一面観音(じゅういちめんかんのん)は仏教の菩薩(ぼさつ)の一尊です。観音菩薩の変化身(へんげしん)のひとつであり、六観音のひとつでもあります。特徴としては頭部に11の顔を持っている観音です。

『その深い慈悲により衆生から一切の苦しみを抜き去る功徳を施す菩薩であるとされる。多くの十一面観音像は頭部正面に阿弥陀如来の化仏(けぶつ)を頂き、頭上には仏面(究極的理想としての悟りの表情)、菩薩面(穏やかな佇まいで善良な衆生に楽を施す、慈悲の表情)、瞋怒面(しんぬめん。眉を吊り上げ口を「へ」の字に結び、邪悪な衆生を戒めて仏道へと向かわせる、憤怒の表情)、狗牙上出面(くげじょうしゅつめん。結んだ唇の間から牙を現し、行いの浄らかな衆生を励まして仏道を勧める、讃嘆の表情)、大笑面(だいしょうめん。悪への怒りが極まるあまり、悪にまみれた衆生の悪行を大口を開けて笑い滅する笑顔)など、各々に複雑な表情を乗せ、右手を垂下し、左手には蓮華を生けた花瓶を持っている姿であることが多い(ウィキペディアより引用)』

1体目:法華寺(奈良県奈良市)の木造十一面観音立像

法華寺

法華寺 木造十一面観音立像

  • 指定番号:00014
  • 所有者:法華寺(ほっけじ)
  • 名称:木造十一面観音立像
  • 安置場所:本堂(靴を脱いで本堂に上がります)
  • 像高:100cm
  • 時代:平安時代
  • 国宝指定:1951年06月09日
  • 公開:通常非公開(春と秋に期日を限って特別開扉)

※公開予定日:3月20日~3月31日、4月1日~4月7日、6月5日~6月10日、10月25日~11月10日

法華寺 基本情報

  • 所在地:奈良県奈良市法華寺町882
  • 拝観料:有料(一般拝観日・特別拝観日によって異なります)
  • 拝観時間:9:00~16:30
  • アクセス:近鉄奈良線「新大宮駅」から徒歩約20分 ※路線バスもあり
  • 駐車場:あり(無料)
  • 公式サイト:法華寺
  • 公式SNS:Instagram

僕の感想

2018年11月と2020年11月の2回訪問。2回とも御開扉の時に訪問しましたので、十一面観音さまを拝むことができました。

1mと比較的小さな観音さまですが、とても存在感がありました。体の線が少しくの字、右手でそっと衣を持ち上げ、さらに右足が少し前に踏み出ているなど。お顔がとても優しく、拝んでいる僕たちに語りかけてくれているようでした。

法華寺の御朱印(他にも種類あり)

法華寺 御朱印

隣の海龍王寺(かいりゅうおうじ)の十一面観音さま(重要文化財)も素晴らしいです(期間限定の特別開帳)。法華寺と合わせて訪問をおすすめします。

2体目:聖林寺(奈良県桜井市)の木心乾漆十一面観音立像

聖林寺
<中の十一面観音さまは写真がはめ込まれています>

聖林寺 木心乾漆十一面観音立像

  • 指定番号:00024
  • 所有者:聖林寺(しょうりんじ)
  • 名称:木心乾漆十一面観音立像
  • 安置場所:観音堂(靴を脱いで本堂を経由して観音堂へ)
  • 像高:209.1cm
  • 時代:奈良時代
  • 国宝指定:1951年06月09日
  • 公開:通常公開

聖林寺 基本情報

  • 所在地:奈良県桜井市下692
  • 拝観料:有料
  • 拝観時間:9:00~16:30
  • アクセス:近鉄大阪線「桜井駅」・JR桜井線「桜井駅」から奈良交通バス談山神社行き「聖林寺」下車すぐ
  • 駐車場:あり(有料)※ただし駐車可能台数が少ないです
  • 公式サイト:聖林寺
  • 公式SNS:FacebookX(旧Twitter)Instagram

僕の感想

2015年5月、2017年5月、2018年10月、2021年4月の計4回訪問。

僕個人的にとても好きな十一面観音さまです。とても大きな十一面観音さまというのが第一印象。真っすぐ直立されていて薄目を開けて僕たちを見下ろしていらっしゃいます。特に手としなやかな指に注目です。

聖林寺の御朱印

聖林寺 御朱印

3体目:道明寺(大阪府藤井寺市)の木造十一面観音立像

道明寺

道明寺 木造十一面観音立像

  • 指定番号:00054
  • 所有者:道明寺(どうみょうじ)
  • 名称:木造十一面観音立像
  • 安置場所:本堂(靴を脱いで本堂に上がります)
  • 像高:98cm
  • 時代:平安時代
  • 国宝指定:1952年11月22日
  • 公開:通常非公開 ※公開予定日:1月1日~1月3日、毎月18日と25日(4月は17日も公開)

道明寺 基本情報

  • 所在地:大阪府藤井寺市道明寺1丁目14-31
  • 拝観料:有料
  • 拝観時間:9:00~16:00
  • アクセス:近鉄南大阪線「土師ノ里駅」または「道明寺駅」から徒歩約7分
  • 駐車場:あり(無料)※ただし駐車可能台数が少ないです
  • 公式サイト:道明寺

僕の感想

2015年4月、2018年4月、2019年4月、2020年7月、2022年4月の5回訪問。

国宝十一面観音さまの中で一番小さいです。公開日には内陣に上がって目の前で拝むことができます。彩色を施していない木の素材そのものの十一面観音さまです。

道明寺の御朱印

道明寺 御朱印

18日は近隣の葛井寺(ふじいでら)の千手観音さま(国宝)も素晴らしいです(毎月18日御開帳)。道明寺と合わせて訪問をおすすめします。

4体目:室生寺(奈良県宇陀市)の木造十一面観音立像

室生寺

室生寺 木造十一面観音立像

  • 指定番号:00062
  • 所有者:室生寺(むろうじ)
  • 名称:木造十一面観音立像
  • 安置場所:寶物殿(靴を脱いで寶物殿に上がります)
  • 像高:195.1cm
  • 時代:平安時代
  • 国宝指定:1952年11月22日
  • 公開:通常公開

室生寺 基本情報

  • 所在地:奈良県宇陀市室生78
  • 拝観料:有料 ※寶物殿は別途追加料金がかかります
  • 拝観時間:8:30~17:00 ※12月1日~3月31日は9:00~16:00
     ※寶物殿は9:00~16:30 ※12月1日~3月31日は9:30~15:30(受付は15:00まで)
  • アクセス:近鉄大阪線「室生口大野駅」から奈良交通バスで「室生寺前」下車。徒歩約5分 ※ただしバスの本数が少ないので注意が必要
  • 駐車場:あり(有料)※少し離れたところにあります
  • 公式サイト:室生寺
  • 公式SNS:FacebookX(旧Twitter)Instagram

僕の感想

2016年5月、2017年5月、2018年10月、2020年11月、2023年11月の5回訪問。

女人高野として知られる室生寺は広大な境内に国宝、重要文化財の伽藍に数々の仏さまが安置されています。もともと十一面観音さまは金堂に安置されていましたが、現在は寶物殿に移され公開されています。寶物殿に移されガラス越しになってしまったのが少し残念ですが、端正な顔立ちは室生寺を訪れる人々を魅了しています。

室生寺の御朱印(他にも種類あり)

室生寺 御朱印

室生寺には国宝と重要文化財の建築物と仏像が多数あります。時間をかけてじっくり参拝することをおすすめします。

5体目:向源寺(滋賀県長浜市)の木造十一面観音立像

向源寺 渡岸寺

向源寺 木造十一面観音立像

  • 指定番号:00065
  • 所有者:向源寺(こうげんじ)
  • 名称:木造十一面観音立像
  • 安置場所:渡岸寺観音堂(靴を脱いで本堂を経由して渡岸寺観音堂へ)
  • 像高:195cm
  • 時代:平安時代
  • 国宝指定:1953年03月31日
  • 公開:通常公開

向源寺 基本情報

  • 所在地:滋賀県長浜市高月町渡岸寺50
  • 拝観料:有料
  • 拝観時間:9:00~17:00
  • アクセス:JR北陸線「高月駅」から徒歩約5分
  • 駐車場:あり(無料)※少し離れたところにあります
  • 公式サイト:向源寺

僕の感想

2007年8月、2021年5月、2022年10月の3回訪問。

当初は収蔵庫に安置されていましたが、今では立派な渡岸寺観音堂に安置されています。特にこの十一面観音さまは美しいと思います。なぜなら、本来は正面からしかお姿を拝むことができないのですが、ここでは十一面観音さまをぐるっと一周まわることができます。なので、十一面も後ろの部分まではっきりと見ることができるのです。

向源寺の御朱印

向源寺 渡岸寺 御朱印

この付近の湖北地区は観音の里と呼ばれていて、地元の人によって仏さまが守られ、保存されています。時間の許す限り、各寺を訪問することをおすすめします。

>>関連記事:第38回観音の里ふるさとまつり(2022年)はこちら

6体目:観音寺(京都府京田辺市)の木心乾漆十一面観音立像

観音寺

観音寺 木心乾漆十一面観音立像

  • 指定番号:00068
  • 所有者:観音寺(かんのんじ)
  • 名称:木心乾漆十一面観音立像
  • 安置場所:本堂(靴を脱いで本堂に上がります)
  • 像高:172.7cm
  • 時代:奈良時代
  • 国宝指定:1953年03月31日
  • 公開:通常公開

観音寺 基本情報

  • 所在地:京都府京田辺市普賢寺下大門13
  • 拝観料:有料
  • 拝観時間:9:00~17:00
  • アクセス:近鉄京都線「三山木駅」またはJR片町線「三山木駅」から徒歩約25分
  • 駐車場:あり(無料)
  • 関連サイト:観音寺(京田辺市観光協会)

僕の感想

2018年11月と2022年3月の2回訪問。いつでも内陣に上がることができ、十一面観音さまの目の前までいくことができます。

厨子にいらっしゃる十一面観音さまは思った以上に大きいのですが、そっと語りかけてくれる印象。僕が訪問した時は混んでいなかったので、長い時間ご対面することができました。

観音寺の御朱印

観音寺 御朱印

7体目:六波羅蜜寺(京都府京都市東山区)の木造十一面観音立像

六波羅蜜寺

六波羅蜜寺 木造十一面観音立像

  • 指定番号:00123
  • 所有者:六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)
  • 名称:木造十一面観音立像
  • 安置場所:本堂(靴を脱いで本堂に上がります)
  • 像高:258cm
  • 時代:平安時代
  • 国宝指定:1999年06月07日
  • 公開:通常非公開

※公開予定日:12年に一度、辰年の年のみ御開帳。御開帳は11月3日~12月5日の予定

六波羅蜜寺 基本情報

  • 所在地:京都府京都市東山区五条通大和大路上ル東 六波羅蜜寺
  • 拝観料:令和館のみ有料
  • 拝観時間:8:00~17:00 ※令和館は8:30~16:45(受付終了は16:30)
  • アクセス:京阪本線「清水五条駅」から徒歩約7分。阪急京都線「河原町駅」から徒歩約15分。JR京都駅から路線バスあり
  • 駐車場:あり ※ただし駐車可能台数が少ないです
  • 公式サイト:六波羅蜜寺
  • 公式SNS:X(旧Twitter)Instagram

僕の感想

2014年3月、2016年2月、2018年5月、2020年5月、2021年2月、2021年3月、2022年2月、2023年2月、2024年2月の9回訪問。9回訪問するも今まで一度も十一面観音さまにご対面したことがありません。今年こそは拝みにいきたいと思います。

六波羅蜜寺の御朱印(他にも種類あり)

六波羅蜜寺 御朱印

>>関連記事:1年間の運勢を占う六波羅蜜寺の開運推命おみくじはこちら

国宝十一面観音の情報

国宝十一面観音

県別

滋賀県1体、京都府2体、大阪府1体、奈良県3体。すべて近畿圏の寺院に安置されています。

像高の比較

(小)道明寺98cm< 法華寺100cm< 観音寺172.7cm< 向源寺195cm< 室生寺195.1cm< 聖林寺209.1cm< 六波羅蜜寺258cm (大)

制作された時代

(古)聖林寺/天平時代8世紀 ⇒観音寺/奈良時代8世紀後半頃 ⇒法華寺/平安時代9世紀前半 ⇒向源寺/平安時代9世紀中頃 ⇒室生寺/平安時代9世紀末 ⇒道明寺/平安時代10世紀 ⇒六波羅蜜寺/平安時代10世紀中頃(新)

公開・非公開のまとめ

  • 通常公開:聖林寺、室生寺、向源寺、観音寺の4寺
  • 通常非公開:法華寺、道明寺、六波羅蜜寺の3寺

【公開予定日】

  • 法華寺(奈良県奈良市):3月20日~3月31日、4月1日~4月7日、6月5日~6月10日、10月25日~11月10日
  • 道明寺(大阪府藤井寺市):1月1日~1月3日、毎月18日と25日(4月は17日も公開)
  • 六波羅蜜寺(京都府京都市東山区):12年に一度、辰年の年のみ御開帳。御開帳は11月3日~12月5日の予定

位置的に見ると2~3日あれば拝観できそうに感じますが、2~3日で一気に拝観できる日はありません。少し暑さが和らぐ10月から12月にかけて、じっくり拝観してみてはいかがでしょうか?

なお、今年2024年を逃すと7体を拝観できるのは12年後になります。

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旅が大好き!国内海外を問わず飛び回っていますが、海外へは2011年に渡航して以来、出国していません。今は原点に戻り国内を旅しながら日本の良さを体感中。

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