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西の迎賓館と呼ばれる『奈良ホテル』はまさに美術館
こんにちは!たびこふれライターの中尾です。
『クラシックホテル』とは日本のホテル黎明期(れいめいき:新しい時代が始まる時期)に創業し、戦前・戦後を通して西洋のホテルのライフスタイルを具現化してきたホテルのこと。奈良県奈良市にある"奈良ホテル"もそのひとつ。関西の迎賓館と云われ、国賓・皇族の宿泊する迎賓館に準ずる施設として1909年(明治42年)に創業。100年の歳月を経て今でも宿泊者を魅了するホテルとして名を馳せています。
その奈良ホテルを見学する機会に恵まれました。館内に入って思わず「すごい!」と感動した奈良ホテルを皆さんに紹介させていただきます!
その前に、奈良ホテルの歴史についてはこちらをご覧ください。
目次
- 外観
- フロント
- ティーラウンジ
- 大階段
- 本館2階
- 本館客室
- 新館客室
- メインダイニングルーム「三笠」【本館1階】
- 日本料理「花菊」【新館5階】
- 「奈良ホテル」美術品&調度品コレクション<写真提供:奈良ホテル>
- 奈良ホテルの詳細情報
- 見学を終えて...
外観
奈良ホテルは世界文化遺産・興福寺の近く。周囲には春日大社や東大寺も徒歩圏内の便利な場所に建っています。こちらは建築家、辰野金吾氏設計による桃山御殿風檜造りの1909年に建造された本館です。
本館の正面玄関です。入口は赤い絨毯が敷かれ重厚感が漂っています。
フロント
本館1階のフロントです。後方上部には冨田溪仙(とみたけいせん)氏の「嵐峡春曙」がかかっており、その下には大きな年代物の掛け時計、さらにその下には金庫が置いてあります。
この掛け時計も金庫も現役で使っているそうです。
フロントを背に後方左手に掛かっている絵が上村松園(うえむらしょうえん)氏の「花嫁」です。また中央には鳥居とマントルピース(暖炉)があります。この組み合わせはとても珍しく、日本とドイツの和洋折衷様式で建てられた奈良ホテルを象徴するものです。鳥居の横には狛犬もしっかり設置されているのには笑ってしまいました。
ティーラウンジ
フロント右奥のティーラウンジです。内部は天井まで届く窓から、四季折々の風景や古都の景観を楽しむことができます。まさに贅沢な休息時間を楽しむことができます。
大階段
フロント奥に延びる大階段です。階段1階部分にある、ひときわ目立つ「擬宝珠(ぎぼし)」は奈良の伝統工芸「赤膚焼(あかはだやき)」製で、奈良ホテルにしかないものです。
★関連記事⇒【奈良】赤膚焼は奈良絵をうまく引き出した伝統的な陶器
大階段の全景を1階から撮影しました。重厚な雰囲気の赤い絨毯が敷かれています。注目すべきところは、流れるような美しいライン。常にピカピカに磨かれています。
大階段は階段途中で右へと折れているのでとても立体的に感じます。
本館2階です。釣燈籠を模した珍しいシャンデリアは、天井から梁に直接固定されています。
1983年(昭和58年)には、このシャンデリアをバックに「奈良の休日」を楽しまれたオードリー・ヘップバーンが家族写真を撮られたそうです。
本館2階
本館2階の客室へと続く廊下です。
廊下の消火栓の上には大きな斧が設置されています。本館は木造建築のため、火災の時は火の回りが早いので、ホテル従業員がこの斧を使い、客室のドアを壊していくそうです。でも、今は消火施設も整備されているので、これは当時のままを再現するためのモニュメントとして設置されています。
例えばこの消火バケツも今は使われていません。水も入っておらず飾りとして設置されています。
大きな窓からは外の光がさえぎることなく降り注いでいます。
さらに本館2階の廊下、突き当りです。照明は明るすぎず、暖かく足元を照らしています。
本館客室
本館客室の中で一番スタンダードな『スタンダードツイン(タウンサイド)』です。定員は1~2名です。広さは21.8平方メートルですが、高い格天井のおかげで数値以上に広く感じます。クラシックな照明器具、お部屋の雰囲気にマッチした日本画など調度品のひとつひとつにも歴史が息づいています。まさにノスタルジックな世界です。
※本館は全室禁煙です。
『スタンダードツイン(タウンサイド)』の部屋の奥から見るとこんな感じです。
バスルームは完全に現代風に置き換えられていて、クラシックホテル特有の水回りの悪さに悩まされることはありません。
こちらも同じ『スタンダードツイン(タウンサイド)』ですが、一部造りが異なります。この写真では分かりづらいのですが、左側に創業当時の「マントルピース(暖炉)」が設置されています。
※マントルピース(暖炉)は現在使われていません。
こちらは『スタンダードツイン(パークサイド)』です。部屋の広さは27.3平方メートル、定員は2~3名です。
『スタンダードツイン(パークサイド)』のバスルームです。バスタブは大きく足をのばして浸かることができます。
この後、スイートルームを見学させていただきましたが、セキュリティの関係上、写真撮影は行っていません。奈良ホテル公式HPによると『格天井に御簾、蝶の羽を模ったシャンデリアや正倉院文様の宝相華をデザインした絨毯、絵画など、往時を偲ばせる最高級の調度品が設えられた、格調高い奈良ホテルのシンボルルームです。』と記載があります。
新館客室
新館は建築様式「吉野建て」を採用し、1984年に建築された棟です。こちらは『スタンダードツイン(タウンサイド)』です。広さは33平方メートルあり、本館のスタンダードツインより広いです。客室内は、オーク材の落ち着いた色合いに、大和文化の華やぎを表現したデザインが彩りを添えるしつらえになっています。
※新館は禁煙・喫煙室があります。
メインダイニングルーム「三笠」【本館1階】
名画や調度品が設えられた重厚華麗な空間が広がる、創業以来のメインダイニングルームです。歴代の料理長から受け継いできた伝統のフランス料理が楽しめます。
ちょうどこの時はランチタイム終わりの昼下がり。高級感あふれる店内に、緑のテーブルクロス、そして整然と並べられたカトラリー。素晴らしい!
天井からはシャンデリアが優しい灯りでレストラン内を包み込みます。
<写真提供:奈良ホテル>
★メインダイニングルーム「三笠」に関してはコチラをご覧ください
日本料理「花菊」【新館5階】
メインダイニングルーム「三笠」のフランス料理に対して、こちら「花菊」は日本料理を提供しています。
<写真提供:奈良ホテル>
レストラン内はとてもモダンな造りです。大きくとられた窓からはまるで展望台のような景色が広がります。
<写真提供:奈良ホテル>
「奈良ホテル」美術品&調度品コレクション<写真提供:奈良ホテル>
奈良ホテルには『奈良ホテル館内 美術品&調度品めぐり』という冊子があります。まさに美術館の中にホテルがある感覚です。
吹き抜け格天井
本館玄関を入ってすぐ上をご覧下さい。約9メートルの格天井の吹き抜けが優雅に広がっています。
大階段
重厚な雰囲気の赤い絨毯の大階段は当館屈指の写真撮影スポットです。また、削り出しの手すりの、流れるような美しいラインは必見です。
擬宝珠
奈良の伝統工芸「赤膚焼」製の当館にしかない擬宝珠(ぎぼし)。もとは真鍮製でしたが、戦時中に供出したため代用品として製作されたものです。大塩正人窯の製作で、今では当館の名物になっています。同時に玄関車寄せ柱の金属製の乳唄(ちちばい)が木製に変えられました。
「花嫁」上村松園
この作品はVと左右対称になっており、鉄道省観光局が、観光日本宣伝のために昭和10年頃ポスターに使用した作品です。当時のポスターの中では極めて美しい出来であり、諸外国で話題を呼んだと伝えられています。
鳥居とマントルピース
鳥居とマントルピース(暖炉)の組み合わせがおもしろいこの調度品は、日本とドイツの和洋折衷様式で建てられた当館を象徴するもので、ここに、辰野金吾の設計思想が凝縮されていると言われています。マントルピースはほとんどの本館客室に備わり、大正初期までは実際に使用されていました。
欄干
米軍接取開始直後、奈良ホテル全体にペンキを塗れと指示が出ました。当時の日本人支配人が必死に奈良ホテルの由来等を説明し、難を逃れたが、ヴェランダの手すりだけは神社も赤く塗ってあるということで、丹色(にいろ)にペンキの塗装を了承したもの。もとは白木造りでした。
平成の大時計
1990年(平成2年)今上天皇(現在の上皇上皇后両陛下)の即位の折に、お祝いの意を込めて記念に設置した大時計。両陛下もお聞きになられた、15分ごとに奏でられる美しい音色をぜひ、耳を傾けてみて下さい。
スチーム暖房
マントルピースに代わり、大正時代より現役で活躍。1914年(大正3年)大正天皇即位記念で全館セントラルヒーティング化された際に備え付けられたものです。本館内のいたるところに設置されました。美しい彫刻もご覧下さい。現在は使用していません。
銅鑼
お客様方にお食事の時間を伝えるために使用していた銅鑼。大戦中には、空襲警報時にこれを鳴らし、お客様を防空壕へ案内していました。
和風シャンデリア
釣燈籠を模した珍しい和風のシャンデリア。非常に重厚感のあるこのシャンデリアは、梁に直接固定されています。1983年(昭和58年)このシャンデリアをバックに、「奈良の休日」を楽しまれたオードリー・ヘップバーンが家族写真を撮られました。この他、館内には様々な和風シャンデリアがあります。
乃木大将お手植えの松
1911年(明治44年)、大阪で行われた師団対抗演習の総裁官であった氏がご宿泊になられた際、記念にとご自身の手で植えられた松です。
※この項の写真はすべて奈良ホテルからの提供です。また説明文もパンフレットから引用しています。
奈良ホテルの詳細情報
- 住所:奈良県奈良市高畑町1096
- 電話:0742-26-3300(代表)
- アクセス:JR奈良駅から徒歩約25分、タクシーで約8分、近鉄奈良駅から徒歩約15分、タクシーで約5分
- チェックイン:15時 チェックアウト:11時
- 公式HP:奈良ホテル
- 公式SNS:Twitter/Facebook/Instagram
★日本クラシックホテルの会:http://www.jcha.jp/
見学を終えて...
クラシックホテルと聞くと「古いホテル」と思われがちですが、奈良ホテルの館内はピカピカに磨かれていてとても快適。部屋もバスルームが現代風に改修されていますので、よくある水回りのトラブルはほぼ皆無だそうです。そして奈良市中心地に位置していますので、観光客が去った夕方や朝の散策が可能。これはとてもポイントが高いことです。早めにチェックインして館内を歩けば美術館にいるような錯覚に...。さらに格式高いメインダイニングルーム「三笠」での食事は外せませんので、宿泊はぜひ2食付きのプランを選びたいところ。
※当記事は2021年6月に見学した時のものです。詳細は必ず奈良ホテル公式HPにてご確認ください。
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中尾勝
- 旅が大好き!国内海外を問わず飛び回っていますが、海外へは2011年に渡航して以来、出国していません。今は原点に戻り国内を旅しながら日本の良さを体感中。