ドイツの歴史を伝える場所、ヴァイセンゼーのユダヤ人墓地

墓地

ドイツの文化について多くの記事を執筆中のK.Hayashiです。

ドイツを訪れると日本との違いで驚かされることが多くあります。その中で私が驚かされたのは墓地の訪れやすさでした。

墓地には多くの自然があるため市民の散歩の場になっています。中には美術作品が設置されていたり、カフェがあったり、お墓参り以外にも多くの人が訪れる場所になっているのです。ベルリンには多くの墓地がありますが、その中にはユダヤ教徒のためのユダヤ人墓地があります。

今回紹介したいのは、そのうちの1つであるベルリンのヴァイセンゼーユダヤ人墓地です。そこでは他の墓地にはない特別な雰囲気があり、また歴史を強く感じられる場所になっています。

目次

ベルリン郊外に位置する墓地

ユダヤ人墓地

ヴァイセンゼーのユダヤ人墓地があるのはベルリン北東部にある郊外のエリア。訪れる際に利用するのは路面電車やバスで、市内中心部からは約40分ほどで到着するでしょう。周辺は市街地ですが、都心部から離れているため都会の騒がしさはありません。大通りを離れると静かな住宅街が広がっています。

墓地があるのはそんな静かな住宅街の片隅です。広大な墓地は塀に囲まれており入場時間も決められています。そのため開館時間や入り口を確認してから訪れましょう。そうしないと入り口を見つけられずに長距離を歩くことになったり、時間外で入れなかったりするかもしれません。

ユダヤ人墓地

広大な墓地

ユダヤ人墓地

墓地を訪れると驚かされるのはその広さです。40haの広さを持ち、それは東京ドームで例えるなら8個分以上の広さがあります。そんな広大な墓地には木々が枝葉を伸ばし、森のような場所になっているのです。このような場所にあるのは11万を越える墓石。広大な森のような場所とはいえ、墓石の密度が高く密集するように並ぶ多くの墓石に驚かされるでしょう。

墓石の数からわかるように多くのユダヤ人が葬られており、その中には有名人のものもあります。それは最近日本で話題になったユダヤ人画家、レッサー・ユリィのもので、彼の墓をここで訪れられるのです。

ユダヤ人墓地

廃墟のような墓地

ユダヤ人墓地

広大な墓地を奥へと向かうと、少しずつ雰囲気が変わっていくことに気付くでしょう。多くの墓石が生茂る草木に覆われています。そればかりか、墓石の幾つかは木々に押しつぶされて倒されています。墓地の多くの区画は手付かずになっており、自然に覆われてしまっているのです。そのため、ドイツにある他の墓地が持つ整備された公園のような趣はありません。

多くの人が訪れる場所とはいえ、ここでは廃墟のような雰囲気さえ感じられるでしょう。しかし、このような状態になっていることには理由があるのです。

ユダヤ人墓地

ベルリンから消えたユダヤ人

ユダヤ人墓地

ユダヤ人墓地の墓石の数からわかるように、かつてはベルリンに多くのユダヤ人が住んでいました。1920年代にその数は16万人を越えていたそうです。

しかし、1930年代になると状況は一変します。ナチスが政権を握るとユダヤ人の迫害が始まったのです。ドイツから逃れて亡命する人もいれば、強制収容所に送られて命を落とす人もいました。こうしてベルリンからユダヤ人は姿を消すことになったのです。そして虐殺や亡命によって、世話されることのない墓地が多く生み出されたのでした。

このようにベルリンのユダヤ人墓地の一部が手付かずになっているのは、ナチスによるホローコストの影響なのです。

森

ホロコーストが生み出した墓地の荒廃

ベルリンにはユダヤ人の迫害を学べる場所がいくつかあります。

例えば、ユダヤ文化やホロコーストの記録を伝えるベルリン・ユダヤ博物館。またベルリンの隣町であるオラニエンブルクにはユダヤ人などを収容した強制収容所のザクセン・ハウゼン強制収容所もあり、そこでは虐待や虐殺の実態を知ることになるでしょう。こうした場所では迫害に関する資料や記録によって、ユダヤ人に何が起きたかを学ぶことができるのです。

一方、ヴァイセンゼーのユダヤ人墓地では迫害に関する資料や記録が展示されているわけではありません。ですが、その荒廃した墓地の有様によって、博物館や強制収容所とは違う形でユダヤ人に何が起きたのか強く実感することができるのです。

お墓

歴史を感じられる場所、ヴァイセンゼーのユダヤ人墓地

ドイツを訪れる際に歴史に興味を持ってユダヤ人迫害を学べる場所を訪れる人もいるでしょう。その際に私がおすすめしたいのはヴァイセンゼーのユダヤ人墓地を訪れることです。ここでは森のようになった自然に帰りつつある墓地が、ベルリンからユダヤ人が消えてしまったことを伝えてくれます。

それは、資料や記録とは違う形で、悲劇を繰り返してはいけないことを気付かせてくれるでしょう。

ヴァイセンゼーのユダヤ人墓地 / Jüdischer Friedhof Weißensee

  • 住所:Herbert-Baum-Straße 45, 13088 Berlin
  • 開館時間:
    10月〜3月 7:30~16:00(金曜は~14:30、日曜は8:00~)
    4月〜9月 7:30~17:00(金曜は~14:30、日曜は8:00~)
  • 休園日:土曜日とユダヤ教の祝日
  • 公式サイト:ヴァイセンゼーのユダヤ人墓地

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K.Hayashi

大学卒業後に渡独。フリーランスライターとしてドイツの文化について多くの記事を執筆中。

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