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【ドイツ】風呂好き古代ローマ人が興した温泉町、バーデン・バーデン
<TOP画像:フリードリッヒ浴場>
寒い冬は、温泉でのんびりゆっくり休む旅がしたくなる季節。
日本には2,934もの温泉地があるそう(環境省調べ/2020年)。そして実はヨーロッパにも、多くの温泉やスパ施設が存在します。お風呂に浸かるのが好きな日本人と比べると、ヨーロッパの人々はシャワーだけでちゃちゃっと済ますことが多いので、「ヨーロッパに温泉」と聞くと不思議な感じがするかもしれません。
欧州の温泉はもともと療養目的がメインで、病気の治療やリハビリといった『湯治場』的な役割がありました。例えば有名な『アルプスの少女ハイジ』の話でも、ドイツのフランクフルトに住む病弱なクララとその一家が、スイスのアルプスに住むハイジを訪れた際、ラガーツ温泉(Bad Ragaz)へ立ち寄る場面があります。
目次
- ヨーロッパにある、歴史的な温泉保養地
- 南ドイツ・黒い森地方のバーデン・バーデン
- バーデン・バーデンの有名な温泉
- バーデン・バーデンは美味しいものもたくさん!
- 欧州の王族・貴族、文化人に愛されたバーデン・バーデン
- まとめ
ヨーロッパにある、歴史的な温泉保養地
数あるヨーロッパの温泉地のうち、「ヨーロッパの大温泉保養地(The Great Spa Towns of Europe)」として11都市が2021年7月ユネスコ世界遺産に登録されています。
- バーデン・バイ・ウィーン(Baden bei Wien)、オーストリア
- スパ(Spa)、ベルギー
- フランチシュコヴィ・ラーズニェ(Františkovy Lázně)、チェコ共和国
- カルロヴィ・ヴァリ(Karlovy Vary)、チェコ共和国
- マリアーンスケー・ラーズニェ(Mariánské Lázně)、チェコ共和国
- ヴィシー(Vichy)、フランス
- バート・エムス(Bad Ems)、ドイツ
- バーデン・バーデン(Baden-Baden)、ドイツ
- バート・キッシンゲン(Bad Kissingen)、ドイツ
- モンテカティーニ・テルメ(Montecatini Terme)、イタリア
- バース市(City of Bath)、英国
南ドイツ・黒い森地方のバーデン・バーデン
<バーデン・バーデンの町並み>
ユネスコの「ヨーロッパの大温泉保養地」に登録されている、ドイツ南部・黒い森地方のバーデン・バーデンは、スイスの我が家から車で3時間ほどで行けることもあり、何度か訪れたことがある町です。
スイスにも「バーデン(Baden)」という似た名前の町があり、ここも紀元前から存在する温泉地なのですが、ドイツのバーデン・バーデンも、その名の通り『風呂』『温泉』といった意味があります。
バーデン・バーデンの有名な温泉
<カラカラ温泉>
2千年ほどの歴史があるバーデン・バーデンの有名な温泉といえば、カラカラ温泉とフリードリッヒ浴場でしょう。温泉水は塩化ナトリウムが含まれており、ちょっぴり塩味がします。
フリードリッヒ浴場は、カラカラ温泉より若干入場料が高めですが、高貴な香り漂う浴場で、ヨーロッパでは珍しい混浴の日があったり、水着の着用不可など、日本の温泉っぽいところもあります。
現在も療養施設(クアハウス)として、マッサージや健康増進などリラックスできる様々な種類の風呂や施設がそろい、温泉好き・スパ好きな方には天国!
またフリードリッヒ浴場の駐車場奥にはローマ時代の浴場遺跡も残っており、こういった時代の展示を見ていると、ローマ時代にタイムスリップした気分にもなります。
<展示されているローマ時代の浴場遺跡>
カラカラ温泉(die Caracalla Therme)
- 住所:Römerpl. 1, 76530 Baden-Baden, Germany
- 電話:+49(0)7221 27 59-40
- 営業時間:午前8時~午後8時(12月24日・25日は休業日。年末年始は時短営業)
※最終入館時間は、閉館1時間半前 - 入館料:2時間19ユーロ~(詳細は公式サイトにてご確認ください)
- 公式サイト:カラカラ温泉
フリードリッヒ浴場(Das Friedrichsbad)
- 住所:Römerpl. 1, 76530 Baden-Baden, Germany
- 電話:+49(0)7221 27 59-70
- 営業時間:午前9時~午後10時(12月24日・25日は休業日。年末年始は時短営業)
※最終入館時間は、閉館3時間前 - 入館料: 35ユーロ~(詳細はウェブサイトにてご確認ください)
- 公式サイト:フリードリッヒ浴場
ローマ浴場跡(Römische Badruinen)
- 住所:Römerpl. 1, 76530 Baden-Baden, Germany
- 電話:+49(0)7221 27 59-34
- メールアドレス:caracallashop(at)carasana.de
- 営業日時:3月16日~11月15日の午前11時から12時及び午後3時~4時まで※11月16日~3月15日は休館
- 入館料:おとな 5ユーロ、こども(7~14歳) 2ユーロ
- 公式サイト:ローマ浴場跡
バーデン・バーデンは美味しいものもたくさん!
温泉にはあまり興味がないという方も、ショッピングを楽しめたり、夏は多くのイベントやコンサート、そして冬にはクリスマスマーケット...と大きくない町ですが、レジャーには事欠かせません。
バーデン・バーデンは人気観光地なので、夕方6時過ぎぐらいになるとあっという間にレストランやバーは人でいっぱいになります。町のビアガーデンレストランで食事をしたことが何度かありますが、外のテラス席はいつも多くのお客さんでにぎわっていました。
ドイツビール「ヴァイスビア(Weißbier)」(小麦麦芽を50%以上使ったフルーティなビール)は飲みやすく、そして南ドイツの郷土料理「クヌーデル(Knödel)」(ジャガイモ団子)や巨大ラビオリのような「マウルタッシェン(Maultaschen)」は食べ応え抜群。
そして最後のデザートには黒い森地方の「さくらんぼケーキ(Schwarzwälder Kirschtorte)」がおすすめ!
さらに、バーデン・バーデンはフランスのアルザス地方にも近いため、アルザスの郷土料理「フラムクーヘン(Flammkuchen)」(ベーコンと玉ねぎなどをトッピングした薄焼きピザのような料理)が食べられるレストランもありました。ちなみにフランス語では「タルト・フランベ(Tarte flambée)」と呼ばれています。
欧州の王族・貴族、文化人に愛されたバーデン・バーデン
<この町を訪れていたという、皇妃エリザベート(シシィ)の肖像画>
バーデン・バーデンは、18世紀~19世紀になると更に観光地として整備され、欧州各地から王族・貴族、文化人がここへ静養に来ました。
「シシィ」の愛称で知られるオーストリア皇妃エリザベートもバーデン・バーデンを訪れていたのだそうで、毎日新鮮なミルクをいただくため、乳牛一頭と共にバーデン・バーデン入りした(!)、なんて話もあります。
また多くの有名音楽家たちも滞在し、例えばドイツ出身ロマン派の音楽家ブラームスは、既に当時オーストリア・ウィーンで売れっ子でしたが、1865年から1874年の夏はいつもバーデン・バーデンで過ごしています。
その理由はクララ・シューマン。≪トロイメライ≫などで有名なロベルト・シューマンの妻で、クララ自身も人気ピアニストでした。
夫ロベルト・シューマンが病死した6年後、クララ・シューマンはバーデン・バーデンに家を買い、子どもたちと一緒に引っ越しました。そしてそこで1863年から1873年までの10年間をそこで過ごします。
シューマン夫妻と長く懇意にしていたブラームスも、その後夏の間はバーデン・バーデンで過ごすようになり、2人はここで一緒にコンサートを開催したりしていたそう。
ブラームスが夏の間滞在していた家は、現在博物館として公開されているので(予約要)、興味のある方は訪れてみてはいかがでしょうか。
ブラームスハウス(Brahmshaus)
- 住所:Maximilianstraße 85, 76530 Baden-Baden, Germany
- 電話:+49(0)7221 99872
- メールアドレス:info(at)brahms-baden-baden.de
- 開館日時:日によって異なります。ウェブサイトの開館カレンダーをご覧ください。
- 入館料:おとな 5ユーロ
- 公式サイト:ブラームスハウス
<ブラームスハウスの外観。私が訪れた時は改修工事で閉館中でした、残念!>
まとめ
バーデン・バーデンは大きな町ではないものの、温泉やスパだけではなく、野外コンサートなどのさまざまな音楽・文化イベントが開催され、歴史的にも興味深い場所が少なくないため、昔も今も人々を惹きつける魅力をたくさん持っています。
フランスのアルザス地方にも近く、ドイツとフランスの両国を行き来しやすいので、時間が許すならアルザス地方まで足をのばしてみるのも良いかもしれませんね。
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小島瑞生
- 1998年~2009年まで暮らしたアイルランドから、2009年スイスへ移住。面白そうなコト・モノを求め、スイス国内や欧州の国々をウロウロしながら、雑誌やウェブサイト、ラジオ等のメディアに様々な情報を発信中。趣味は旅行とハープ&ピアノ演奏。