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今年で没後100周年。スペインの"光の画家"ソロージャ"って?
<トップの画像:ホアキン・ソロージャの像/Autor: Hiberus © Madrid Destino>
今年はスペインで"光の画家"と呼ばれているホアキン・ソロージャの没後100周年にあたります。同じスペインの画家でも、ピカソやベラスケス、ゴヤに比べると日本での知名度は低いかもしれません。今回はそんなソロージャのお話です。
目次
ソロージャはバレンシア生まれ
ホアキン・ソロージャ・イ・バスティーダは、1863年にバレンシアの現在の中央市場のすぐ近くで産声をあげました。マンタス通り8番地には、似顔絵とともに"バレンシアの著名な画家ホアキン・ソロージャ・イ・バスティーダの生家"と書かれた陶器タイルの看板が掲げられています。
バレンシアの美術学校を卒業した後マドリードに出てプラド美術館で模写に励み、ここで特にベラスケスに影響を受けたそうです。その後、ローマで古典派やルネサスの絵画に触れ、パリで当時最先端だった印象派と出会います。25歳でスペインに帰国すると同郷のクロティルデと結婚し、マドリードに住み始めました。ここから人気画家としての道がスタート。数々の賞を手にし、フランス政府からはレジオンドヌール勲章を授かっています。
<バレンシア市中心部にあるソロージャの生家©VisitValencia>
"光の画家"と呼ばれる理由
ソロージャは生涯でおよそ2,000の作品を残したと言われていますが、とりわけ有名なのが故郷バレンシアの海辺を描いたものです。
その多くには海で遊ぶ子供たちや働く漁師の姿など、風景だけにとどまらず生き生きとした人物が描きこまれています。明るく豊かな色彩で、降り注ぐ太陽の光を独自の技法で巧みに描写したことが"光の画家"と呼ばれる所以です。
<ソロージャが好んでよく描いたバレンシアの海岸©VisitValencia>
また、ソロージャのミューズであった妻クロティルデを描いた作品も多く残しています。2人の間には子供が3人いて、とても仲のいい家族だったのだとか。ソロージャが旅先からクロティルデに送った書簡が何千通も残っているそうで、驚きます。
ソロージャを印象派の画家とする説もあれば、外光派だ、いや光輝主義だ、と諸説あるようで、正確にはどれが正しいのかはっきりわかりません。なので、日本で使われる"光の画家"という呼び方がしっくりくる気がします。
余談ですが、Sorollaは日本語でソロージャ、ソローリャ、ソローヤと書かれます。スペインの地方によって発音も異なるので、どの書き方が正しいということはありません。外国語を日本語表記にするのは難しいですね。
ニューヨークにあるスペイン各地の風俗画
さて、ソロージャの人気は欧州だけにはとどまらず、1909年にはニューヨークでの個展で大成功をおさめます。
これがきっかけになったのか、ニューヨークにあるヒスパニック・ソサエティ(スペイン、ポルトガル、ラテンアメリカの文化と芸術を伝えることを目的とした施設)からスペイン各地の風俗を描く一大壁画プロジェクトが舞い込みました。このためにおよそ8年を費やしてスペイン中をまわったのだとか。
7、8年前にこの作品群の展示会がスペインで開かれた際に私も観に行きましたが、あまりのすばらしさに2回足を運びました。スペイン好きなら、どの絵がどの地方を描いたものなのか考えながら見るとより楽しいはず。ニューヨークに行く機会がある方は、足をお運びくださいね。私はまた観ることを目的にニューヨークに行こうと思うほどです。
<バレンシア美術館所蔵のバレンシアの風俗画。すばらしい!!©Museo Bellas Artes>
ソロージャは1920年に片麻痺になるまで絵を描き続け、1923年にマドリード郊外の療養先で天に召されます。60歳でした。
自宅兼アトリエが美術館としてオープン
ソロージャの作品は世界各地の美術館で展示されていますが、作品数の数からも1番におすすめするのがマドリードにあるソロージャ美術館です。ここは1911年に建築されソロージャの自宅兼アトリエとして使われていました。門を入ると、ソロージャ自身が設計したと言われるアンダルシア風の庭園が迎えてくれます。2階建ての邸宅はアトリエと住居に分かれています。
ソロージャが使った画材がそのまま残されているアトリエは広く、天井は2階分の高さがあり、窓からは外からの光がふんだんに射しこみます。赤い壁の色は当時のままなのだとか。館内にはアトリエを含む3つのサロンにソロージャの作品が多数展示されていて、目を楽しませてくれます。無機質な空間に絵画が展示されている美術館とは違い、ソロージャが創作活動を行っていた跡が色濃く残るアトリエでの展示はより感動的です。
<アトリエに展示された絵画には妻クロティルデの大きな肖像画も/Paolo Giocoso©Madrid Destino>
妻クロティルデの願いが実現した美術館オープン
住居だった部分もダイニングルームやリビングルームが公開されており、ソロージャの生前に実際に使われていた家具や飾られていた調度品を見学することができます。さすが画家だけあり、センスの良さが漂う空間です。家族でこの食卓を囲んでいたんだ、ここでくつろいでいたんだ、と思うとソロージャをより身近に感じます。
ソロージャが亡くなった後、未亡人となったクロティルデがここを美術館とすることを希望し、当初は長男が運営していましたが、現在は国の管理下にあります。
ソロージャ美術館
- 住所:General Martínez Campos, 37, 28010 Madrid, スペイン
- 公式サイト:ソロージャ美術館
最後に
<2年前にバレンシアで開かれたソロージャの描いた女性展©VisitValencia>
ソロージャの絵画をもっとここに掲載できたらいいのですが、ライセンスの問題から難しいため、ぜひインターネットで検索して作品を観てみてくださいね。
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田川敬子(Keiko Tagawa)
- 1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。