公開日:
最終更新日:
【メトロポリタン美術館展】見どころ徹底解説!!展覧会の概要から主な作品を一挙ご紹介します♪
こんにちは!たびこふれ美術ライターのやすおです!
いや~~~いよいよ開幕しましたね!!
恐らくこの冬最大の話題の展覧会、「メトロポリタン美術館展」が大阪市立美術館で開催されております~~~!!
と、いうかちょっと出遅れてしまいまして、会期は2022年の1月16日まで...ということであっという間に残りわずかの会期となりましたが、みなさんはもうご覧になられましたか?(大阪の会場の後には東京の新国立美術館に巡回予定)
コロナ禍でなかなか海外旅行にも出られない中、なんと向こうからやってきてくれる美術展だなんて、これはもう行くっきゃない!!
展覧会の中に入るとそこはもうニューヨークのメトロポリタン美術館...すべての作品から洗練されたニューヨークの香りが漂っていてもう気分は海外旅行そのもの...
ま、違いがあるとするならば、そちらこちらで飛び交う関西弁が聞こえてくるくらいじゃないでしょうか。
というわけで、こちらの記事では博物館学芸員の資格を持つ私が、展覧会の概要、見どころなどをお伝えしていこうと思います!
どうぞ楽しんでいってくださいね♪
目次
メトロポリタン美術館とは?
メトロポリタンは言わずと知れた世界三大美術館の一つ(諸説あり)。
アメリカはニューヨークの マンハッタンに位置する美術館で所蔵作品は200万点を誇ります。
美術館自体は1870年に創立され、先史時代から現代に至るまでの約5000年以上にわたる世界各地の文化遺産を所蔵しています。
有名なところでいうと、エジプトの古代遺跡から古代ローマ都市の壁画、日本画家尾形光琳の八橋図屏風、ありとあらゆる作品が取り揃えられています。
そしてそんな中、今回の展覧会のテーマは「西洋絵画の500年」。初期ルネッサンスから19世紀までの西洋絵画史を彩った名作がなんと、65点も来日。しかもそのうちの46点が日本初公開!
うーーーん、もうワクワクが止まりません!ということで、今回の展示会で区切られる3つの章に合わせて、作品をざっとご覧いただこうと思います。
1章 信仰とルネサンス
古代ローマ・ギリシャの文化が途絶えた後、西洋美術は長らく「暗黒時代」と呼ばれる時代を迎えていました。その時代にはキリスト教が人々の考え方の中心になっていて、絵画は神様の神性を重視するあまりに、平面的で...、感情表現もない...、私たちを戒めるような存在として描かれていたんです。
でも、その約1000年間にわたる硬直した西洋美術の、雪解けとなる活動が行われました。それが...ルネサンス。15世紀のイタリア、フィレンツェで花開いたルネサンスは、神様と信仰を中心とした社会から、古代ギリシャ・ローマという、キリスト教が誕生する前、人間が人間らしく文化を享受していた時代に戻ろう!という理念を元に、文化の再生を果たしたんですね!
このチャプターで扱われるのは、暗黒時代からの雪解け、人間らしい作品になっていく過程です。
このフラ・アンジェリコの「キリストの磔刑」をご覧いただくと、まだ人物表現に固さは残るものの、イエスの苦しみや、手前のイエスを信仰する人々の悲しみがとても感情深く表現されていますね。お母さんのマリア様はショックすぎて失神。
このエルグレコの「羊飼いの礼拝」くらいになると、もはや個性発揮しすぎ!!って感じもしますが、彼の時代になると、ルネッサンスも終わりを迎え、新たな時代に入ろうとしているんですね。
今回の展示はこういった西洋絵画の歴史が感じられるような時代ごとのチャプターになっているようです。そういった変遷をどうぞ、楽しんでくださいね♪
2章 絶対主義と啓蒙主義の時代
二つ目のチャプターは「絶対主義と啓蒙主義の時代」です。
多分この展示会で一番の見どころになるのはこのチャプターですね。
ルネッサンスの次に訪れた大きな時代はバロック時代という、劇的な構図や明暗対比を使用した絵画の表現でした。
というのも、その頃はキリスト教カトリックが絶大な力を持ち、フランス王ルイ14世に代表されるような各国で王様が絶対な力を持った絶対主義っていう、二つの絶対が絵画をも劇的に、ドラマティックに変えていきました。
そんなバロック時代をけん引したのが、私の大好きな"腕は天才、性格ヤ●ザ"のカラヴァッジョです。
この作品は「音楽家たち」。カラヴァッジョの比較的初期の作品で、そこまでドラマティック...っていうわけでもないんですが、初期カラヴァッジョ特有の官能的な表現が感じられると思いませんか?
右側メンズの背中なんて、なんだかとっても艶めかしいですよね。
その他にはジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「女占い師」。この作品めちゃめちゃおもしろいんでまた別の記事にしたいと思います!
そして絶大な力を持つカトリック側に対抗するプロテスタントからの代表選手は、我らがフェルメールの「信仰の寓意」の登場です。膝を上げて宙を眺める彼女は一体何を思うのか...?
他にもレンブラントや、ピーテル・クラースなど素晴らしい画家が続々と登場します!
劇的なバロック時代が終わりを迎えて、その反動からほわほわした貴族文化が花開き、時代はロココへ入りました。
そんなロココからの代表選手は、エロの巨人、フランソワ・ブーシェのお出ましです。このパステルカラーに覆われたヴィーナスの白いお肌を堪能してくださいね。
あとは、ヴァトーもとても優雅だし、女性画家であるマリー・ドニーズ・ヴィレールも素晴らしい作品を残しています。
3章 革命と人々のための芸術
ヨーロッパの文化はフランス革命を発端にヨーロッパに市民中心の社会を、近代化社会をもたらすきっかけになりました。
そして、いわゆる昔からある古い絵画から脱却するように、絵画にも近代化の波が訪れ、絵画は現代につながる様々な様式が生まれるようになりました。それこそ人々のための芸術!!「美」というものが伝統から解き放たれて、いろんな人々がいろんな「美」を表現できるようになったんですね。
ではそんな、「美が伝統から解き放たれて~」というくだりに入る前に、解き放たれていない絵画をご覧いただきましょう。
こちらはジェロームという画家が描いた「ピュグマリオンとガラテア」という作品です。
とある彫刻家が自分の作った裸の女性の彫刻に猛烈に恋をしてしまったという、若干ヤバイ人の話です。でもヴィーナス様に祈ったらなんとその彫刻は生身の女性になりました、っていうハッピーエンドなのかよくわかんない絵なんですが、それを表すように、この女性、足元は石みたいな色なのに、上に上がるにつれて人間みたいになっていますよね。いま、彫刻が人間に変わろうとしているんですね。
さて、この絵がいわゆる、伝統に囚われた絵です。
写真のような固い人体表現、筆跡を残さない塗りこめられた画面...これこそ、昔から続く伝統の美だったんですよね。
でもそこに反旗を翻す若い画家たちが出てくるんですが、今回の展示会の中でいうとわかりやすいのはこのお方。
ドガの「踊り子たち、ピンクと緑」です。
さっきの作品と比べれば一目瞭然、描き方が全然違いますよね、なんていうか動きがあるというか、生き生きしているというか。
こういう、伝統から離れて、画家自身がいいと思うものを描いていくようになるんです。
私の大好きなターナー先生も、古典的な絵画にはなかった、立ち込める大気の表現なんかがとってもお上手に描けていますね。私ヴェネツィア大好きなんです!
そして、心の内をキャンバスに吐き出すようなゴッホの絵や、ものの存在自体を表すことにこだわったセザンヌが出てきて、絵画は近代へ...という流れですね。
壮大な西洋美術の歴史、500年、感じていただけましたか?
さいごに...
いや~~~ざっとご覧いただいただけでも見どころが目白押し!!
なかなかコロナ禍で外にも出にくい世の中ですが、おしゃべり不要な美術館はコロナ禍での遊びにぴったりですよ♪
そして併せてこちらもご覧ください♪
このチャンネルは絵画や画家・美術館など美術にまつわるエトセトラについて、動画投稿しているちゃんねるです。
運営しているのは・・・私!(あんたかいっ!笑)
ぜひぜひYoutubeにも遊びに来てみてくださいね♪
まっだまだ展覧会の解説をしていま~す!
そしてもし、ちょっとでもおもしろかったら・・・
チャンネル登録お願いしまぁす!←気分は完全にユーチューバー(笑)
メトロポリタン美術館展【大阪展】※開催終了しています
- 会場:大阪市立美術館(大阪市天王寺区茶臼山町1-82)
- 会期:2021年11月13日(土)~2022年1月16日(日)
- 主催:大阪市立美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪
- 後援:公益財団法人 大阪観光局、米国大使館
- 開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
- 休館日 :月曜日 ※但し1月10日(月・祝)は開館
- 問い合わせ:TEL 06-4301-7285(大阪市総合コールセンターなにわコール)
- HP:大阪市立美術館
>>「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」公式サイトはこちら
メトロポリタン美術館展【東京展】※開催終了しています
- 会場:国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2)
- 会期:2022年2月9日(水)~5月30日(月)
- 主催:国立新美術館、メトロポリタン美術館、日本経済新聞社、テレビ東京、BSテレビ東京
- 後援:米国大使館
- 開館時間:10:00~18:00(毎週金・土曜日は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで
- 休館日 :火曜日 ※但し5月3日(火・祝)は開館
- 問い合わせ:TEL 050-5541-8600 (ハローダイヤル)
- HP:国立新美術館
>>「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」公式サイトはこちら
関連記事
※本記事は2022年1月に公開しましたが、2022年6月に追記しています。
Ranking大阪記事ランキング
-
山上やすお
- 国内外の添乗員として1年の半分ほどを現地で過ごすかたわら、日本にいるときには各地で美術のカルチャー講師をしています。博物館学芸員資格保有。「旅に美術は欠かせない!」の信念のもと、美術の見方、楽しみ方を記事にしていきます。