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古墳ってどうやって楽しむの? 百舌鳥古墳群レポート
大阪府第二の都市である堺市。そんな堺市には、2019年に世界遺産に登録された「百舌鳥古墳群(もずこふんぐん)」があります。日本の歴史とロマンを感じられる百舌鳥古墳群へ行ってみませんか?なぜ世界遺産に登録されたのか、現地ではどのような楽しみ方ができるのか。背景を知っておけば、百舌鳥古墳群を10倍楽しめるようになります。本記事では、実際に百舌鳥古墳群へ行き、現地取材した様子をお届けします!
目次
1. 古墳とは何かをおさらいしよう
<仁徳天皇陵古墳の近くにある古墳モデル>
皆さんの家の近くに、古墳はありますか?古墳は意外にも私たちの身近にあり、東北から九州までにその数なんと約16万基。コンビニの3倍もの数を誇っています。そもそも古墳とは、当時の階層の高い人によってつくられたお墓で、土を高く盛り上げてつくるのが特徴です。3世紀後半から約400年にわたってつくられました。
古墳の形状はさまざまで、「前方後円墳」「帆立貝形墳」「円墳」「方墳」などがあります。葬られた人の権力の大きさによって決められたと考えられているそうですよ。
2. 百舌鳥古墳群が世界遺産に認定された理由
<百舌鳥古墳群ビジターセンター>
百舌鳥古墳群は、2019年7月6日にアゼルバイジャンにて開催された第43回世界遺産委員会にて、世界遺産に登録されました。羽曳野市・藤井寺市にある「古市古墳群」とあわせ、「百舌鳥・古市古墳群」としての登録となります。
そもそも、世界遺産に登録される基準をご存知でしょうか?さまざまな観点はありますが、その中でも大きな基準になっているのは、「人類にとって唯一無二の価値を持っている」ということです。百舌鳥古墳群が評価された理由は、世界でも例を見ない規模の大きさに加え、日本古代の文化を代表する貴重な資料だから。当時の社会構造を示し、古代国家の成立の様子がうかがえます。
3. まず百舌鳥古墳群ビジターセンターへ
<百舌鳥古墳群ビジターセンター外観>
まずは、百舌鳥古墳群観光の起点となるビジターセンターを訪れました。ビジターセンターでは古墳群について学ぶことができるので、最初に訪れておきたい場所です。
ビジターセンターに入ると、開放的な空間の中にいくつもの展示品が見えます。古墳の歴史から古墳の役割、百舌鳥古墳群の基本的な概要までを幅広く学べるので、勉強になることがたくさんありました。
<観光マップ>
ビジターセンター内にある大仙公園観光案内所には、百舌鳥古墳群周辺のわかりやすい観光マップも用意されています。古墳だけを訪れて満足する方も多いそうですが、実は他にも観光スポットがたくさんあるのです。
<観光スポット案内>
歩きで回ると時間がかかるため、複数の観光スポットを訪れる場合は、車で訪れることをおすすめします。もしくは、ビジターセンター内の観光案内所でレンタサイクルをして周るのも良いでしょう。
<お土産コーナー>
ビジターセンターには、お土産屋さんも併設しています。堺名物の刃物からお菓子、雑貨までたくさんのお土産があり、家族や友人に買っていきたくなること間違いありません!
<百舌鳥古墳群ビジターセンターのシアター>
ビジターセンターでぜひ見て欲しいのが、超高精細な8K空撮映像を床や壁面に投影するシアターです。百舌鳥古墳群を上から眺めているような感覚を味わえます。また、古墳だけじゃなく堺の歴史や文化も紹介されているので、堺をもっと楽しめるようになりますよ。
百舌鳥古墳群ビジターセンターへのアクセス
- JR阪和線「百舌鳥駅」から西へ徒歩5分
- ビジターセンターから仁徳天皇陵古墳まで徒歩2分
- ビジターセンターから履中天皇陵古墳まで徒歩17分
4. 職員さんに古墳の楽しみ方を聞いてみた
今回の取材では、堺市役所世界遺産課の泉谷さんにお話を伺いました。
ー ずばり、百舌鳥古墳群はどのように楽しむのが良いでしょうか?
泉谷さん「百舌鳥古墳群に訪れても、仁徳天皇陵古墳しか訪れない方も多いです。ですが、百舌鳥エリアには東西南北4kmの範囲に多数の古墳が集まっているんです。せっかく百舌鳥古墳群に来たなら、ぜひ仁徳天皇陵古墳以外の古墳も訪れてみて欲しいですね。
古墳によって、形がきれいに残っていたり、墳丘の形がわかりやすかったりと個性があります。何ヵ所かの古墳を巡って、その違いを楽しんでみてください。個人的には、履中天皇陵古墳やニサンザイ古墳、いたすけ古墳にもぜひ訪れて欲しいです。
5. 堺市民にとっての古墳とは?
<仁徳天皇陵古墳の近くにあるモデル古墳>
泉谷さんによると、堺市民にとって百舌鳥古墳群は思い入れが強く、馴染み深い存在として認識されているとのことでした。世界遺産登録時、評価された理由の一つには「保存状態の良さ」も挙げられていたそうです。堺市民にとって、古墳はあって当たり前のもの。「これからもずっと守り続けていきたい」という思いが強いからこそ、古代から市民によって守られてきました。また、堺市民の多くは、仁徳天皇陵古墳のことを「仁徳さん」と呼んでいるほど、非常に愛着のある存在だそうですよ。
6. 百舌鳥古墳群にはどんな人が訪れている?
泉谷さんに、百舌鳥古墳群にはどんな人が訪れているのか聞いたところ、観光客層には偏りがあるとのことでした。百舌鳥古墳群に訪れるのは、歴史好きな方や団体ツアーの観光客。年齢層は高めだそうです。
そこで堺市では、今後若い世代や欧米からの観光客など、幅広い層に楽しんでもらえるようにさまざまな企画を用意しているとのこと。百舌鳥古墳群を巡ってカードを集める「もず・ふるカード」、すごろくで遊びながら、楽しく古墳について学べるマップ、古墳に登るイベントなど、歴史に詳しくなくても楽しめる企画がどんどん増えてきています。
7. いざ、百舌鳥古墳群へ!
それでは、ついに百舌鳥古墳群の観光へ出かけます。今回私が訪れたのは、百舌鳥古墳群の代表的存在の仁徳天皇陵古墳、その次に規模の大きい履中天皇陵古墳、泉谷さんおすすめのいたすけ古墳です。現地の様子をお伝えします!
仁徳天皇陵古墳
<仁徳天皇陵古墳の周辺>
まずは、通称"仁徳さん"と呼ばれている仁徳天皇陵古墳へ。古墳の周辺は散策できるよう整備されており、気持ちの良いウォーキングも楽しめます。
<仁徳天皇陵古墳の周辺>
古墳の周辺はこのような感じです。この日は晴れていて気温もちょうど良く、古墳周辺の散歩でリフレッシュできました。
<仁徳天皇陵拝所>
仁徳天皇陵古墳にある仁徳天皇陵拝所は、やはりマストスポットです。神聖な感じが伝わってきて、同行者とのおしゃべりも自然と止まります。ここから先は進入禁止ですので、ご注意ください。拝所の周辺にはボランティアスタッフの方が何名かいたので、気になることがあれば質問してみても良いでしょう。
大仙公園内に古墳がいっぱい
<大仙公園>
隣の大仙公園には、小さめの古墳が多数あります。歩いているとすぐ古墳に出会うのは、まさに百舌鳥古墳群ならではだと感じました。
<大仙公園内の古墳>
このように、古墳がいくつもあります。
<大仙公園内の古墳>
こちらの土が盛り上がっているのは、大仙公園内にある狐山古墳。
そしてこちらは七観音古墳。古墳ってこんなに身近な存在だったのかと驚かされました。
履中天皇陵古墳
<履中天皇陵古墳>
次に向かうのは、国内3位の大きさを誇る履中天皇陵古墳。もちろん国内1位は、仁徳天皇陵古墳です。これだけ大きな古墳がすぐ近くにあるとは...。以前は10基ほどの古墳を従えていたそうです。
<履中天皇陵古墳>
ここに偉大な人が眠っていたのかと思うと、ロマンを感じますね。やはり、歴史的な背景を学ぶともっと古墳を楽しめます。
いたすけ古墳
<いたすけ古墳>
そしてもう一つ、いたすけ古墳へも訪れました。ほのぼのとした雰囲気の公園が隣接してあり、のどかな空気が流れているような場所。
<いたすけ古墳>
いたすけ古墳は、かつて土取り工事によって破壊の危機に瀕したそうですが、市民運動で保存することが決まり、これまで守られてきました。その話にも納得できるほど、身近な存在であることが伝わってきます。
8. どうしても古墳を上から見たい!
<堺市役所の21階展望ロビー>
古墳は大きく、なかなか全貌が見えないものです。「古墳を上から見てみたい!」そう思った私は、古墳を上から眺めることができると噂の堺市役所へ向かいました。堺市役所の21階には展望ロビーがあり、堺を一望することができるんです!さっそく古墳を見に行ってみましょう。
<堺市役所の21階展望ロビー>
写真にあるように、大きな古墳が見えました。現地だと大きすぎてよく見えないので、上からの方が"古墳っぽさ"を感じられます。都会の真ん中に巨大な古墳があるなんて、不思議ですよね。横にある高層ビルとの対比が面白いです。
<堺市役所の21階展望ロビー>
違う角度からも一枚。展望ロビーからはいくつもの古墳が見えますが、一際目立つのはやはり「仁徳天皇陵古墳」と「履中天皇陵古墳」です。おおよその形がわかり、「さっきまでいたのはあの辺かな?」と考えて楽しめました。展望ロビーは9:00〜19:00まで営業しているので、昼間と夜の景色を見比べるのも良いかもしれません。サンセット時には、夕日と古墳のコラボも見られそうです。
市役所展望ロビーへのアクセス
- 南海高野線「堺東駅」下車 徒歩約5分
9. どうしても古墳を「真上」から見たい!
<百舌鳥古墳群ビジターセンターのシアター>
「どうしても古墳を真上から見たい...!」そんな方もいるのではないでしょうか。市役所の展望ロビーでも上から見ることはできますが、もっと真上からみたい方向けに「ヘリコプター遊覧」という選択肢があることもお伝えします。さすがに今回の取材では、予算がなく諦めましたが...(笑)
複数の企業によって、ヘリコプター遊覧のツアーが出ています。乗車時間や料金は各プランによって異なりますが、おおよそ10〜20分程度で5万円前後。古墳の周辺をヘリコプターで飛び、その姿を眺めることができます。予算があって、どうしても古墳を真上からみたい方は、遊覧ツアーを検討してみても良いでしょう。
10. 百舌鳥古墳群周辺でおすすめの観光スポット
百舌鳥古墳群周辺にあるのは、古墳だけではありません!
ここでは、百舌鳥古墳群を訪れた際にぜひ行っておきたい観光スポットをまとめます。
こふん前cafe IROHA
<こふん前cafe IROHA>
百舌鳥古墳群ビジターセンターのすぐ目の前にあるのは、こふん前cafe IROHA。古墳を見て周っていると、お腹が空いてきますよね。そんなときに行きたいのがこちらのカフェです。
<こふん前cafe IROHA>
おしゃれで開放的な店内にて、ハンバーガーやうどん、カレーなどの美味しい料理を食べられます。今回私が注文したのは、「こふんHerbチキンバーガー」。バンズにはかわいらしい古墳マークが入っていて、見た目から楽しめます。そして見た目だけじゃなく、ボリューム満点で味も抜群に美味しかったです。カフェメニューも充実しているので、古墳観光で歩き疲れたら休憩がてら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。晴れた日には、テラス席で休憩するのも良いですね。
アクセス
- JR阪和線百舌鳥駅西口 徒歩4分
堺市博物館
<堺市博物館>
大仙公園内には、堺市博物館があります。堺市博物館には、堺市の歴史や文化、芸術などが保存されています。子どもが遊べるスペースや体験型の展示もあり、家族皆で楽しめるスポット。
<堺市博物館>
博物館の中にある百舌鳥古墳群シアターは、なんと無料です。百舌鳥古墳群の全貌や歴史などを学べるので、古墳観光をより楽しめるようになりますよ。大型スクリーンに映し出される大迫力の百舌鳥古墳群を楽しんでみてはいかがでしょうか。
アクセス
- JR阪和線百舌鳥駅西口 徒歩7分
堺市茶室 「伸庵」「黄梅庵」
<堺市茶室「伸庵」「黄梅庵」>
堺市博物館のすぐ横にあるのは、国の登録有形文化財に指定されている堺市茶室「伸庵」と「黄梅庵」。貴重な二つの茶室を結ぶように、美しく整備された日本庭園が広がっています。
- 伸庵:「数奇屋普請の名匠」と言われた仰木魯堂が昭和4年に建てた茶室
- 黄梅庵:「茶道の四天王」と言われた故松永安左ヱ門が改装した茶室
伸庵では、茶室で実際にお茶をいただくこともできます。古墳観光で疲れたら休憩をして、美味しいお茶を飲むのも良いですよね。美しい日本庭園を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?
アクセス
- JR阪和線百舌鳥駅西口 徒歩7分
百舌鳥八幡宮
6世紀ごろに創建されたと言われる百舌鳥八幡宮。せっかく古墳群を巡るなら、日本の伝統的なお寺に行くのもおすすめです。境内には樹齢800年の巨大なクスノキが茂り、厳かな雰囲気を醸し出しています。
毎年秋に開催される月見祭りは、日本各地から参拝客が訪れるほどの人気行事。月見祭りの見どころといえば、「ふとん太鼓奉納行事」です。巨大なふとん太鼓を80人で担ぎ、「ベーラベーラベラショッショイ」というかけ声とともに練り歩く姿は、まさに圧巻。かなりの人気行事ですので、月見祭りに行く際には時間に余裕を持っておきましょう。
アクセス
- JR阪和線百舌鳥駅 徒歩10分、バス停「百舌鳥八幡前」徒歩5分
さかい利晶の杜
さかい利晶の杜は、堺にゆかりのある偉人「千利休」と「与謝野晶子」をテーマにした文化複合施設。二人に関する展示や、時期によっては特別展示が行われています。
千利休の茶室を再現した「さかい待庵」では、室内まで見学できたり、「茶の湯体験施設」では、お茶を立てる体験ができたりとさまざまな楽しみ方ができます。現代的な建物で、館内にはスターバックスも入っており、堺の今と昔を感じられる場所と言えるでしょう。
アクセス
- 阪堺線 宿院駅より徒歩1分、南海高野線 堺東駅よりバスで約6分
南宗寺
南宗寺は、かつて堺を支配していた戦国武将・三好長慶が建立したお寺。実はこちら、徳川家康の墓があることでも知られているんです!徳川家康の死因は諸説ありますが、南宗寺では「後藤又兵衛の刃があたり、徳川家康は死去した」と語り継がれています。そしてこの地で倒れた徳川家康を祀るため、墓が建てられたそうです。
本当の死因は未だわからず...。南宗寺は、日本古代から伝わるミステリーを感じられるスポットと言えます。境内には静かな空気が流れ、まるで俗世から離れたような感覚を味わえるでしょう。
アクセス
- 阪堺電軌阪堺線「御陵前駅」から徒歩5分
11. 百舌鳥古墳群に訪れる際の注意点
<百舌鳥古墳群ビジターセンター>
百舌鳥古墳群を訪れる際に注意したいのは、古墳や周辺への配慮。世界遺産登録後、観光地としても盛り上がってきた百舌鳥古墳群ですが、本来は人のお墓です。迷惑になるほど騒いだり、お墓に無礼な態度をとったりするのは控えましょう。
また、履中天皇陵古墳や仁徳天皇陵古墳の敷地は、宮内庁の人しか入ることができません。もし敷地内に入ったら、法律により罰せられる可能性があります。故人や被葬者へ配慮の気持ちを持った上で、古墳群の観光を楽しんでください。
12. 百舌鳥古墳群へのアクセス方法
<仁徳天皇陵古墳周辺にて>
百舌鳥古墳群へは、電車やバス、車で行くことができます。主なアクセスは以下の通りです。
電車で行く場合
JR阪和線百舌鳥駅で下車後、西へ徒歩10分
百舌鳥駅までのアクセス
- 新大阪駅からJR快速、普通電車で約36分
- 関西国際空港からJR快速、普通電車で約47分
- 難波駅から南海高野線、JR普通電車で約16分
バスで行く場合
- 南海高野線堺東駅から南海バス田園線に乗車し、「堺市博物館前」で下車後徒歩2分
車で行く場合
- 阪神高速堺線堺出口から約10分
- 阪神高速湾岸線大浜出口から約10分
今回は、百舌鳥古墳群とその周辺を訪れて取材してきた内容をお届けしました!世界遺産登録され、どんどん注目されてきている百舌鳥古墳群。観光地としても、さまざまな取り組みにより盛り上がっています。歴史好きはもちろん、家族皆で楽しめる観光地へと変化しつつあります。大阪観光の際には、選択肢の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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- フリーランスのWebライター&ライター講師として活動しています。海外渡航国数40カ国以上・ピースボート乗船・日本二周経験あり。特に東南アジアが好きです。