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【イギリス】スコットランドの夏の絶景:一面が紫に染まるヘザーの丘ペントランドヒルズ
<TOP画像:ペントランドヒルズのヘザーの丘>
ヘザーという花を知っていますか?
英国の有名な小説「嵐ヶ丘」に出てくる、荒野ヒースを彩る紫の花がヘザーです。ヘザーは、まさにイギリスの原風景を作っている花です。
嵐ヶ丘の舞台となったヨークシャーヒースがヘザーの咲く荒野として有名で、訪れた方、また訪れたいと思っていらっしゃる方も多いのではないのでしょうか?
そんなヘザーですが、スコットランドの第2の国花と言われているほどスコットランドの野山で見ることができます。スコットランドの野山は夏の終わりになると、ヘザーによって見渡す限りに赤紫の絨毯のように染まります。8月の3週間のみ見られるまさに絶景です。
NHKの「世界の一番美しい瞬間(とき)」というシリーズにも取り上げられたこともある美しい景色です。
スコットランドでも有名なヘザーの咲く丘が、エジンバラの郊外にあることはあまり知られていません。ペントランドヒルズ(Pentland Hills)は、エジンバラの中心地からバスで45分(車で30分)で行くことのできる自然公園で、ヒースの咲き誇る丘をハイキングすることができます。
8月にエジンバラを訪れる機会があれば、少し足を伸ばしてこの絶景を楽しんでください。
目次
ヘザーとは
<ヘザーの花>
ヘザーは、英国の荒野を彩る花です。ツツジ科の常緑低木に咲く小さな花ですが、荒野を覆い尽くすように群生しているため、最盛期には荒野が絨毯のように紫に染まります。
英国の有名な小説「嵐ヶ丘」に出てくる荒野に咲く花で、ヒース(Heath)という名前で、覚えている方が多いと思います。
日本ではヒースとして知られるヘザーですが、実はヒースはヘザーと同じではないのです。とてもわかりにくいのですが、色々調べたり読んだりした結果、私もやっとわかってきましたので、ご説明します。
ヒースは、作物の栽培に適していない、痩せた酸性土壌の低木が生息する平坦な荒地のことです。そのヒース荒地(ヒースランド: Heathland)に生えるエリカ属の植物もヒースと呼ばれることから、ヘザーはヒースとも呼ばれます。
英国の荒野には、ヒース(Heath)とムーア(Moor)があります。
ヒースは平坦な地ですが、ムーアは農耕に適さない低い草木のみが生息する酸性土壌の泥炭地の野山の荒地を指し、スコットランドの大部分に広がっています。
ヘザーはどちらの荒野にも咲くので、ヘザーの咲く荒野はHeatherland(ヘザーランド)とも呼ばれています。
英国に生息するヘザーは主に2種類あります。
1) ヘザー(リング): Heather(Ling)
- 学名は、カルーナ・ヴルガリス(Calluna Vulgaris)
<リング ヘザー>
一般的にヘザーとして知られている種類で、リング(Ling)とも呼ばれます。開花は夏の終わりから秋の初めです。
<幸運を呼ぶ白いヘザー>
花の色はローズピンクのものから、濃いピンク紫また珍しい白もあります。白いヘザーは珍しいため、幸運を呼ぶとも言われています。
2) ベルヘザー : Bell Heather
- 学名:エリカ・キネレア(Erica Cinerea)
<釣鐘の形をしたベルヘザー>
ベルヘザーは、リングの花よりも大きな釣鐘の濃い赤紫の花の咲く種類です。こちらが英国では、エリカ属としてヒースと呼ばれることもあるヘザーです。
6月に最初に開花するヘザーです。ベルヘザーは、ヘザーと並んで咲きます。
スコットランドのヘザーは、主にリングのことですが、ベルヘザーも咲いています。
ヘザーの使われ方
スコットランドの国花はあざみですが、ヘザーは第2の国花とも言われるほど、スコットランドの生活に根付いた花です。
ヘザーという名前の由来は古いスコットランド語「haeddre」とも言われています。
ここで、スコットランドでヘザーがどのように使われているかご紹介します。
1. スコッチウイスキー
<スコッチウイスキー>
スコットランドといえばスコッチウイスキーです。
スコッチウイスキーは麦芽を乾燥させる際に燃焼させる泥炭(ピート)から出る独特の燻した煙のようなスモーキーな香りが特徴です。
このピートは、ヘザーが枯れた後、長い年月をかけて炭化し、地層として堆積した泥のような塊のことです。スコッチウィスキーの独特の味わいと香りは、ヘザーから生まれているのです。
2. ハーブ療法: アロマセラピー
<エッセンシャルオイル>
ヘザーは抗菌性があり、古代からスコットランド人が症状や病気の治療に使用してきました。
現在でも、ヘザーは消化器系の不調、皮膚の問題、咳、不眠症を治療するためのアロマセラピー製品に使用されています。 利尿作用があるため、体内の洗浄剤や解毒剤としても役立ちます。
3. ヘザーハニー
<ヘザーハニー>
ヘザー花の蜜を集めて作られるヘザー蜂蜜は、ミネラルが豊富で抗酸性や抗菌性があり体に良いとされ、マヌーカ蜂蜜と並んで、貴重な蜂蜜です。
ヘザーの丘として知られるエジンバラ郊外のペントランドヒルズ
<ペントランドヒルズ>
8月に丘一面がヘザーによって紫に染まる絶景が見られる場所は、エジンバラのすぐ郊外に広がるペントランド・ヒルズ(Pentland HIlls)です。
ペントランド・ヒルズは、スコットランドのエディンバラの市街の南西に連なる丘陵で、90平方キロメートル(35平方マイル)に及ぶ広大な丘陵地帯は、エジンバラ市の地域公園として管理されています。
<ペントランドヒルズ地域公園の位置>
市内から車で30分、バスでも行くことのできるペントランドヒルズは、ヒルウォーキング、キャンピング、釣り、マウンテン バイク、乗馬、ゴルフ、そしてスノースポーツ センターの(人工スキー場)でのスキーなど、様々なレクリエーションが楽しめるエジンバラ市民の憩いの場所です。
野生動物には、ライチョウ、ノロジカ、カワウソ、アナグマ、ピーウィット (タゲリ)、ひばり、金色のチドリも生息していることでも知られます。
ヘザーの咲く丘
<キャップローのハイキングコース>
<ヘアヒル(Harehill) からみるザ・ハウ(The Howe)方面>
<ウエストロー>
8月にエジンバラの郊外に広がるこの丘陵地帯を訪れました。一面が紫の絨毯のように染まる美しい光景を見てください。
ヘザーが特に美しく見られる場所として、知られるのはローガンリー貯水池(Loganiea Resevoir)の周辺です。ハイキングでヘザーの咲く丘を登り、その頂上から眺める景色はまさに絶景です。
ターンハウス・ヒル(Turnhouse Hill)、そしてカーネシーヒル(Carnethy Hill)の頂上からは、ローガンリー貯水池やグレンコー貯水池が一望できます。
また、ヘザーの咲く丘、スカルドロー(Scald Law)、イーストキップ(East Kip)、そしてウェストキップ(West Kip )をハイキングすると一面の紫の世界を楽しめます。
<キャップロー、手前に見えるのが赤紫のベルヘザー>
ペントランドヒルズへの行き方とハイキングコース
<ペントランドヒルズ ハイキング ルートの地図>
ペントランドヒルズの美しいヘザーを見る起点は、フロッターソン(Flottersone )案内所が最適です。
フロッターソン案内所には、エジンバラ・バスステーションからダンフリーズ(Dumfries)行きの101番、102番のバスに乗ることで行くことができます。
フロッターソン案内所を起点に、貯水池に沿って歩きローガンリー貯水池(Loganiea Resevoir)へ、またはターンハウス・ヒル(Turnhouse Hill)、カーネシーヒル(Carnethy Hill)に上り、湖を見下ろすと、広範囲にヘザーの丘を見ることができます。
またもう一つのハイキングコースは、ヘザーの咲き誇る丘を歩くコースで、キャップロー(Cap Law)から、スカルドロー(Scald Law)、イーストキップ(East Kip)、そしてウェストキップ(West Kip)を歩くコースの出発地点は、Nine MIle Burn(ナイン・マイル・バーン)というバス停となります。
ペントランドヒルズ(Pentland Hills)
- フロッターソン案内所 (Flottersone Information Point)
- 住所: Flotterstone EH26 0PP
- 公式サイト:ペントランド丘陵地域公園
ナイン・マイル・バーン (Nine Mile Burn)
- 29 Nine Mile Burn
- 住所:EH26 9LS Penicuik
ローガンリー貯水池(Loganiea Resevoir)
- 住所:Penicuik EH26 0PP
まとめ
夏にエジンバラを訪れたら、ヘザーで紫に染まる丘の絶景をぜひ見てください。絶景が見られるのはちょうどエジンバラフェスティバルの開催される8月の3週間です。最盛期の丘はピンク紫に染まっていますが、少し早いと薄い色、遅くなると茶色になります。
日本の桜のように、その年の気候によりピークのピンク紫に染まる丘が見られる時期は少しづつ変わる上に、短いですが、エジンバラ市内からもペントランドヒルズの色付きの状況が見てわかりますので、確認してから出かけるといいです。
最後となりますが、ヘザーの丘に上って絶景を楽しむには、しっかりとしたウオーキングシューズを用意してくださいね。
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Sachiko
- 名古屋市出身、海外滞在歴30年、38カ国490以上の都市を訪れました。多趣味で、アート系のクラッシック鑑賞、バレエ・ダンス鑑賞、美術鑑賞、アンティーク収集から、スポーツ系のテニス・ダイビング、グルメまで色々なことが好きですので、様々な視点で皆様に旅の楽しさがお伝えできればと思っています。捨て猫2匹をインドネシアで拾い、日本まで連れてきました。