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四季折々の散策を楽しみたい都市景観100選「大宮盆栽村」
<トップ画像:五葉松「千代の松」推定樹齢500年 撮影:KanmuriYuki>
日本の秋冬は気温こそ低くなるものの比較的晴天が多く、散歩に出かけたくなることもしばしば。今日は、そういう気分にぴったりの大宮盆栽村を紹介したいと思います。
目次
関東大震災がきっかけで開かれた村
<大宮名所盆栽村 さいたま市大宮盆栽美術館提供>
大宮盆栽村は、さいたま市のJR大宮駅から2.5kmほど北東に位置します。その起こりのきっかけになったのは、関東大震災(1923年)でした。
それまで東京にいた盆栽業者らが、被災後、盆栽づくりに適した土地と見込んで集団移住してきたのです。当時盆栽村への移住につけられた条件は4つ:「盆栽を十鉢以上持つ」こと、「二階家は建てない」こと、「垣根は生垣とする」こと、「門戸を開放する」こと。(九霞園ウェブサイトより引用)これらを守って形成された盆栽村はいまも緑多く散策に適した界隈です。
<大宮盆栽村の通り(九霞園蔵)さいたま市大宮盆栽美術館提供>
ほぼ碁盤の目状に引かれた通りは、植えられた街路樹に合わせて、今ではかえで通り、もみじ通り、けやき通りなどと呼ばれています。歩道もしっかり取ってあれば、要所要所に地図付きの案内板も立てられ、盆栽園めぐりを助けてくれます。
ありがたいことに、駐車場付きの無料休憩所「盆栽四季の家」も設置されていて、散策途中一息つくことも可能です。現在は盆栽町と呼ばれるこの界隈、1997年には国土交通省により都市景観100選のひとつに選ばれました。
盆栽への愛情があふれる盆栽園
<清香園 さいたま市大宮盆栽美術館提供>
ここに現在残る盆栽園は6軒で、閑静な住宅街に点在しています。いずれも入場無料で、自由に見学させてくれます。とはいえ、いわば芸術作品が並ぶ場所ですから、大きな荷物は持って入らない、中で飲食はしない、写真は撮らないなどの注意事項はしっかり守りましょう。
<蔓青園 さいたま市大宮盆栽美術館提供>
盆栽園を見学して感じるのは、働いている方々の盆栽への愛情と情熱です。盆栽の歴史から、楽しみ方、手入れの仕方まで、どんな初歩的質問にも皆さん真摯に答えてくれます。お城や一流ホテルロビーに似合いそうな立派な盆栽の購入ももちろん可能ですが、どの盆栽園でも「自分で育てるのが一番楽しいですよね」と小さな木を勧める口ぶりだったのも印象的でした。
<藤樹園 さいたま市大宮盆栽美術館提供>
六軒の盆栽園にはそれぞれに特徴があるので、できればすべて巡ってみてほしいところ。そのうち、清香園(せいこうえん)、藤樹園(とうじゅえん)、芙蓉園(ふようえん)では、盆栽づくりの体験ができますし(要事前予約)、清香園と藤樹園では定期的に通う盆栽教室も開いています。清香園の盆栽教室は、都内や横浜でも受講可能です。詳しくは下のリンクをご覧ください。
大宮盆栽村
- URL:大宮盆栽村
- 場所:東武野田線大宮公園駅とJR宇都宮線の土呂駅の間
- 定休日: 5軒とも木曜日
盆栽文化を世界に発信する大宮盆栽美術館
<盆栽庭園 俯瞰 さいたま市大宮盆栽美術館提供>
盆栽の世界を俯瞰してみたいという方には、さいたま市大宮盆栽美術館をおすすめします。
同美術館は、盆栽文化を広く世界に発信する拠点として2010年3月開館しました。盆栽の名品コレクションを公開するだけでなく、盆栽に関わる研究センターとしても機能しています。屋内・屋外の展示スペースでは、逸品とともに、盆栽の見方や魅力がわかりやすく説明されています。
<座敷飾り 行の間 さいたま市大宮盆栽美術館提供>
盆栽園めぐりの前に基礎知識をつけたいという方も、盆栽園をめぐった後でその歴史をもう少し知りたいという方ももれなく楽しめる美術館です。
個人的に、筆者が特に感嘆したのは座敷飾りの展示です。盆栽とそのスタイルに呼応するような書体の掛け軸が、床の間に置かれており、盆栽をめぐる文化の奥深さを感じました。また、見学される方は二階に上るのをお忘れなく!盆栽庭園が一望できるテラスからの眺めは必見です。
<山もみじ「紅陵」推定樹齢120年 撮影:KanmuriYuki>
なお、同美術館でも盆栽講座を開いています。興味のある方は、同美術館サイト内の「ワークショップ/イベント」をご覧ください。
さいたま市大宮盆栽美術館
- 住所:埼玉県さいたま市北区土呂町2-24-3
- URL:さいたま市大宮盆栽美術館
- 開館時間:3月~10月 9:00~16:30(入館は16:00まで)、11月~2月 9:00~16:00(入館は15:30まで)
- 休館日:毎週木曜日(祝日を除く)、年末年始、臨時休館日あり
- 入館料:一般310円、高大生・65歳以上150円、小中学生100円
<野梅 さいたま市大宮盆栽美術館提供>
一年を通して散策を楽しめ、四季のある国に生まれた喜びを改めて感じる大宮盆栽村。次の休日の行き先にいかがでしょう?
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冠ゆき
- 山田流箏曲名取。1994年より海外在住。多様な文化に囲まれることで培った視点を生かして、フランスと世界のあれこれを日本に紹介中。