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【岡山】まるでラピュタの世界!瀬戸内海に浮かぶ「犬島」でアートと島の歴史に触れる
<トップ画像:犬島精錬所美術館にある銅製錬所の遺構>
瀬戸内海でアートの島というと、瀬戸内国際芸術祭のメイン会場である直島が有名で多くの観光客が訪れますが、芸術祭の会場は他にもいくつかあります。
岡山市の東部、宝伝(ほうでん)の沖合に浮かぶ「犬島(いぬじま)」もその一つ。周囲3.6kmの小さな島ですが、芸術祭開催期間以外でも鑑賞できるアート作品が点在し、美術館では、採石業と銅の製錬で栄華を極めた島の歴史を感じることができます。
今回は、あえて芸術祭が開催されていない期間に訪れて、この島を散策して感じた島の魅力をお伝えします。そこには、ラピュタの世界が広がっていました。
目次
犬島へのアクセスは、岡山市の宝伝港からわずか10分
<宝伝港と定期船あけぼの号>
瀬戸内国際芸術祭の会場になっている多くの島が香川県に属しているのに対し、この「犬島」は岡山県岡山市にあります。
公共交通機関で向かう場合は、JR西大寺駅前の西大寺バスセンターからバスで西宝伝バス停を目指します。所要時間は約30分。2023年4月1日(土)~11月27日(月)の期間、両備バスの臨時直行バスが運行されています。宝伝港からは1日に6〜8便運航の「あけぼの丸」という小型の高速船に乗船。宝伝港周辺には有料駐車場もあります。
<犬島港に到着>
船に乗ってわずか10分。あっという間に到着した犬島は、面積0.54平方km 、周囲3.6km、人口約50人の小さな島です。
島名の由来は諸説あります。桃太郎の鬼退治に同行した犬にご褒美として島が与えられたという説。菅原道真公が海上で嵐に遭った際に、愛犬の鳴き声を頼りに島に流れ着き、そこには愛犬にそっくりの巨石があり「犬石(いぬいし)」と名付けられたという説など。
まずは犬島チケットセンターへ
<犬島港と犬島チケットセンター>
港に着いたら、まずは犬島チケットセンターへ。中には、チケット販売所とミュージアムショップ、カフェなどがあります。カフェでは、島の名物のカボチャとそうめんが入った「犬島ぜんざい」をいただくことができます。
<犬島チケットセンターの外観>
この建物は、かつての民宿を建築家の三分一博志氏がリノベーションしたもの。建物自体がアートのようです。
<犬島チケットセンター内のチケット売り場>
犬島チケットセンターで、アート施設の鑑賞チケットを購入します。島のアート施設は、犬島精錬所美術館、家プロジェクト、犬島 くらしの植物園の3つで、共通の鑑賞チケットになっています。
<犬島チケットセンターのミュージアムショップ>
ミュージアムショップでは、犬島のアート関連の書籍やオリジナルグッズ等が販売されています。荷物を預けておけるコインロッカーもあります。
<犬島チケットセンター前の広場>
犬島チケットセンターの前には広場があり、アート作品のようなチェアーが並んでいます。護岸に使われているのは犬島産の御影石。
犬島は、かつて花崗岩の産地として繁栄し、採石場が島のいたるところに存在していました。大阪城桜門枡形にある「蛸石(たこいし)」も犬島から搬出されたもの。巨大な石は岡山藩の藩主池田忠雄の財力を誇示しています。
まるでラピュタの世界!犬島精錬所美術館
採石業とともに、犬島の産業で重要な役割を果たしたのが銅の製錬業。製錬施設や発電所が設けられ、明治40年代に隆盛を極めました。従業員の数は最盛期には2,000人を超え、島の人口も5,000人を超えるまでに増加。島の人口が50人ほどの現代からは想像もつきません。
広場の先にある犬島精錬所美術館のゲートから一歩足を踏み入れると、過去にタイムスリップしたような空間が広がっています。
<カラミ煉瓦が積まれた光景>
黒光りするカラミ煉瓦が積まれた景観が至るところに。ここは、製錬所稼働時には、鉱石や銅製品の置き場として使われていました。ほぼその当時のまま保存されています。製錬所は、1918年(大正7)年末には操業休止となり、わずか10年ほどの歴史に終止符を打ちました。カラミ煉瓦とは、銅の製錬過程で発生する鉱さいから作られたものです。
<犬島精錬所美術館の外観>
この煙突のあるところが犬島精錬所美術館です。犬島製錬所の閉鎖後、銅製錬所の遺構は、ベネッセコーポレーションの「犬島アートプロジェクト」により美術館として保存・再生されることになりました。
2008(平成20)年4月に、犬島アートプロジェクト「精錬所」としてオープンし、2013(平成25)年に犬島精錬所美術館と改称。「在るものを活かし、無いものを創る」というコンセプトで、世界的に活躍する現代美術家の柳幸典氏、建築家の三分一(さんぶいち)博志氏の力で、負の遺産がアートとして蘇ったのです。
<犬島精錬所美術館内には6つのスペースが>
美術館に入ると、薄暗い空間の通路が続き、柳幸典氏の「ヒーロー乾電池」という作品が、6つのスペースに展示されています。(写真撮影は禁止です。)かつて日本の近代化に貢献し、隆盛を誇った製錬所。現在はその跡を残すのみとなった姿に、日本の近代化に警鐘を鳴らした小説家 三島由紀夫というモチーフを重ね、現代社会のあり方について問いかけています。
<犬島精錬所美術館と銅製錬所の遺構>
美術館の建物の隣には、廃墟感満載の銅製錬所の遺構があります。
<まるでラピュタの世界を思わせる銅製錬所の遺構>
宮崎駿監督のスタジオジブリ作品『天空の城ラピュタ』を思わせる廃墟感漂う銅製錬所の遺構に圧倒されます。遺構を巡る散策路の南端には発電所跡もあり、こちらも必見です。
<銅製錬所の遺構と海>
振り返ると海が間近に見えるロケーションもいいですね。製錬所稼働時は、対岸にある沖鼓島に犬島製錬所の社宅がありました。
<犬島精錬所美術館と対岸の岡山県宝伝付近>
左手には、犬島チケットセンターの先に対岸の風景が広がっています。
島の風景と溶け込む「家プロジェクト」のアート作品の数々
<犬島精錬所美術館の東の集落に点在する「家プロジェクト」>
犬島精錬所美術館を出て、「家プロジェクト」の標識に従って左手のほうに向かうとあるのが「家プロジェクト」と呼ばれるアート作品が集まったエリア。
家プロジェクトは直島にもありますが、こちらは、アーティスティックディレクターに長谷川祐子、設計にブリッカー賞受賞の建築家・妹島和世氏を迎えて、2010(平成22)年に始まりました。
家プロジェクトは、「日常の中の美しい風景や作品の向こうに広がる身近な自然を感じられるように」との願いが込められた屋外型の企画展示のこと。
<S邸:荒神明香「コンタクトレンズ」>
5つのギャラリー(F邸、S邸、I邸、A邸、C邸)と、中の谷東屋、石職人の家跡に、様々なアーティストの作品が公開されています。これは、透明アクリルの壁が連なる「S邸」。
<F邸:名和晃平「Biota(Fauna/Flora)」>
F邸には、複数の作品が坪庭を含む建物全体の空間に展示されています。
<A邸:ベアトリス・ミリャーゼス「Yellow Flower Dream」>
島の風景と溶け込む作品が多く、こちらのA邸の作品もその一つ。犬島の自然に見られる幾何形体、人びとの暮らしの生命感をエネルギーあふれる色を用いて表現されています。
<I邸:オラファー・エリアソン「Self-loop」>
向かい合う3つの鏡を配置した作品で、2方向からは窓からの風景を写し出し、作品中央の一点に立つと、無限のトンネルの中にいるような不思議な感覚を覚えます。
<淺井裕介 「太古の声を聴くように、昨日の声を聴く」>
集落内の空き地に展開される「石職人の家跡」。動植物などの生命力あふれるモチーフがこの島の土地に根ざすように描かれています。
<港の近くにあるベンチ>
一通り作品を鑑賞したら、犬島港に戻りましょう。港に戻る道にはこんなものも。うさぎの形で可愛いですね。
<採石場跡の池>
島のあちこちには池がありますが、これは山などを切り崩して地中深くまで掘られた採石場の跡。
<犬島港を出航し、宝伝港に向かうあけぼの丸から見た犬島>
犬島を後にして、宝伝港に戻ります。犬島港からは、宝伝港行きの高速船のほかに、豊島(てしま)の家浦港、直島の宮浦港行きの高速船も出ています。アート鑑賞を目的とした島巡りをするなら、豊島、直島も含めた2泊3日ぐらいのプランにしてもよいでしょう。
犬島(犬島精錬所美術館/家プロジェクト)
- 住所:岡山県岡山市東区犬島
- 開館時間:9:00〜16:30(最終入館16:00)
- チケットセンター 9:00〜17:00
- 休館日:火曜~木曜日(3月1日~11月30日)※ただし祝日の場合は開館、12月1日~2月末日は全日休館
- 公式サイト:ベネッセ アート サイト直島
まとめ
いかがでしたか?この島の歴史に思いを馳せながら、アートを鑑賞する「犬島」の旅。犬島精錬所美術館と家プロジェクトを鑑賞して所要時間は約2〜3時間。宝伝港を13時45分に出る船で犬島に向かい、15時35分発の船で戻ってきましたが、ゆっくり鑑賞し、アート施設以外の場所も散策するなら、3〜4時間はみておいたほうがいいかもしれません。
この島には同じ鑑賞チケットで入れる「犬島 くらしの植物園」という施設もあります。長く使われていなかったガラスハウスを中心に約4,500平米の土地を再生し、犬島の風土や文化に根ざした植物園として展開しているもので、お時間があればこちらに寄ってみてもいいでしょう。
なお、犬島精錬所美術館は、12月1日~2月末日の期間は休館になりますので、ご注意ください(家プロジェクトは鑑賞可能)。
最後に、今回の記事でご紹介した内容を動画でご紹介します!
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斎(いつき)信夫
- 兵庫県西宮市生まれの神戸育ち。1998年より数々の旅行サイトの企画・運営・編集に携わる。国内は沖縄と北海道が大好きで6年半沖縄市に在住。海外は特に台湾が好きで渡航回数10回以上。ワクワクするライブ感のある記事をお届けできたらと思っています。