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今上海で一番の注目スポット!あの日系書店も出店する「コロンビア・カントリー・クラブ」とは?
こんにちは。今回は今、上海で最も注目を集める旧「コロンビア・カントリー・クラブ」をご紹介します。
なぜここが今注目されているかと言いますと、日本人なら誰もが知っているあの書店がこの地に上海初出店を果たしたこと、またほぼ時期を同じくして隣接する敷地内に建つ、歴史上人物の邸宅が公開されたからです。どちらの建物も戦前の時代に建てられた古い歴史をもつ建築なのですが、かつての時代の状態を守りつつ修復・リフォームされたことから、オープン前から大きな話題となりました。
目次
- アメリカ人向け娯楽施設「コロンビア・カントリー・クラブ」の歴史
- 研究所から2018年に「上生新所」としてリニューアルオープン
- 2020年12月にオープンした日系書店「蔦屋書店」
- 築89年にして初の一般公開!名建築家が手掛けた「孫科邸」
アメリカ人向け娯楽施設「コロンビア・カントリー・クラブ」の歴史
注目スポットをご紹介する前に、「コロンビア・カントリー・クラブ」の歴史に触れておきたいと思います。
戦前、上海に外国政府が管轄するエリア「租界」があった時代、この辺り一帯はアメリカ系の不動産開発会社によって宅地開発が進められました。「コロンビア・カントリー・クラブ」は欧米人、主にアメリカ人向けの娯楽施設として1924年に開設されました。ゆったりとした敷地にはダンス、テニス、ゴルフ、水泳が楽しめた他、バーベキューや乗馬もできたそうです。
<「コロンビア・カントリー・クラブ」開設当時の様子(孫科邸展示より)>
クラブの付近には「コロンビア・サークル」として、1928年に欧米人向けの超高級住宅街の宅地開発が行われ、広大な庭をもつ多くの洋館が建てられました。この住宅地は様々な国籍の住民に対応するために、スペイン、イギリスなど欧米各国の建築様式の建物が設計されました。実際にこちらの住宅の住民は、大使館大使、銀行家、医師、宣教師、商人など、上海のそうそうたる各界の名士たちでした。
<1920年代発行、超高級住宅地「コロンビアサークル」の住宅販売パンフレット(孫科邸展示より)>
今もこの辺りにはこの時期に建てられた多くの洋館が残されています。
ちなみに「コロンビア」という名称の由来ですが、住宅街や娯楽施設がコロンビア・ロード(COLUMBIA ROAD)という名称の道の付近に立地していたためです。コロンビア・ロードは旧租界当局によりつけられた名称で、租界がなくなった現在では広東省の地名よりつけられた、番禺路(パンユールー)という名前に改められています。
研究所から2018年に「上生新所」としてリニューアルオープン
上海の旧租界時代は1943年に終結、1951年からは「コロンビア・カントリー・クラブ」の建物は主にワクチンを研究する研究所の施設として利用されました。研究所は2016年に移転、その後は敷地内の歴史的建造物をいかしての開発が行われ、2018年に「上生新所」という名称でリニューアルオープンしました。「上生新所」の他、以前の呼び名の「コロンビア・カントリー・クラブ」、または(本来は付近にあった住宅街の名称ですが)「コロンビア・サークル」という名称でも親しまれています。
現在「上生新所」には飲食店や各種店舗があり、その後建てられたビルにはオフィスなども入居しています。
<写真1枚目は1950年代、2枚目は2020年の様子。敷地内の建造物が大幅に増加していることがわかります(孫科邸展示より)>
リニューアルオープンした「上生新所」ですが、その時の一番の目玉は上海に唯一残る旧租界時代のプールの一般公開でした。現在遊泳はできず観賞用ですが、ここでしか見られない光景を求めてたくさんの人が訪れる有名スポットです。
プールサイドにはオープンテラスを設けたバーやカフェが立ち並んでおり、涼し気な風景を眺めながら食事やお茶を楽しむことができます。
上生新所データ
住所:上海市長寧区延安西路1262号
営業時間:年中無休
電話番号:18016010392
※入場予約は不要
アクセス:地下鉄11号線「交通大学」駅6番出口下車徒歩17分
2020年12月にオープンした日系書店「蔦屋書店」
2020年12月、「旧コロンビア・カントリー・クラブ」のメイン棟であった建物に、皆さんご存知の日系書店「蔦屋書店」がオープンしました。蔦屋書店の中国店舗としては杭州に続いて2店舗目、上海では初の店舗です。
こちらの店舗、元は「コロンビア・カントリー・クラブ」のメイン棟。敷地内でも大きな規模と存在感を放っています。今回書店のオープンにあたり、歴史的建築の趣を大事に修復・リフォームを施し、かつ高いセンスを兼ね備えた書店としても十分に鑑賞できる設計になっていることからオープン前から大きな話題に。現在新型コロナの影響もあり、完全予約制での入店なのですが、オープン直後は予約がとりづらい状況でした。
<暖炉上のCCC:Columbia Country Clubのマーク>
<建物内に残る柱は保護され、歴史的背景の説明が添えられていました>
<書店の店内とは思えないような、荘厳な雰囲気を漂わせる廊下>
<上海関連書籍の書棚>
筆者が訪れた1月下旬は、上海の市内感染者が確認された時期でもあったことから前日でも予約は取れましたが、来店者はかなり多く、店内で人が入らないように撮影するのが難しいほどでした。書店は2階建てで、閲読コーナーもあり、カフェやレストラン(夜間はバー)、も併設されています。珍しい書籍や日本の陶器、オリジナルの雑貨も展示販売されており、ゆったりと心地よく過ごせる空間になっています。
蔦屋書店 上海店データ
中国語表記:茑屋书店
住所:上海市長寧区延安西路1262号 上生新所内
電話番号:021-60193126
営業時間:10:00-22:30
アクセス:地下鉄11号線「交通大学」駅6番出口下車徒歩17分
※要予約 チャットアプリwechat「茑屋书店」公式ページより予約
築89年にして初の一般公開!名建築家が手掛けた「孫科邸」
「孫科邸」は1931年築。「コロンビア・カントリー・クラブ」に隣接する場所に建っています。先にご紹介した蔦屋書店上海店からは徒歩数分の距離です。
孫科?と聞いても多くの方はピンとこないかもしれません。孫科は中国革命の父と呼ばれる孫文の長男です。孫科がこの邸宅を上海の住まいとして所有していた時期、彼は中華民国の行政委員長を務めていました。
実はこの邸宅は元々、上海旧租界時代を代表する外国人建築家・ヒューデックが自宅用に設計した邸宅だったのですが、建築家が手掛けるプロジェクトでトラブルが発生し、ヒューデックは孫科に調整を依頼、見事解決した感謝の意味を込めて孫科に安価で売却したというエピソードがあります。
孫科邸は1950年代「コロンビア・カントリー・クラブ」に立地していた研究所の事務所として使用されていました。2018年に「上生新所」としてリニューアルオープンした際は孫科邸は非公開。2020年末に一般公開の運びとなりました。
邸宅内はコロンビア・カントリー・クラブから研究所を経て、上生新所としてリニューアルオープンするまでの建築の歴史や修復の様子、一帯の歴史などを紹介する展示「理想之地ー上生・新所 都市更新と歴史文献展」が開催されています(会期は2021年3月14日まで)。
今回公開されたのは1階のみ。邸宅内は陽光差し込む明るい空間でした。孫科の邸宅として使用されるよりも、65年間に渡り研究所の事務所として使用されていた時期の方が圧倒的に長かったせいか、孫科の当時の生活を偲ばせる家具や調度品の展示はありませんでした。フローリング、脊柱、暖炉、天井の細工に至る細部まで修復・リフォームが施されています。
<一帯の歴史を紹介する展示>
<建物の修復状況を紹介する展示>
上海に残る民国時代の邸宅は、1階は主に大広間として客人の接待の場、2階以上が主や家族のプライベート居住スペースでした。この場所にはかつてどんな歴史上の偉人が訪れたかと想像が膨らみました。
<モザイクタイルタイルや人造大理石の修復の流れの模型>
<アーチと床の意匠が美しい一階テラス>
<広大な庭。かつては一部中国式庭園の池などがあったそうですが、現在は一面芝生に整備されています>
<庭から見た孫科邸。玄関からの写真同様、アングルに収まりきらない規模の建物です>
民国時代に強大な権力を奮った主の邸宅、名建築家の設計ということで美しさもさることながら、その迫力に圧倒されつつ見学を終了しました。
2018年のリニューアルオープンの際に大きな話題となり、また蔦屋書店の出店や孫科邸の一般公開により、今大きな注目を集めている「上生新所」。上海ではこのところ歴史的建築のリノベーション開発がトレンドになっており、また昨年から上海の古い建築の再開発計画が進行していることから、今後もリノベーションスポットの増加が見込まれます。古くて新しい歴史的建築リノベーションスポットをあなたも訪ねてみませんか。きっと新しい発見があることと思います。
孫科邸データ
中国語表記:孙科别墅
住所:上海市長寧区番禺路60号
電話番号:18016010392
アクセス:地下鉄11号線「交通大学」駅6番出口下車徒歩17分
予約方法:チャットアプリwechatミニプログラム「上生新所ColumbiaCircle」公式ページより展示会「理想之地」を予約することで邸宅内見学可能
入場料:30元(480円)
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