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【神奈川県川崎市】アートな土木を見に行こう!水争いから生まれた幾何学の美~久地円筒分水~
多摩川を挟んで東京都に隣接する神奈川の政令指定都市・川崎市。川崎大師がある南部は工業地帯。中部から北部には等々力や生田などの緑も多い住宅地が広がり、近年住みたい町として注目の武蔵小杉もこのエリア。
今回は川崎市北部にあたる高津区にあるアートな土木、久地円筒分水をご紹介します。
目次
住宅地にひっそりと佇む緑のオアシス
「二ヶ領用水久地円筒分水」があるのは川崎市高津区久地。東京から国道246号を走り、多摩川を渡って数分で円筒分水の標識を発見。小さいながらも駐車スペースがあるのでそこに停めましょう。路地沿いには、比較的大きな用水路が整備されており、堰から流れ落ちる水の音が響き渡っています。
整備されたスペースに「円筒分水」はあります。
この地域の水争いの歴史とは?
二ヶ領用水は、江戸時代の川崎領と稲毛領にまたがって流れていたことからこう呼ばれています。
案内板にはこう書かれています。徳川家康の命を受け1611(慶長16)年に完成した神奈川県最大にして最古の人口用水といわれています。当初はこの用水は、4つの堀に分水されていました。しかし水量によってムラがあり、正確な配分ができず争いが絶えませんでした。
そこで、円の比率により各堀のかんがい面積を割り出し正確に配分する「装置」、円筒分水が造られたのです。
円筒分水の美しき配分システム
そもそも円筒分水とは何か?人間にとっても農作物の生育にとっても水は最も重要なものであることは今も昔も変わりません。当時の住民にとって水源(水量)の確保はそれこそ死活問題でした。限られた水資源をいかに平等に分配するか。
その問題を解決するべく生まれた最も公平で機能的な装置。これが円筒分水なのです。これは1941(昭和16)年、多摩川右岸農業水利改良事務所長であった平賀栄治の設計により誕生しました。
上図にある通り、送水される量がかわろうとも分水比率が変わらない。まさに機能美を持った画期的なシステムをもって水争いを一気に解決したのです。
現在では、農業用水の要としての役割は薄れましたが、環境用水として大きな役割を担っている貴重な遺産です。
人類の英知を集めて紛争を解決した分水システム。非の打ちどころのないその美しい円のプールから静かにあふれる水。隣の用水から流れる水流の音によって周囲の騒音がかき消されることで、いつまでも眺めていたくなるような空間がそこにあります。
週末、親子で仕組みを理解しながら訪れてほしい、機能美が堪能できる学びのスポットです。
円筒分水は川崎以外にも比較的多く存在しています。全国に数百は存在しているといわれており、意外と身近なところにもあるようです。皆さんも探してみてはいかがでしょうか。
二ヶ領用水久地円筒分水
- 住所:神奈川県川崎市久地
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BOZU
- 横浜市出身。新卒から旅関連の事業に携わっており、日本国内は離島以外すべて訪問。海外も10か国30都市以上渡航しています。タイのバラマンディー釣りと手長えび釣り屋さんで釣って食べた手長えびの入りトムヤムクンとビールの体験と味。奄美大島の鶏飯と黒糖焼酎の味が忘れられません。焼酎・歴史・釣り・キャンプ・高校野球そしてシウマイ弁当を愛する元野球部。