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釧路と根室の真ん中にある牡蠣の町、厚岸にショートトリップ。公共交通でも楽しめる見どころを紹介します。
北海道道東の根室から釧路の途中にあるのが厚岸(あっけし)です。釧路や根室に観光に行ったとしても、ついつい見逃しがちな厚岸の町は立ち寄らないともったいないほど充実したところ。
今回は公共交通を使って厚岸に訪れました。車では楽しめない厚岸の貴重な体験をしてみました。
目次
- 根室から厚岸に向かう車窓から見える別寒辺牛湿原と厚岸までのアクセス
- 厚岸の魅力1:プラネタリウムもある海事記念館
- 厚岸の魅力2:厚岸大橋を渡ってみると海鳥がすぐ目の前に
- 厚岸の魅力3:完成記念碑から見える厚岸大橋の全景
- 厚岸の魅力4:道の駅 厚岸グルメパークからの展望
- 厚岸の魅力5:牡蠣のガチャと水族館プティ
- 厚岸のグルメ:オイスターバール ピトレスク
- 厚岸のショッピング:厚岸漁業協同組合直売店 エーウロコ
- 厚岸は宿泊してじっくり堪能したい町
根室から厚岸に向かう車窓から見える別寒辺牛湿原と厚岸までのアクセス
今回厚岸には根室から列車を利用しました。花咲線との愛称のある根室本線のこの区間は、1日6本しか列車が走らない超ローカル線。午前8時24分根室発の列車に乗り込みました。
列車は途中駅に停車しながら順調に厚岸に向かって行きます。
今回乗った列車では、見晴らしの良いところに差し掛かると、その旨のアナウンスがあり、意図的に速度を落とす区間があります。花咲線は多くの人が観光客で占められている路線だからこそのサービス。
厚岸駅近くでも速度を落とす区間があります。ちょうど厚岸湖に入る手前、チライカリベツ川と別寒辺牛川(べかんべうしがわ)が合流したあたりは、別寒辺牛湿原と呼ばれる場所。1993(平成5)年にラムサール条約に登録された湿原として近年注目されているスポットです。
毛細血管のように自由に川が流れるさまは、広大な北海道らしい風景、速度を落としてくれるのでゆったりと風景が眺められます。
湿原は、主にヨシ、スゲの広がる低層湿原で構成されておりますが、その上流にはミズゴケ類が繁茂しヒメシャクナゲやツルコケモモなどの咲く高層湿原があるそうです。
また湿原ではタンチョウが営巣する場所としても注目されました。やがて湿原の緑の風景が消えると、大きな厚岸湖が広がっています。厚岸湖までくれば厚岸駅はもうすぐです。
こうして10時ちょうどに厚岸駅に到着しました。厚岸へのアクセスはいったん釧路まででてからこの花咲線に乗る方法のほか、釧路駅から1日4便バスが出ています。バスは厚岸駅を始め町中を通り、厚岸大橋を渡って最終的には南側にある子野日公園まで行きます。
厚岸の魅力1:プラネタリウムもある海事記念館
厚岸駅で最初に向かったのは厚岸町海事記念館です。駅から厚岸大橋に向かう途中にあり、無料で利用できます。立派な建物の中に立ち寄ってみました。
海事記念館は厚岸町に関する資料館ですが、海で栄えた町とあって海に関する資料が豊富。入口から入ったすぐのところには船の仕組みを紹介するコーナーがあり、漁船が展示してあります。また漁船の操縦室の中に入ると、その様子がうかがえます。
1階の奥に行くと豊富な展示物に驚かされます。主に量に関する資料が多く、ニシン、サケ、マス、サンマ、牡蠣、昆布、アサリ漁についての資料が豊富です。それに加えてアイヌの歴史や捕鯨、また姉妹都市提携を結んでいるオーストラリア・クラレンス市のコーナーもありました。
2階にも展示室がありますが、その途中の階段の手前には1891(明治24年)に、厚岸湖の牡蠣島ではじめて発見され厚岸の名前が付けられた「アッケシソウ」と、江戸時代末期に東北の南部(盛岡)の両氏が伝えた日本の神楽とアイヌの踊りが融合して出来た厚岸かぐらの展示物があり、こちらも見逃せません。
2階の展示室には主に科学体験のコーナーがあります。そこにはレトロなゲームがあり頭の体操に最適、また化石や遺跡の展示物もあります。
もうひとつ、国内の友好都市である山形県村山市のコーナーがありました。現在の村山市出身の最上徳内が厚岸を拠点に開発したいきさつ、アイヌの人たちへの教化を目的とした神明宮(厚岸神社)のこと、あるいは現在の村山氏との友好の歴史が紹介されています。
さらにギャラリー「知の交差点厚岸」では、最上徳内やアイヌの有力者など歴史上の人物の功績が詳しく紹介されています。
海事記念館には驚いたことにプラネタリウムがあります。このときは時間が合わずプラネタリウムは見られませんでしたが、多い時には1日4回、20分~35分のプログラムでの上映会が行われております。
厚岸の魅力2:厚岸大橋を渡ってみると海鳥がすぐ目の前に
海事記念館からさらに先に進むと厚岸大橋があります。1972(昭和47)年にそれまで運航していた厚岸フェリーに代わって、北海道初の海上橋として開通しました。
橋の全長は457mの連続トラス橋で、海上からの高さは約20m、歩道があるので歩いて対岸に行けます。
厚岸大橋は厚岸湾と厚岸湖の間に架けられました。そのため湾と湖双方の雰囲気が橋の上から味わえます。厚岸湾は太平洋から北方向に11kmに広がる湾で、サンマやニシン漁が盛んな地域、戦時中までは北海道で唯一旧日本海軍の油槽所(ゆそうじょ)がありました。
また厚岸湖は、32.31平方キロメートルの広さを持つ汽水湖で、カキの養殖が盛んなところ。湾内にはカキの殻が堆積してできた牡蠣島があります。橋の上からは鳥居と小さな社が見えます。これは牡蠣島弁天神社で、財産と水の神様。海難事故と大漁を祈願する、厚岸湖の守護神です。社の中には弁財天座像が鎮座しています。
厚岸大橋には海鳥が多く止まっています。橋に止まっているのはオオセグロカモメ(大背黒鴎)と呼ばれる種類で、日本のほか朝鮮半島や中国東北部、ロシア南東部に生息しています。驚いたことに近づいても飛んでいくことが無く、至近距離で撮影できました。
海鳥の方が理解しているのか、人間から危害が加えられないと思っているようで、全く動じません。さすがに1m以内まで近づくと、ようやく重い腰を上げるように、橋から厚岸湖の上空を気持ち良さそうに飛び立っていきました。
厚岸の魅力3:完成記念碑から見える厚岸大橋の全景
厚岸大橋を渡った先には、愛冠岬や大黒島・小島展望台、涙岬展望台、藻散布トーチカなど東の浜中町にかけて名所が点在しています。しかし公共交通で来ている以上そのあたりまではいけません。
仕方なく橋のたもとの湾岸地域を眺めました。波止場では釣りを楽しんでいる人の姿を何組も見ます。
波止場には大きな石碑がありました。厚岸大橋完成記念碑です。碑文を読むと次のように書いてありました。
「厚岸を愛したすべての人の悲願は達せられた 頭を垂れて先人の労苦を偲ぼう 感謝と希望とが和の連帯となり 乾季は衛に溢れ海原に展ごり山野に満ちている 技術の粋を尽した豪華の姿は郷土の焦点 翠湖に映ゆる真紅は愛と平和を希求する真実の色 この感激よ碑と共に永遠に風化するなかれ」
ちょうど碑文のある所から、厚岸大橋の全景が見られました。457mの赤いトラス橋の様子は圧巻。碑文に秘められた思いと交錯しました。
厚岸の魅力4:道の駅 厚岸グルメパークからの展望
厚岸大橋を再度わたって北側に戻り向かった先は道の駅厚岸グルメパークです。1994(平成6)年に完成した道の駅の愛称はイタリア語で甲斐の形をした食べ物を意味する「コンキリエ」。牡蠣の町厚岸らしいネーミングで、丘の上に立つ施設の外観も実際に牡蠣をイメージしたものです。
丘を上り、建物の前まで上がってきました。緑の芝生に覆われた展望台からは厚岸の街並みが見渡せます。町の先に見えるのは厚岸湖です。また芝生内はドッグランにもなっています。
建物の上階(3~4階)は、展望室となっており無料で備え付けの望遠鏡で街並みが見渡せます。厚岸大橋や牡蠣島弁天神社も一望できます。
また画像から見えている厚岸湾の対岸にある長い建物は、厚岸漁業協同組合地方卸売市場です。厚岸漁港で水揚げされた30数種類の魚介類が、年間34,000トン程取引され全国に向かいます。
厚岸の魅力5:牡蠣のガチャと水族館プティ
道の駅 厚岸グルメパークは、名前の通りグルメが中心の道の駅、レストラン、オイスターバール、オイスターカフェ、炭焼きなど主に牡蠣が食べられるお店が目白押しです。
その実力は北海道スタンプラリー完走者が選ぶ道の駅ランキング2020年で、五部門のうち3部門が第1位の3冠を達成しました。そのほか2位がひとつと8位がひとつと、道の駅としては非常にハイレベルであることがうかがえます。
しかし道の駅は、グルメだけではありません。ショッピングコーナーも充実しています。さらにこちらのガチャコーナーも忘れてはいけません。厚岸のもうひとつの名物ウイスキーに関するガチャです。現金ではなく各種Payを使って遊べるようになっています。
もうひとつ是非行っておきたいのは、道の駅内にある無料の水族館プティです。ここには厚岸湖や厚岸湾に生息する牡蠣などの貝類をはじめ、淡水魚や海水魚が20種類以上展示しています。
具体的には生体展示としてアメマスやハナサキガニやカレイ姿があり、また標本展示としてカキの殻やが展示していました。
厚岸のグルメ:オイスターバール ピトレスク
道の駅にあるいくつものグルメなお店で最も気になったのが、オイスターバールピトレスクです。ここは厚岸の牡蠣と厚岸で蒸留しているウイスキーを合わせることができます。
それぞれ種類の違う牡蠣3種類(マルえもん、カキえもん、金のカキえもん)と、ちびちび味わう厚岸のウイスキーとの相性は絶妙。車ではできない公共交通を使ってきたからこその贅沢が味わえました。
生牡蠣以外にも牡蠣を楽しめるメニューが目白押し、こちらの焼き牡蠣3種盛はジェノバ風、グラタン風、田楽風と3種類の味がきっちりと味わえます。
厚岸蒸留所のウイスキーは非常に入手困難といわれ、道の駅はもちろん厚岸にある蒸留所に行っても手に入りません。そのウイスキーが道の駅のこのオイスターバールピトレスクなら味わえます。牡蠣と言いウイスキーと言い決してお手軽な料金ではありませんが、厚岸に来たからこそ味わえる至高の贅沢を体験してはいかがでしょうか
オイスターバール ピトレスク
- 住所:北海道厚岸郡厚岸町住の江2丁目2番地 道の駅厚岸グルメパーク2F
- TEL:0153-52-4139
- 営業時間:4~9月 11:00~20:00、10~12月は19:00まで、1~3月は18:00まで
- 定休日:月曜日(祝祭日の場合は火曜)、7・8月は無休
- 公式サイト:オイスターバール ピトレスク
厚岸のショッピング:厚岸漁業協同組合直売店 エーウロコ
厚岸のショッピングは道の駅でもできます。しかし厚岸の名物である水産物を買うのでしたら、厚岸漁業協同組合の直売店エーウロコが一押しです。
ここは漁業協同組合の直営店のため、鮮度の高い水産物が格安で買えます。
店内にはいろんな魚介類が売られていますが、圧巻なのはやはり名物の牡蠣のコーナーです。カキえもんやマルえもんといった牡蠣がサイズごとに水槽内にギュウギュウ詰めに入っています。
これだけあるとどれにするか迷うところ、アイヌ語で「牡蠣が多いところ」という意味が町の名前になった厚岸の牡蠣は買わないわけにはいかないでしょう。
訪問したときは、ちょうど花咲ガニのシーズンと重なりました。そのため花咲ガニの水槽に来ると、やはり花咲ガニが水槽内にぎゅうぎゅう詰めに入っていました。
もちろんその場で発送も出来ます。釧路の和商市場は有名ですが牡蠣や花咲ガニに関していえば、断然こちらの方がお得な気がしました。
厚岸漁業協同組合直売店 エーウロコ
- 住所: 北海道厚岸郡厚岸町港町5丁目3番地
- TEL:0153-52-0117
- 営業時間:10:00~16:00
- 定休日:火曜日、年末年始
- 公式サイト:エーウロコ
厚岸は海鳥とグルメの町
厚岸に降り立つまでは中々イメージしづらい町でしたが、実際に滞在してみると牡蠣の豊富な街としての側面が見られました。牡蠣は最盛期と比べると減っているとはいえ、今でも牡蠣の販売や実際に食べられるところも多く、もう一つの名物であるウイスキーも車の運転ではないからこそ楽しめました。
また厚岸大橋からは本当にすぐそばまで海鳥に近づけます。釧路と根室の間の移動で通り過ぎず厚岸に立ち寄る価値は非常に高いです。
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万代正平
- 旅行が好きな旅人。日本国内は、北海道の網走、道東周辺から沖縄の八重山諸島・与那国島まで47都道府県すべて行ったことがあります。2020年2月までは毎年東南アジアに渡航しており、東南アジア10か国すべて訪問しました。海外では他にヨーロッパ(英国、ベルギー、アイルランド)アメリカ、中国、香港、マカオ、台湾、韓国への渡航経験があります。2020年春以降は、主に国内の旅行を中心に活動しています。