ハリウッドスターと共演!映画『Blueback』にエキストラ出演した裏話

オーストラリア

オーストラリアの元旦に一般公開された映画『Blueback』。実はこれ、私の住む町がロケ地になっており、私を含む多くの町民がエキストラとして出演しました。撮影当時の町の様子や筆者がエキストラとして出演したときの様子など、普段なかなか見ることのできない舞台裏を紹介します。

目次

映画『Blueback』とは

オーストラリアの作家ティム・ウィントンによる児童小説『Blueback』を映画化したものです。

内容としては、海辺の自然豊かな町で自然と一体となって暮らす親子を描いたもの。故郷の自然を守るためにリゾート開発や密漁船に立ち向かう母、その姿を見て成長する娘はBluebackと名付けた巨大なクエと友情をはぐくみ故郷を離れて海洋生物学者になり、母の不調によって故郷へ戻ることになるが・・・

大自然と家族愛、友情を描いた全世代に向けたファミリードラマです。

地元密着型の撮影

主演がオーストラリア出身俳優のミア・ワシコウスカとエリック・バーナーというハリウッドスターたち。町での撮影が決まったときは、豪華なセットを使ったりするのだろうと思いましたが、ほとんどのものが町内で賄われました。

例えばケータリングは全て町のレストランやカフェのもの、建物は町に既存しているものを利用し、道具類は町民から借りたり買い取ったりしていました。当時町のFacebookグループでは、撮影班から『レトロな家具が必要なので貸してください。』などのメッセージがよく回っていました。

レトロな家具

海の撮影シーンでは地元のダイバーやライフセーバーが同行しており、ダイビングショップを経営する友人はとても忙しそうでした。

ビーチ
<撮影でよく使われたビーチ>

そして町民によるエキストラ出演もあり、私も出演機会がありました!(詳細はのちほど)

町での撮影は約4ヶ月ありましたが、最後は撮影に使用した道具類をヤードセールのように売りさばき、その売り上げの全ては町の小学校へ寄付されました。

洋服

購入品
<私たちが実際に買ったもの>

これまでの映画業界というものは全て自分たちで持ち込むスタイルが多かったようですが、今では地元に密着して還元していくスタイルが流行っているようです。

エキストラ出演の様子

撮影内容

私の役は岬で行われる葬儀の参列者約30人のうちの1人。主演のミア・ワシコウスカと葬儀を執り行う祭祀が向かい合い、その周りを参列者が円を作って囲みました。

岬
<葬儀のシーンで使われた岬>

エキストラにはセリフはなく、祭祀の言葉を聞いて頷いたり微笑んだり、故人を思い出して涙してみたりとそのあたりはアドリブです。

これだけ聞くと簡単そうですが、この先が私には大変でした。というのも、葬儀の最後には周りの人とハグやキスをして会話をしながら円を解くというものでしたが、これもアドリブです。

ハグ

監督は『普段やっているように自然体でやってくれたらいいから』と言いながらこのシーンを何十回も撮りましたが、キスハグの文化で育っていない私からしたら知らない人とのキスハグには抵抗があり、かなりぎこちなかったように思います。

衣装やヘアメイク

事前に故人の人柄と葬儀の雰囲気を説明したメールが来て、それに見合った自前の衣装を着てくること、第3候補までの衣装を持ってくること、ヘアメイクは現場でするので化粧は最小限におさえてくることなどの指示がありました。

ヘアメイク

葬式といえば喪服かと思われそうですが、オーストラリアの葬儀はカジュアルな感じが多く、故人を象徴するような色や柄物を着る傾向があります。

今回の故人は『自然を愛する明るく情熱的な人で地元の人から愛されていた』という設定で、メールの方には『かしこまり過ぎず崩し過ぎず、ただし蛍光色は禁止』という指定がありました。私が着て行ったのは、沖縄伝統シャツのかりゆしのドレスバージョンであるムームー。

ムームー
<実際に着たムームー>

スタイリストからのチェックを受けて合格をもらい、ヘアメイクをしてもらいました。私以外に約30人のエキストラがいましたが、女性はキレイめカジュアルなワンピースやパンツ姿、男性はジーンズとシャツなどでした。

撮影にかかる時間

シーンとしては2~3分でしたが、拘束時間は6時間30分もありました!

なににそんなに時間がかかったのかというと、前の撮影が押しており撮影現場に移動するまでに2時間半ほど待機、バスでの移動に30分、現場に着いてからも待機30分、撮影に2時間半、帰りのバス移動に30分待機と移動時間が長かったにしても、数分のシーンを撮影するのに現場で2時間半というのには驚きました。

映画

これだけ時間がかかったのには、NGでなくても何度も何度も同じシーンを繰り返し撮影したからです。まずはクレーンを使ってすごく遠くからの撮影、それを解体して組み立て直して少し遠くから撮影、そして反射板やライトを使って近場でアングルを変えながらの撮影という感じで、同じシーンを何度も何度も撮り直しました。

エキストラの扱われ方

私としてこのエキストラ出演は体験として貴重なものだったのでボランティアでも十分だと思っていましたが、一出演者として丁寧に扱われました。

撮影前の待機時間にはお茶菓子が出され、スタッフもフレンドリーに話しかけてくれました。撮影の合間には日傘をさしてくれたり、寒くないかとブランケットを貸してくれたり、ヘアメイクを頻繁に直してくれたりと俳優気分を味わえました。

太陽

そして驚いたことに出演料は時給で支払われ、その時給も4,000円超えと高額なものでした!もちろん移動・待機時間も支払われるので、ボランティアで参加したつもりが半日で2万5千円ほどの臨時収入となりました。

一般公開前に町で先行公開イベント

町での撮影は2020年12月から始まっており、それから約2年の編集期間を経て2023年元旦に一般公開されました。コロナ禍の影響もあって、予定より完成が遅れたようです。

一般公開前の2022年11月には町で先行公開イベントが行われました。町で唯一のホテルに仮設映画館を設置し、普段から一般開放しているレストランに加えて臨時のフードバンがやって来るなどして、町がお祭状態になりました。

夜

映画館は広場の一角に設置され、レッドカーペットも敷かれました。

夜

映画館の中には椅子が置かれて完全予約制。平日だったので夜開催でしたが、子どもも楽しめるようにと17時からと20時からの2部構成でした。

映画

映画が始まる前には監督からの挨拶で『知っている風景やもの、顔が出てきたら声を上げて盛り上がるように』と言われましたが、最初から最後まで大盛り上がりでした。

それもそのはず、映画のシーンの90%はこの町だからです。美しい海も山も、慣れ親しんだ建物も顔ぶれもたくさん出てきました。

海

そして最も期待していた葬儀シーンですが、残念ながら私は映っていませんでした。景色をメインとしたアングルがメインで、ほとんどのエキストラははっきりと映っておらず、シーン自体も30秒ほどにカットされていました。

この30秒のために6時間半を費やし、あの場にいたエキストラ30人と俳優の出演料、数十人といた現場スタッフに何百万円というお金を使っていることを考えると、映画界のすごさを感じました。

まとめ

映画自体はものすごくドラマチックな展開があるわけではなく淡々と進んでいきますが、環境保護というメッセージ性のあるものです。そして、我が町の景色が本当に美しいです。

監督の挨拶では日本でも公開されるということでしたが、今のところ日本公開の正確な情報はつかめていません。

ただ、日本でも児童書として翻訳されており、2008年には読書感想文コンクールの高学年の課題図書に選ばれています。小学校高学年の姪にプレゼントしてとてもよかったと聞いているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

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