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『京都人の密かな愉しみ』を求めて、西陣の風情ある通りを散策

京都市の西陣は、細い路地沿いに町家が軒を連ねる穏やかなエリア。とりわけ小川通(おがわどおり)には、歴史ある商家や寺社、茶道家の門構えが連なり、風情ある景観となっています。
実はこの一帯は、NHK BSの人気ドラマシリーズ『京都人の密かな愉しみ』の舞台となっており、ファンにとっては憧れの場所。小川通の北エリアで、ドラマの場面を追体験してきました!
目次
- アクセスはバスが便利|風情ある小川通の北エリア
- 「久楽屋春信」のモデルとなった「俵屋吉富」へ
- 俵屋吉富の茶房で甘味を堪能
- 名店の茶菓子をお土産に
- 表千家と裏千家の本拠地が並ぶ小川通を歩く
- 日蓮宗の古刹・本法寺で『京都人...』の名場面を思い出す
- 本阿弥光悦が作庭した「巴の庭」
- まとめ
アクセスはバスが便利|風情ある小川通の北エリア
京都市営バス9系統「堀川寺ノ内バス停」から徒歩で3分ほど、京都市を南北に走る堀川通から一筋入ったところに、小川通の北エリアがあります。
交通量の多い堀川通のすぐ近くとは思えないほど閑静なこの通りは、古都の情趣が溢れるところ。町家の板壁や犬矢来が端正な路地は、無電柱化されており、古き佳き時代の面影を感じます。
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<小川通と寺之内通が突き当る先に俵屋吉富 小川店が見える>
小川通と寺之内通が突き当る一角には、老舗の和菓子店「俵屋吉富 小川店」があります。今回の旅はここからスタートします。
「久楽屋春信」のモデルとなった「俵屋吉富」へ
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<俵屋吉富 小川店>
俵屋吉富は創業1755年の伝統ある和菓子店。近くの室町通に本店があり、烏丸通にも支店があります。2015年から始まった『京都人の密かな愉しみ』シリーズは、2026年1~3月放送の第3シーズンに至るまで、多くのファンがいるドラマ。
第1シーズンおよび第3シーズンの舞台となった老舗和菓子屋「久楽屋春信(くらやはるのぶ)」は、俵屋吉富がモデルです。本店と並び、ここ小川店もロケ地として使われています。
ドラマでは入口に「御菓子司 久楽屋春信」と書かれた暖簾が下がっていましたが、木製の突き出し看板は「俵屋吉富」のままで撮影されていました。本物の俵屋吉富の看板と暖簾を見比べて、つい笑顔になってしまいます。
俵屋吉富の茶房で甘味を堪能
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<茶房「茶ろん たわらや」の入口>
今回の旅で小川店を訪れたのは、こちらのお店が手がける茶房「茶ろん たわらや」で、甘味やお抹茶を楽しむためです。
茶ろん たわらやは、ドラマの中では「茶ろん くらや」という名称で出てきました。第1シーズンのヒロイン・沢藤三八子(常盤貴子)は久楽屋春信の若女将。
彼女にひそかに想いを寄せる大学教授のエドワード・ヒースロー(団時朗)が、ここで栗善哉を食べる場面に使われました。また、第3シリーズのヒロインで三八子の義理の娘となった三上洛(穂志もえか)が、大学院の友人とお茶をする場面もここでした。ファンとしてはぜひ、このお店に来てみたかった...。
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<石畳の路地(左)/茶ろん たわらやの店内>
俵の絵が描かれた暖簾をくぐり、石畳が並ぶ路地を歩いていくと、茶ろん たわらやにたどり着きます。フローリングの床に窓の障子が端正な店内は、8席だけのこぢんまりとした空間。
木のテーブルに白い椅子が並び、落ち着いた時間を過ごせます。筆者たちが案内された席は、偶然にもドラマの中で洛ちゃんたちが座っていた席。気分が上がります。
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<寒椿の上生菓子と抹茶のセット>
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<ドラマにも出てきた栗善哉>
筆者は季節の上生菓子と抹茶のセットを、同行の家族は栗善哉を注文しました。この日選んだ上生菓子は、こなし製の寒椿。上品な甘さと、もちもちした食感が、口の中で豊かに広がります。香りがよくまろやかな抹茶との相性が最高です。
栗善哉は、優しい甘みの小豆汁に、香ばしく焼かれた白玉と大粒の栗がぴったり。箸休めの塩昆布が、甘さを一層引き立ててくれます。ドラマの中では、ヒースロー先生と三八子もこの善哉を食べていました。追体験の旅を満喫!
すっかり満足してお店を出たところ、外には入店待ちのお客さんの長い行列が出来ていました。筆者と同じく、『京都人...』のファンも多そうでしたよ。できれば午前中の、早い時間に足を運ぶことをおすすめします!
名店の茶菓子をお土産に
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<俵屋吉富で購入した和菓子。右は三層の細工羊羹>
茶ろん たわらやで甘味と抹茶を楽しんだ後は、もちろん俵屋吉富のおみやげを買い求めます。ここ小川店は、茶菓子に特化したお店。実はすぐ北にのびる小川通沿いには、茶道の表千家と裏千家の家元邸が並んでおり、この一帯は茶道発祥の地なのです。
美味しさはもちろん、形や彩りといった意匠にもこだわる俵屋吉富のお菓子は、大切な人へのおみやげにもぴったり。季節のモチーフをあしらった三層の細工羊羹は、品が良く爽やかな甘みと、芸術的なデザインが魅力です。
しっとりとした味わいが広がる、お店を代表する銘菓の「雲龍」もおすすめ。『京都人...』のファンにお土産をあげたところ、たいへん喜ばれましたよ。
俵屋吉富 小川店
- 所在地:京都市上京区寺之内通小川西入ル 宝鏡院東592
- 電話:075-411-0114
- 営業時間:10:00~18:00
- 定休日:火曜
- 公式サイト:俵屋吉富 小川店
表千家と裏千家の本拠地が並ぶ小川通を歩く
俵屋吉富 小川店を出て北へ歩くと、小川通の右側に沿って表千家の家元邸と裏千家の家元邸が並ぶ様子が見えてきます。ここが茶道文化の本拠地です。
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<表千家「不審庵」の門>
表千家の威厳ある長屋門の左横には、「千利休居士遺蹟 不審庵」という石標が立っています。不審庵(ふしんあん)とは茶室の名前であり、同時に屋敷および表千家の流派組織そのものを指す号。
千家2代目の千少庵が、茶の湯の大成者である千利休が建てた茶室「不審庵」をここに再建したことから、茶道文化の中心としてのこの地の歴史が始まりました。
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<裏千家「今日庵」の門>
不審庵の北隣には、裏千家の家元邸があります。こちらは檜皮葺の屋根に竹樋が設けられた門で、「千宗旦居士遺蹟 今日庵」という石標が立っています。今日庵(こんにちあん)も茶室の名前であり、屋敷および裏千家の流派組織そのものを指す号です。
千家3代目の宗旦は、三男の宗左に不審庵を譲り、自らは北隣に建てた今日庵に、四男の仙叟宗室とともに移り住みました。後に宗室が今日庵を継ぎ、裏千家の基礎を固めます。
どっしりした不審庵の門と、侘びた風情のある今日庵の門を眺めながら、茶道の長い歴史に想いを馳せました。ちなみに小川通にはその名のとおり、かつては小川が流れており、良質な地下水に恵まれた地域だそう。千家一族がこの地に茶室を営んだのは、その名水を求めたもの...という説もあるそうです。
日蓮宗の古刹・本法寺で「京都人」の名場面を思い出す
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<本法寺の仁王門>
今日庵の向かいには、本法寺の荘厳な仁王門があります。このお寺は日蓮宗の本山。室町時代に活躍した日親上人が開創し、幾度かの移転を経て、1587年にこの地に落ち着きました。日蓮宗を熱心に信仰した京都の有力な町衆に支持されて、街の人々とともに歴史を歩んできた古刹です。
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<本法寺の本堂。右側の桜の木に注目。左には長谷川等伯像が立つ>
実は本法寺は、『京都人の密かな愉しみ』ファンにとっても聖地。第一シーズンでは、三八子が長年想い続けた三上驍(石丸幹二)と再会する場面で使われました。
本堂の横に咲いていた桜の花が見事で、ひときわドラマチックな場面に息を呑んだものです。筆者が訪れた時はまだ冬枯れていましたが、「おお、これがあの立派な本堂と桜の大木!」と見入ってしまいました。
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<多宝塔とその前にのびる石畳。ここもドラマに出た場所>
多宝塔と、その前にのびる石畳も、『京都人...』ファンには必見です。第二シーズンでは、洛とともにここを訪れた三八子が、子供の頃に石畳に落書きして怒られたことや、高校生の時に夢を諦めて多宝塔の裏で泣いたことを、しみじみ語っていました。
優美な曲線を描く多宝塔や、端正な石畳を見ながら、「このお寺が一番好き」と言っていた三八子を思い出して、じーんときてしまいます。
本阿弥光悦が作庭した「巴の庭」
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<「佛涅槃図」と「巴の庭」の拝観入口>
本法寺を支えた人の中には、長谷川等伯や本阿弥光悦といった文化人もいました。能登(石川県)で生まれた等伯は幼いころから画才を発揮し、上洛してからは本法寺の塔頭に住み、絵師として制作に励んでいきます。
本法寺には縦10m、横6mもある大作「佛涅槃図」が所蔵されています。通常は原寸大の複製画を展示していますが、3月14日~4月15日の期間には、真筆が公開されます。
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<書院からのぞむ「巴の庭」>
京都で刀剣の鑑定や研磨を家業とする家に生まれた本阿弥光悦は、書・絵画・陶芸・漆芸などに優れた作品を残した、マルチな芸術家。本法寺は本阿弥家の菩提寺です。
豊臣秀吉の命によって本法寺が現在の地に移転した時に、光悦は庭園を作りました。「巴の庭」と呼ばれるこの庭園は、室町時代の書院風枯山水の影響を残すもので、国指定名勝となっています。これはぜひ見ておかねば!
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<奥に見える石組の「枯れ瀧」>
「巴の庭」は書院の東側から南へ曲がる鍵形で、広さはおよそ200坪。三箇所の築山で巴紋を表現することから「三巴の庭」と呼ばれます。
東南の隅には石組による枯れ瀧が配置されており、縦縞紋様の青石によって流れ落ちる水を表現しています。手前に架かる平石橋と相まって、まるで水音が聞こえてくるよう。庭全体を覆う苔の色も、風情があります。
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<手前の丸石と奥の蓮池で「日蓮」を表している>
書院の縁側の前には、切石による十角形の蓮池が配置され、夏季には蓮の花が咲くそうです。隣には「日」を表す丸い石が置かれており、この二つを組み合わせて「日蓮」になるとのこと。熱心な日蓮宗徒であった、光悦の心が伝わってきます。
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<庭のつくばい(左)/拝観受付の近くに「京都人...」のポスターが貼ってありました>
本法寺
- 所在地:京都市上京区小川通寺之内上ル本法寺前町617番地
- 電話:075-441-7997
- 拝観時間:10:00~16:00
- 休館日:無し
- 拝観料:展示物・巴の庭(通常期) 大人 500円/中学・高校生 300円/小学生以下 無料
- 公式サイト:本法寺
※大涅槃図開帳期間(3月14日~4月15日)大人 1000円/中学・高校生 600円/小学生以下 無料
※2026年4月現在。※行事等により休館あり、休館日・最新情報は公式サイトを要確認。
まとめ
茶道の中心地に、伝統ある和菓子店の茶房や、厳かな寺社が連なる小川通の北エリアは、歴史ある西陣においても特別な空気が漂う場所です。「京都人の密かな愉しみ」のファンなら、さらに楽しめること請け合い!以下の点をお心に留めながら、足を運んでみてくださいね。
- 小川通の北エリアへのアクセスはバスが便利です。京都市営バス9系統「堀川寺ノ内バス停」から徒歩で3分ほどのところにあります。
- ドラマ『京都人の密かな愉しみ』シリーズの「久楽屋春信」のモデルとなったのは「俵屋吉富」で、小川店も登場します。
- 俵屋吉富 小川店には茶房「茶ろん たわらや」があり、甘味や抹茶を楽しめます。
- ドラマにも出てきた「茶ろん たわらや」はとても人気があるため、午前中の早い時間に足を運ぶのがおすすめです。
- 小川通の北エリアには、表千家の「不審庵」と、裏千家の「今日庵」があります。
- 今日庵の向かいには、日蓮宗の本山の「本法寺」があります。
- 『京都人の密かな愉しみ』では、本法寺の境内も出てきます。
- 本法寺に縁の深い文化人に、長谷川等伯と本阿弥光悦がいます。3月14日~4月15日には、長谷川等伯の大作「佛涅槃図」が公開されます(通常時は複製を展示)
- 本阿弥光悦が作庭した「巴の庭」は、室町時代の書院風枯山水の影響を残す名庭です。
それでは、西陣の一角で京都人の魂を感じる素敵な旅を!

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ASA24
- ライター/英和・和英翻訳者。出版社に11年勤務後、2009年にシンガポールに転居。東南アジアの文化と料理にハマる。2013年に帰国した後は日本文化に改めて関心を深め、今はとにかく国内各地を旅したいです!
※ライター名を「朝茶」→「ASA24」に変更しました。



























