【オーストリア】新しいモーツァルト体験アトラクション「モーツァルト伝説」

MYTHOS MOZART

数多くの音楽家たちに愛された音楽の町ウィーン。その中でも一番に名前が挙がる音楽家がモーツァルトでしょう。

モーツァルトは、25歳で故郷ザルツブルクを出てから亡くなる35歳までの10年間をウィーンで過ごし、数々のオペラや有名作品を作曲しました。ゆかりの地はウィーンの町のいたる所にあり、最も長く暮らした家は現在「モーツァルトハウス」として博物館になっています。

今回ご紹介するのは、モーツァルトが最期を迎えた家にできた最新のスポット「MYTHOS MOZART(モーツァルト伝説)」です。9月16日にオープンしたばかりのこのモーツァルト体験アトラクションに、早速行ってきました。

目次

モーツァルト最期の家は有名デパート?

ウィーンの目抜き通りケルントナー通り。ウィーンの中心であるシュテファン大聖堂と、国立オペラ座を結ぶ人通りの多いショッピングストリートのちょうど真ん中あたりに、シュテッフル(Steffl)というデパートがあります。実はこの建物は裏の小路までつながっていて、ここがモーツァルトが最期を迎えた住居でした。

史跡パネル
<モーツァルト最期の家を示す史跡パネル>

モーツァルトは1790年からここに住んで、オペラ『魔笛』や「レクイエム」などを作曲し、1791年12月5日に亡くなっています。

19世紀半ばにこの建物は建て替えられ、「モーツァルトホーフ」と呼ばれる建物が建ちました。モーツァルトだけでなくベートーヴェンやハイドン等の音楽家の胸像で飾られた豪華な建物でしたが、現在はデパートの一部になっています。

デパートの地下部分には数年前までアウトレットセンターがありましたが、オーナーの希望もあり、モーツァルトをテーマにした文化施設が作られることになりました。

ケルントナー通り
<ケルントナー通りとデパート「シュテッフル」>

こうして、モーツァルト最期の家であり、目抜き通りど真ん中のデパートの地下に作られた「モーツァルト伝説」、どのような体験ができるのでしょうか?

「モーツァルト伝説」を体験

デパートの階段で地下に降りると、まずはモーツァルトの胸像が出迎えてくれます。これは上記の「モーツァルトホーフ」にあったもので、しばらくこのデパートの最上階に飾られていましたが、晴れてこの場所に移動しています。

モーツァルト
<モーツァルト胸像>

入って右側にはショップとチケットオフィスがあり、正面にはモーツァルト当時のウィーンの模型や最期の家のファサードなどがわかりやすく展示されています。

映像
<モーツァルト時代の人々の映像がお出迎え>

チケットに記載された時間になると、QRコードをゲートにかざして入場します。ここからはガイドも言葉による説明もない、直感的な「モーツァルト体験」が始まります。

デジタル絵画エリア
<デジタル絵画エリア>

最初の空間は、デジタル絵画の中に飛び込めるウォームアップエリアになっています。備え付けのカメラで撮影すると、モーツァルト時代のような衣装に身を包んだ自分自身の姿が絵画の中に現れます。この絵画はあとでダウンロードすることも可能です。

しばらく待っていると扉が開き、第1の部屋に誘導されます。「モーツァルト伝説」には5つの部屋があり、それぞれ「モーツァルトのレクイエム」「モーツァルトのウィーン」「モーツァルトの世界音楽」「天才モーツァルト」「永遠のモーツァルト」と題し、インタラクティブな音楽や映像体験を楽しむことができます。

モーツァルトのレクイエム
<「モーツァルトのレクイエム」の部屋>

「モーツァルトのレクイエム」の部屋では、まさにこの地でモーツァルトが永眠したことを踏まえ、1,500本のろうそくとモーツァルトの晩年のイメージ映像が、レクイエムと共に流れます。モーツァルトの部屋の家具や墓地までの道のりなど、当時の生活が映像で再現され、まさにこの場所で200年以上前に起きた「モーツァルトの死」について考えさせられます。

2つ目の「モーツァルトのウィーン」の部屋では、アニメーション化されたモーツァルト時代のウィーンの様子が、壁前面に映し出されます。現在のウィーンとはまた異なる活気を持った18世紀の街並み。田園では水車が回り、ドナウ川は湾曲し、町では物売りの声が響き、馬上の人物がケンカしています。見慣れたウィーンの街が時代をさかのぼり、生活感で満ち溢れています。

さらに映像の視点は気球となり、ウィーンの上空に浮き上がります。360度気球の視点になるので、本当にウィーンの上空を飛んでいるような気分になります。モーツァルトの時代に気球?という疑問が浮かぶかもしれませんが、実はモーツァルトは「プラーター公園に気球飛行を見に行った」と手紙に書き残していることもあり、時代考証もしっかりしてあります。

気球から見るシュテファン大聖堂
<気球から見るシュテファン大聖堂>

空が薄暗くなり、気球が地上に戻ると、夜のウィーンに降り立ちます。窓明かりの中では、作曲するモーツァルトや、『魔笛』の「夜の女王」を練習するオペラ歌手の姿が見られます。

ここで場面は変わり『魔笛』の名場面映像に。まるで当時の劇場にいるかのように、舞台セットのようなドラゴンや様々な動物がカラフルに登場します。

最後はウィーンの観劇後の夜更けに戻ってきます。まるでモーツァルトと共に18世紀のウィーンの町を散歩し、オペラ観劇をしたような気分になりました。

音楽と映像のインスタレーション

第3の部屋は、世界各国の楽器を使って「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」をバーチャル演奏する趣向です。タッチパネルを用いて楽器を選び、様々な音色を楽しみます。

第4の部屋「天才モーツァルト」は、作曲中のモーツァルトの脳内にいるという設定で、道行く人の声や馬車の足音、生活音を聞きながら、まさにこの場所で『魔笛』の序曲を作曲した過程を、視覚と聴覚で体験できます。

第5の部屋「永遠のモーツァルト」では、グラフィックアーティストが作り出した映像の中を歩き回りながら『魔笛』のアレンジ曲を聴く、映像と音楽のインスタレーションになっています。

この5つ目の部屋が終わると、再びショップに戻り、「モーツアルト伝説」のツアーは完了です。所要時間はほぼ60分。展示室によって長く感じるものもあれば、もっと見たかった!感じたかった!という部屋もあり、視覚と聴覚を最大限に使ってモーツァルトを体で体験したという印象が残ります。

第3と第5の部屋は今後改良を加え、アトラクション要素も増えるようですので、今後の発展が楽しみです。

ショップ
<ショップ>

まとめ

ウィーンに新しくオープンした体験型アトラクション「モーツァルト伝説」。博物館とはまた違う観点からモーツァルトを「体験」できる施設です。

言葉による説明がほぼないので、オーディオガイドや解説文に頼らず、音楽と映像だけで楽しむことができるというコンセプトも興味深く、新しい形の文化体験施設だと感じました。

ケルントナー通りのど真ん中という好立地ということもありますし、モーツァルトの歴史と現代的な音楽や映像のインスタレーションのコラボが気になる方は、ぜひ次回のウィーン訪問時に訪れてみてくださいね。

※MYTHOS MOZARTは直訳すると「神話モーツァルト」になりますが、ここではウィーン市観光局の和訳を受けて「モーツァルト伝説」としています。

MYTHOS MOZART

  • 住所:Kärntner Str. 19, 1010 Wien, オーストリア
  • TEL:+43-1-93056-800
  • 営業時間:月~土曜 10:00~20:00、日曜 10:00~18:00
  • 料金:大人 € 24、学生・シニア € 18、6~13歳 € 9、6歳以下 無料
  • 公式サイト:MYTHOS MOZART

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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