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トレッキングとは~必要な持ち物&服装、おすすめスポットまで紹介~
トレッキングは、ストイックに山頂を目指すというよりは、山道を歩いて自然風景を楽しむことを主眼としたアクティビティ。日常の閉塞感を忘れられることも手伝って、近年幅広い世代のあいだで人気が高まっています。
とはいえ、トレッキングが初めての人は「登山やハイキングとどう違うの?」「服装や持ち物は?」など、さまざまな疑問が湧いてきますよね。そこで、トレッキングの楽しみ方や服装・持ち物、おすすめのトレッキングスポットにいたるまで、トレッキングの基礎知識を余すところなくお伝えします。
目次
1. トレッキングとは~登山やハイキングとの違い~
「トレッキングとは何か?」と聞かれてスラスラ答えられる人はそう多くないでしょう。「山歩き」のイメージはあっても、「登山やハイキングとはどう違うの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。
トレッキングは登山同様、山登りの一種です。ただし、一般に山頂を目指す登山とは違い、無理して山頂を目指すのではなく、自然の風景を楽しむことに重きを置くため、比較的なだらかな山道を歩くことが多いのが特徴です。
ハイキングは「難所を避ける」「自然を楽しむ」という点はトレッキングと同じですが、ハイキングのためのコースは「ハイキングロード」として歩きやすく整備されていることが多いため、標高差が少なく、専門的な装備なしに気軽に歩けることに特徴があります。
実は、「登山」「トレッキング」「ハイキング」に厳密な定義はなく、その人の主観によるところもありますが、「ハイキング<トレッキング<登山」の順に標高差が大きく、歩行距離も長くなり、よりハードな行程になるイメージで使われることが多いと考えていいでしょう。
トレッキングの語原は?
「トレッキング」は、「trek」を語源とする言葉。もともとは南アフリカのアフリカーンス語で「牛車で旅行すること」「苦労して旅行すること」を意味していましたが、現在では「山麓の登山コースを歩くこと」や「小登山」といった意味合いで使われています。
「トレッキングの聖地」として世界的に有名なネパールでは、登山許可証のことを「トレッキング・パーミット」と呼んでおり、用語として定着しています。
2. トレッキングはどういった場所で楽しめる?
「トレッキング」に厳密な定義があるわけではありませんが、一般に3時間以内のコースが多いハイキングに比べ、高低差が大きく、所要時間も長い山歩きを指すため、4~5時間以上の山歩きが楽しめる場所がトレッキングに適しているといえるでしょう。
日本国内であれば、世界遺産の自然美に触れられる鹿児島県の屋久島や北海道の知床などが有名。海外であれば、「世界の屋根」とも呼ばれるネパールのヒマラヤ・トレッキングが世界の山岳愛好家の憧れの的になっています。
3. トレッキングに必要な持ち物を確認しよう!
トレッキングは、本格的な登山ほどの重装備は必要ないものの、観光気分の軽い気持ちで挑めるほど甘いものでもありません。行き先の環境に応じて、快適かつ安全に過ごせるよう、山歩きに適した装備や持ち物を揃えるようにしましょう。
背負って歩くためのリュックサックやザック
<出典元:写真AC>
長時間歩き続けるトレッキングでは、荷物の重さからくる身体への負担を和らげるため、背負って歩けるリュックサック等が必須になります。トレッキング中は足場の悪い場所や滑りやすい場所を通ることもあるため、リュックサック等を背負うことで、両手を自由に使えるようにしてケガなどを防ぐという意味合いもあります。
必ずしも登山専用のリュックサックでなくても構いませんが、軽くて肩ベルトがしっかりしているもの、耐久性のあるものを選びましょう。日帰りトレッキングの場合、サイズは30リットルが目安です。
水分補給のための水筒、ボトル
長時間自然の中を歩くトレッキングは多くのエネルギーを必要とするため、こまめな水分補給が欠かせません。もちろん、水分補給のための水筒やボトルは持参が大原則。
トレッキングに適した水筒やボトルは、軽さと丈夫さとを兼ね備えたプラスチックボトルや、保温力のあるアルミ・ステンレスボトルが主流になっています。そのほか、近年は「プラティパス」のように、使わないときは小さく丸めて折りたたむことができるソフトタイプのボトルも人気が高まってきています。
ステンレス水筒に温かい飲み物を入れ、折りたたみタイプのボトルに常温の水を入れるなど、複数のタイプの水筒・ボトルの合わせ使いもおすすめです。
携行しやすい行動食
水分補給に加えて、トレッキング中は栄養補給も忘れてはいけません。トレッキングに持参する「行動食」は単なるおやつとは違って、知らず知らずのうちに消費されるエネルギーを補うための大切な栄養源。トレッキング中の栄養補給は、血糖値が下がって力が入らなくなる「シャリバテ」を防ぐことにもつながります。
そのため、行動食は少量でも長時間の山歩きに必要なカロリーを補えるものを選んでください。特に、ゼリータイプのものやバータイプのものなど、コンパクトで持ち歩きがしやすく、そのまま食べられるものが手間いらずで重宝します。
甘いもの・酸っぱいもの・しょっぱいものなど、異なる味のものを組み合わせることで、食べる楽しみが広がるだけでなく、そのときどきの身体の欲求やタイミングに合った形での栄養補給ができますよ。
いざというときの救急セット、ファーストエイドキット
本格的な登山に比べるとチャレンジしやすいイメージのトレッキングですが、山を歩く以上、ケガやトラブルのリスクは切り離せません。
ケガをしたとしても山の中ではすぐに治療を受けることはできないため、自らケガなどのトラブルに備えておく必要があります。「ファーストエイドキット」は、ケガの応急処置をするためのグッズがセットになったもので、市販のファーストエイドキットには絆創膏や減菌ガーゼ、固定テープ、ピンセットなどが入っています。
市販の基本セットに加え、自分の体質や心配ごとに応じて、カスタマイズしているという人も。胃腸薬、鎮痛剤、目薬など、常備薬がある人はそれらも持参すると安心です。
紙の地図やコンパスがあればスマホの充電が切れても安心
<出典元:写真AC>
今はスマホで何でも調べられる便利な世の中ですが、思いがけず電池が切れてしまったり壊れてしまったらスマホは役に立ちません。
デジタル時代とはいえ、自然と向き合うトレッキングではまだまだ紙の地図やコンパスが活躍します。紙の登山地図なら電池を気にせず使えますし、表示面積が広く、全体を俯瞰して見ることができるため、コースプランを考えやすいというメリットもあります。
紙の地図との相性が良く、道に迷ったときに助けてくれるコンパスもあわせて用意するといいでしょう。
4. トレッキングにおすすめの服装は?
コースにもよりますが、基本的には上から下まですべてを登山用品で揃える必要はありません。とはいえ、街と同じ服装でいいわけではないため、安全・快適にトレッキングを楽しめるよう、以下の注意点を守って服装を準備しましょう。
露出の少ない服を選ぶ
本格的な登山ウェアでなくても構いませんが、トレッキング時の服装は、露出の少ないものを選ぶのが大前提。露出の多い服装で山に入ると、枝や草で擦りむいたり、虫に刺されたり、転んだ際のケガが大きくなってしまったりするリスクがあります。また、標高が高くなるほど紫外線量も多くなるため、露出の少ない服を選ぶことは紫外線から身を守ることにもつながります。
山の気温は標高や天候によって変化が大きいため、温度調節がしやすい服装にするのが山歩きの原則。重ね着(レイヤリング)を前提として、脱ぎ着することで温度調節ができる服装を選んでください。
トレッキングシューズを使う
<出典元:写真AC>
服は普段着ているTシャツやフリース、ウィンドブレーカー等で代用できるものもありますが、靴だけはタウン用というわけにはいきません。足や足首をしっかりと保護し、転倒などによるケガを防ぐためにも、滑りにくく長時間歩いても疲れにくいトレッキングシューズを用意しましょう。
新たにトレッキングを始めるときは、いきなり長時間歩くのではなく、まずは短時間を何度か歩き、トレッキングシューズを馴らしてからトレッキングデビューをするといいでしょう。
レインウエアも忘れずに
山の天気は変わりやすいため、出発時の天候にかかわらず、常にレインウェアを携帯しておくと安心です。
ビニール製のいわゆる「カッパ」でも構いませんが、登山用のレインウェアは防水性だけでなく、汗の湿気を発散させる透湿性にも優れているため、登山用のレインウェアを用意するとより快適に過ごせます。
季節ごとの注意点
春や秋はトレッキングがしやすい季節ですが、山の上は街なかよりぐっと気温が下がることもあります。直接肌に触れるベースレイヤーは長袖を選び、ミドルレイヤーはフリースなどで保温力をアップ。さらに、アウターレイヤーとして風を防ぐウィンドシェルがあると安心です。
暑い夏は、汗を素早く逃がしてくれる速乾性が特に重要になります。そのため、ベースレイヤーには、速乾性の高い化学繊維の半袖のものを身に着けるといいでしょう。また、暑いからといって素肌を日光にさらすのではなく、上から長袖シャツなどを着て紫外線対策に努めてください。
冬山は気温がかなり低くなるため、冬のトレッキングには、ウールのシャツや薄手のダウンジャケットなど、保温性と速乾性を兼ね備えたウェアの重ね着はもちろんのこと、帽子、手袋、防寒ソックスといった防寒具も必須になります。「とにかく暖かくすればいい」と考えるのではなく、速乾性のあるウェアで汗冷えを防ぎながら、少しずつ温度調節ができる服装にしましょう。
5. トレッキングに向いている季節
はっきりとした四季がある日本では、トレッキングにも春夏秋冬それぞれの魅力がありますが、一般的にトレッキングに適した季節と考えられているのが、春と秋。春の山は新しい生命の躍動にあふれていますし、秋の山では紅葉の絶景に出会えます。
夏は2,000~3,000m級の高山にチャレンジできる登山シーズンですが、低山では暑さとの闘いになるため、低山でのトレッキングを楽しむなら、寒くも暑くもない5月や10月がおすすめ。ただし秋は台風や秋雨前線の影響で天候が不安定になることもあるので、場所や日を選ぶ際は天候に十分注意してください。
空気が澄んで、高所ではスノーシューなども楽しめる冬もファンを惹きつける季節です。その反面、冬山は場合によっては命にかかわる厳しい環境なので、本格的な雪山はベテラン登山者の世界と考えましょう。積雪のない標高300~800m程度の低山であれば、冬でも穏やかな山歩きが楽しめます。
6. おすすめのトレッキングスポット
続いて、日本各地のおすすめトレッキングスポットをご紹介します。週末に日帰りで山歩きを楽しんでもいいですし、まとまった休みを利用して、数日間かけて自然とじっくり向き合うのもいいですね。
知床
<出典元:写真AC>
北海道・知床は、日本屈指のトレッキングのメッカ。世界自然遺産に登録された大自然のなかに多くのトレッキングコースがあり、北海道ならではの雄大な自然美が楽しめるほか、エゾシカやキタキツネといった希少な野生動物に出会うチャンスもあります。
知床五湖にはトレッキングというよりも軽いハイキング感覚で歩ける高架木道や地上遊歩道も整備されており、初心者でも無理のないところからスタートできるのが魅力。現地に詳しいガイドと歩くことで、より深く知床特有の自然の魅力が楽しめることから、ガイドツアーへの参加もおすすめです。
谷川岳
<出典元:写真AC>
谷川岳は、群馬県と新潟県の県境をなす三国山脈(みくにさんみゃく)の山。頂上は標高1,963mの「トマの耳」と1,977mの「オキの耳」の2峰に分かれており、古くから「耳2つ」と呼ばれてきました。頂上の展望台からは、周囲の山々が織り成す勇壮な大パノラマが広がります。
夏でも涼しく、首都圏から日帰りができることも人気の理由。所要時間が2時間程度の気軽に自然を楽しみたい人向けのコースから、所要時間約5時間のがっつり山を歩きたい人向けまで幅広く対応しているため、自分に合ったコースが選べますよ。
富士山
<出典元:写真AC>
山歩きを始めるなら、日本を象徴する富士山にのぼってみたいと考える人も多いのではないでしょうか。富士山といえば夏に山頂を目指す富士登山が有名ですが、山頂を目指すとなると上りだけで6~9時間かかってしまいます。
もっと気軽に富士山を歩くなら、自然豊かな山麓をトレッキングするという方法もあります。富士山5合目周辺には往復2~6時間のトレッキングコースが整備されており、富士登山よりも気軽に標高2,000m級の絶景や四季折々の植物などを楽しむことができます。
場所によっては富士山頂や南アルプスの山々の開放的な眺望、火山の溶岩流などを目にすることができ、一味違った富士山の魅力に出会えるはずです。
屋久島
<出典元:写真AC>
トレッキング愛好家の憧れの的になっているのが、世界自然遺産に登録されている鹿児島県の離島・屋久島でのトレッキング。宮崎駿監督が映画『もののけ姫』のインスピレーションを得たという森がある屋久島には、うっそうと茂る原生林をはじめ、太古の世界を思わせる神秘的な風景が満載です。
屋久島には、所要8~10時間の「縄文杉トレッキング」や所要5時間の「太古岩トレッキング」、所要6~7時間の「愛子岳トレッキング」など、半日から楽しめる多彩なトレッキングコースがあります。
人気なのはなんといっても「縄文杉トレッキング」。片道5時間かけてたどり着く屋久島のシンボル・縄文杉の大きさと神々しさは実際に行った人にしかわかりません。屋久島でのトレッキングを目標に、近場での2~3時間程度の軽いトレッキングから始めるのもいいですね。
屋久島でのトレッキングについて、詳しくは『はじめての「屋久島トレッキング」服装・持ち物は?現地ガイドさんからのアドバイスもご紹介!』も参考にしてみてください。
コースによっては初心者でも気軽に始められるトレッキング。経験すればするほど山歩きの魅力にハマる人も少なくありません。ぜひ、四季折々の自然美に触れられる素敵なトレッキングコースを見つけてみてください。
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