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【福岡】能古島のことは芋天おばさんが全部知っている? 島の魅力を聞いてきた
福岡市西区にある能古島(のこのしま)は、フェリーでたった10分で行ける福岡屈指の観光スポット。そして島の北部にある「のこのしまアイランドパーク」は、青い空と海を背景に木々や花々を楽しめる癒しの空間です。
園内の美しさは訪れた人たちによってSNSで拡散され、投稿に心惹かれたお客さんが新たに県内外や海外からやって来ています。
のこのしまアイランドパークの美しい風景が拡散される中、異彩を放つ謎の人物が写っていました。それが、パークのラスボスこと「芋天おばさん」です。
>>芋天おばさんについてのX(旧:Twitter)の投稿はこちら
芋天おばさんって何者?
そもそも、のこのしまアイランドパークでなぜ芋天?
「会ってみたい!」
気になった筆者はさっそく、のこのしまアイランドパークへと向かいました。
目次
<3. のこのしまアイランドパークで「芋天おばさん」を発見>
<4. まっさらな土地に自然公園を。芋畑から始まった能古島の挑戦>
<5. 芋天おばさんが作り上げたのこのしまアイランドパークを巡ろう>
<6. のこのしまアイランドパークに来たら食べたいご飯やお土産>
1. 能古島と「のこのしまアイランドパーク」とは?
<出典:写真AC>
能古島は福岡市西区にある、周囲12kmの島です。10分の船旅でたどり着けるアクセスの良さが魅力です。
そんな能古島の人気スポット「のこのしまアイランドパーク」は福岡を代表する自然公園です。
<7月中旬~8月中旬は5万株ものヒマワリが咲く/写真提供:のこのしまアイランドパーク>
園内には青い空や海を背景に、四季折々の花畑を楽しめる高台や昭和時代にタイムスリップしたような懐かしさを味わえる「思ひ出通り」などがあります。
<まるで映画のような世界観の「思ひ出通り」>
高い建物やジェットコースターなどの遊具はひとつもなく、園内には抜けるような青い空と豊かな自然があるだけ。
鳥の鳴き声に耳を傾けて吹き抜ける風を感じていると、ゆったりとした気分を味わえます。
2. 能古島への行き方は? フェリーでたった10分
<フェリー出航前、海の向こうに見える能古島>
能古島へは、姪浜(めいのはま)にある能古渡船場から出港するフェリーで向かいます。
<能古渡船場(姪浜旅客待合所) 福岡市西区能古457-7>
市内から渡船場へのバス路線が充実しているのが特徴で、博多・天神やPayPayドームからのアクセスが可能です。
<バス乗り場は、能古渡船場の目の前>
バスの路線から外れている場所からやって来る方は、福岡市地下鉄を利用して、能古渡船場の最寄り駅の「姪浜駅」まで向かいましょう。
姪浜駅から能古渡船場行きのバスに乗車すれば、20分程度で渡船場へ到着します。
<一般利用向け駐車場は姪浜渡船場横の第2駐車場>
車で来る方は、渡船場横にある駐車場を1日510円で使用できます。
自家用車で能古島内を移動したい場合は、フェリーに車を乗せて島に乗り入れることが可能です(往復3,140円〜)。
ただし、運転手1名のみ無料で、その他の同乗者は往復460円の運賃がかかることに加え、乗車可能台数には限りがあります。
島内には、西鉄バスやタクシー・自転車などの移動手段が整っているため、車は駐車場に停めておくことをおすすめします。
渡船場内には、きっぷ売り場だけでなく売店・自動販売機やお手洗いがあります。ベンチが設置されているので、フェリーに乗船案内されるまでの待ち時間を、快適に過ごせます。
フェリーの運航時間は1時間1本のペースです。乗り逃すと1日のスケジュールが大幅に変化してしまうため、事前に時間確認をしておきましょう。
きっぷを購入したら、いよいよ冒険の始まり。能古島へいざ出発です!
<フェリーは2階建て、イス席で景色を楽しむか甲板で海風を感じるか選べる>
離れていく福岡PayPayドームや福岡タワーの風景。そして、みるみるうちに近づいてくる能古島。
<小さくなっていく福岡の街並み>
乗船時間はわずか10分。同乗していた小さいお子さんも飽きることなく、終始笑顔で楽しそうにお喋りをしていました。
<西鉄バス乗車料金は片道240円(子ども120円)>
島に上陸したら、西鉄バスで「のこのしまアイランドパーク」に向かいましょう。フェリーの運航時間に合わせて発着しているため、島に到着したら待ち時間はほぼゼロで、バスが出発します。
乗車時間は約13分で、料金は片道240円(子ども120円)です。
パークへ向かう山道は、市内の路線バスの車窓からはなかなかお目にかかれない曲がりくねった急勾配の連続。
吊り革をギュッと握り、床をしっかり踏みしめながら通り過ぎていく木々を眺めていると、一気に視界がひらける瞬間がありました。
<対岸に見えるPayPayドームや福岡タワーはまるでミニチュア模型>
輝く海と小さくなった福岡の街並みに、筆者をはじめとしたバスの乗客から「うわぁ!」と歓声があがります。
能古島に向かうフェリーに乗り込んでから大して時間は経っていないのに、ずいぶん遠くへ来たような気持ちがわきました。
3. のこのしまアイランドパークで「芋天おばさん」を発見
のこのしまアイランドパークに到着して、入場ゲートをくぐった瞬間聞こえてきたのは、温かみのある軽やかな声です。
「芋天は入り口でしか買えん。この先進んで欲しくなっても売っとらんよー。」
「離れて見とってもわからんよー。だましゃあせんけん、食べてってー」
独特の売り文句につられて右方向に目を向けると......、芋天おばさんがいました!
トレードマークの赤い帽子を被り、販売している芋は、おばさんがパークの裏手にある畑で育てたもの。
コスモスと菜の花が咲く時期とゴールデンウィークの時期のみに、芋天を販売をしています。
<芋天は袋いっぱいに詰めてくれて、たったの300円>
「こっちおいで、芋天のおいしさは自分で食べんとわからんとよ」
芋天おばさんの呼びかけに引き寄せられ、芋天を受け取ると袋越しに揚げたての温かさがじんわりと伝わってきます。
一切れがこんなに分厚い!
カリッ!っと音が鳴る衣を噛み締めた瞬間、ホクッと。さつまいもの優しい甘さが鼻の奥に広がります。
<甘夏ジュース(200円)も絶品>
甘夏ジュースは、能古島で育った甘夏の果実を一粒ずつ剥きほぐす手間のかかった一品。
新鮮で実がギュッと詰まった果実は、すぐに沈んでしまうため、コップに注ぐ時はミキサーを回さないと注ぎ口が詰まってしまうほどです。
能古島で育ったさつまいもと甘夏。「自然のものは自然の中で食べるのがいちばん」と、芋天おばさんは微笑みます。
4. まっさらな土地に自然公園を。芋畑から始まった能古島の挑戦
<50万本の菜の花(見ごろ:毎年3月上旬〜4月中旬)/写真提供:のこのしまアイランドパーク>
「この芋は、ここの畑の土でしかできん。土が合っとうとよ」
「芋にも植木にもね。花も綺麗かろうが」
芋天おばさんは、芋天を頬張り甘夏ジュースを味わう筆者を優しい目で見つめながら、当時を懐かしむように話し出します。
<売店の目の前にある三輪車に芋天おばさんの紹介写真が貼られています>
「芋天おばさん」こと久保田睦子さん。実は、のこのしまアイランドパークの会長です。
<写真中心にいるのが久保田家に嫁いだ、芋天おばさんこと睦子さん(当時19歳) /写真提供:のこのしまアイランドパーク>
2005年に他界されたご主人の後を引き継ぎ、85歳になった現在(2023年)もパークの創設者として、お客さんを迎え入れます。
「この土地はね、もともとぜーんぶ芋畑やったんよ。それを主人が自然いっぱいの公園にしようって決めたと」
終戦後、復興のために多くのビルが建ち始めた福岡の街。
自然が減り人々が働き続ける街の様子を見た睦子さんのご主人である耕作さんは「人間は必ず疲れる時がくる。そのとき、自然の癒しが必要だ」と思い立ちます。
<久保田耕作さん/写真提供:のこのしまアイランドパーク>
昭和28年、終戦から10年も経っていない時期のことでした。
<当時を思い返す睦子さん>
当時はまだ資源が少なく、重機もない時代です。耕作さんと睦子さんは、親族と力を合わせてスコップで土を耕しました。
「ここにはツツジを植えよう。何年か後にここまで育つから、あっちにはこんな草木を育てよう」
綿密な計画に沿って、小さな木々を植え付け・育て、満足いくイメージまで草木が育つまで15年もの歳月を費やしたそうです。
<写真提供:のこのしまアイランドパーク>
「木々は植えたらすぐ大きくなるわけじゃない。陽の光を浴びて水や栄養を蓄えて、少しずつ育つ」と、睦子さんは教えてくれます。
膨大な年月をかけツツジ13万本が咲き乱れる美しい景観を作り上げ、開園にこぎつけた睦子さんたちですが、いきなり順風満帆な営業ができたわけではありません。
お客さんはがっかりした様子で、「何もない」と帰って行きました。
当時人気だったのは、ジェットコースターや観覧車などの遊具がある公園です。どんなに美しい景色があっても、乗り物がない公園を訪れるお客さんはほとんどいませんでした。
「遊具を導入すべきでは...」と考えがよぎることもありましたが、睦子さんのご主人 耕作さんは信念を曲げません。
「自然だけを楽しめる公園が必ず求められる」と、業者から持ちかけられる遊具の設置の提案を断ります。
「当時はほとんどお客さんが来んでね。『もう無理やからウチに任せんしゃい』って、他の会社から売却を持ちかけられるほどやったよ」
もう譲渡するしかないと諦めかけた親族一同。しかし、睦子さんは「もう1回みんなで頑張ってみよう」と語りかけます。
「お前がそげん言うならば、もういっぺん頑張ってみようか」耕作さんも睦子さんの熱意を受け取り、再び走り続けること約10年、ついに風向きが変わる瞬間がやってきました。
コスモス畑を手がけ始めると、来場者が急増したのです。
<写真提供:のこのしまアイランドパーク>
周囲に建物や遊具が無く、青い空と海が望める雄大な花畑があったのは当時、のこのしまアイランドパークぐらいでした。
「好意をお断りして譲渡せんって言ったけどね、その後、フェリーでやって来るお客さんをココへ送迎してくれとる」
「ありがたかね、みんなのおかげでこの場所は守り続けられとる」
今では、年間15万人が訪れる自然公園として、福岡県内外だけでなく海外の方からも愛される場所へと成長しました。
「一生懸命生きてる人たちを、お天道様は見てくれとうとよ。そげん頑張っとうとなら、力ば貸しちゃろうって。神様たちが助けてくれたって今でも思いよるよ」
土を耕し陽の光で草木と共に生きる睦子さんだからこその言葉には、計り知れない重みがあります。
5. 芋天おばさんが作り上げたのこのしまアイランドパークを巡ろう
貴重なお話を聞かせてくれた睦子さんに別れを告げ、園内の人気エリアを巡ってみましょう。
まずは、のこのしまアイランドパークの代名詞とも言える、コスモスの花畑です。高台から見下ろせるどこまでも広がる花畑は、まさに絶景。
花畑は季節に合わせ、現在も人の手で植え付けをします。
<写真提供:のこのしまアイランドパーク>
春は菜の花やマリーゴールド、夏はヒマワリ
<写真提供:のこのしまアイランドパーク>
秋はコスモス、冬は水仙など、四季折々の花を楽しめます。
<50万本のマリーゴールドは5月上旬〜7月中旬に楽しめる/写真提供:のこのしまアイランドパーク>
花畑のデザインは、お客さんに喜んでもらうため、毎年新しいものを考案します。
美しい曲線は非常に繊細で、機械では再現できません。
パークの裏にあるビニールハウスに種を植え、苗になるまで育てたら、一株ずつ人の手で植え付けます。
パークの職員さんはわずか20数名の中で外仕事を担当している職員さんが、数日かけ植え付けに取り組むんだとか。
大パノラマに咲き誇る50万本もの花々を手作業で作り出していることを知ると、この景観の圧巻さに拍車がかかります。
<海を見下ろせるブランコは人気の撮影スポット>
花畑が広がる高台の横には、景観を活かした写真撮影を楽しめるブランコが設置されています。
毎日、年齢問わず多くの方が海を眺めながら弾ける笑顔でブランコを漕いでいるそうです。
勢いよく膝を曲げ伸ばしすると、海と空が近づいたり遠ざかったり、全身で風を感じられます。
<昭和の時代にタイムスリップできる思ひ出通り>
のこのしまアイランドパークで楽しめるのは、花々や自然の風景だけではありません。
昔ながらの街並みを再現した思ひ出通りは昭和の時代を知る人だけでなく、海外からのお客さんや若者にも大人気。
<店内には昔懐かしい駄菓子がズラリと並ぶ>
駄菓子を手に取り、「懐かしい、まだあったんだ!」と会話を弾ませるお客さんもいました。
<能古島名物 能古うどんが食べられる 耕ちゃんうどんは大繁盛>
思ひ出通り内には、能古島名物の能古うどんを提供するお店もあります。昼食どきには、たくさんのお客さんが訪れていました。
お店の前にベビーカーを置けるスペースがあるため、小さいお子様連れのご家族もお客さんが多い時間帯も安心して入店できます。
<ミニ動物園のアイドル白うさぎ 写真提供:のこのしまアイランドパーク>
自然豊かな公園内には、ポニーやうさぎ、ヤギなどが暮らすミニ動物園もあります。
普段なかなか触れ合えない動物たちを間近で見られる、子供に大人気のエリアです。
ゆっくりと散歩を楽しみリラックスするも良し、美しい風景を収める撮影を楽しんでも良し、家族で自然と触れ合う1日を過ごしても良し。
のこのしまアイランドパークには、訪れた人の数だけ園内の楽しみ方があります。
6. のこのしまアイランドパークに来たら食べたいご飯やお土産
<能古島の食用花を飾った「花束ソフトクリーム(600円)」 写真提供:のこのしまアイランドパーク>
「花束ソフトクリーム(600円)」は高台の花畑前にある、レストラン防人 前の売店でのみ購入できる季節限定商品です。
目の前に広がる花畑にかざして記念撮影をするお客さんが後を絶たない、パーク随一のスイーツとして人気を誇ります。
<「レストラン防人」白いテント部分ではBBQを食べられる/写真提供:のこのしまアイランドパーク>
お腹をしっかり満たしたい方におすすめしたいのは、レストラン防人で食べられるバーベキューです。
美しい花畑を眺め心地の良い風を感じながら焼くお肉や海鮮は絶品。家族や友達とワイワイ盛り上がりながら楽しいひと時を味わえます。
パーク内を堪能して、帰りの時間が近づいてきたら最後は入場ゲート横にあるお土産屋さんに立ち寄って、旅の思い出を持ち帰りましょう。
<能古島うさぎの鼻くそ(480円)>
絶大なインパクトを与えるお土産を渡したい方におすすめなのが、チョコ菓子「能古島うさぎの鼻くそ(480円)」です。
広報さん曰く「世界でバズる予定のお土産」のパッケージには、パークの代名詞コスモス畑とミニ動物園のアイドルうさぎが描かれています。
手頃な価格と持ち帰りやすいサイズ感で高い人気を誇るお土産です。
<漫画「ほとめくかかし(全2巻)」 写真提供:のこのしまアイランドパーク>
お土産売り場の中で筆者が特に気になったのは、漫画「ほとめくかかし」です。のこのしまアイランドパークを舞台にした作品なんだとか。
全2巻で展開される物語は、能古島らしい心温まる優しいストーリーが魅力です。今日1日で巡った場所を描いた漫画をお土産に持ち帰れる、めったにない経験ができます。
7. のこのしまアイランドパークの基本情報
こちらは、のこのしまアイランドパークの基本情報です。
- 住所:〒819-0012 福岡県福岡市西区能古島
- 開館時間:月~土 9:00~17:30 日・祝 9:00~18:30(冬季は、9:00〜17:30が営業時間)
- 入館料金:大人(高校生以上)1,200円/小・中学生600円/幼児(3歳以上)400円
- 休館日:年中無休
- アクセス:フェリーで10分(能古渡船場〜能古島)→バスで約13分
- 駐車場:姪浜渡船場横(1日510円)
- 電話:092-881-2494
- 公式サイト:のこのしまアイランドパーク公式サイト
8. 能古島でゆったり時間を満喫しよう
<芋天おばさんの口上に引き寄せられるお客さんたち>
のこのしまアイランドパークで感じたのは自然の豊かさと、人と触れ合う温かさです。
芋天おばさんを見つけたお客さんたちは、「おばあちゃんいた!」「会いたくて〇〇から来ました」嬉しそうに話しかけていました。
「そげん遠くから来んしゃったとね!」「ありがとねぇ」「嫌じゃなければ、ここに住所ば書かんね、年賀状ば送っちゃろう」芋天おばさんは1人1人と目を合わせ、にこやかに返事をしていきます。
今は年賀状を受け取る機会が減っているから、1通でも届いたら嬉しいだろう。と毎年年賀状を送り続け、今年(2023年)は約1,300家もの住所を筆で書き上げました。
「年賀状を出すのが生きがい。人に喜びを与えんと自分も幸せになれんし、それが人間としての生き甲斐だと思う」
自然の恵みや周りの人に心から感謝しているからこそ多くの人に愛される、芋天おばさんこと久保田睦子さんに会いに、能古島へ行きませんか。
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大塚たくま
- 福岡をこよなく愛する編集者。株式会社なかみ代表。自身でスポンサーになるほどのアビスパ福岡サポーター。