ウィーン最大のマーケット「ナッシュマルクト」を食べ歩く

ヨーロッパの街歩きの楽しみの一つが、地元のマーケット。「ウィーンの胃袋」と称されるウィーン最大のマーケット「ナッシュマルクト」は、観光客だけでなく、地元民にも大人気のグルメスポットです。

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<ナッシュマルクトの店先に並ぶ季節の食材>

600メートルの長さ、4.2ヘクタールの長細い広場に、200軒近くものお店や飲食店が建ち並ぶ「ナッシュマルクト」では、世界中の食べ物が集い、時代も国も飛び越えた別世界感覚を気軽に味わうことができます。

目次

ナッシュマルクトの歴史

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<現在のナッシュマルクト近くに建つ、分離派会館「セセシオン」>

ウィーン旧市街の南側、現在のカールス広場の辺りには、18世紀前半からアッシェンマルクト(Aschenmarkt)と呼ばれる牛乳市場が立っていました。この名の由来は、トネリコでできた牛乳の容器を意味したアッシェ(Asche)という説が有力ですが、元「灰(Asche)捨て場」に作られた市場だったからという説もあります。

18世紀後半になり、町の人口が増えるにつれ、品目別に開かれていた市が二か所にまとめられ、水路で到着したものはドナウ運河沿い、陸路で到着したものはウィーンの南側のアッシェンマルクトで売られるようになりました。

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<現在のナッシュマルクト。地下にはウィーン川が流れている>

19世紀末に行われたこの地域の再開発に伴い、この市場は徐々に移動が始まります。この辺りに流れているウィーン川という川を暗渠にし、上に蓋をして、その上に現在の市場が作られました。

この移動に伴い、新しい市場の名は、「アッシェンマルクト」から「ナッシュマルクト」に正式に改められました。これは、ドイツ語の「ナッシェン」(甘いものや美味しいものをつまみ食いすること)と市場を意味する「マルクト」を合わせた言葉で、まさに食材の集うウィーン最大の市にふさわしい名前です。こうして、1915年頃には移動が完了し、今の場所に新生「ナッシュマルクト」が誕生しました。

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<レトロな外観のカフェの建物>

現在のナッシュマルクトの建物は、この19世紀末から20世紀初頭のユーゲントシュティル(アールヌーボー)様式なので、レトロな雰囲気になっています。2010年には、水道や電気などのインフラが再整備されましたが、史跡指定されている外観は以前のままとなっています。

ナッシュマルクトの楽しみ方

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<エキゾチックでカラフルな食材が並ぶ屋台>

ナッシュマルクトは、世界の縮図です。オーストリア料理に欠かせない肉や季節の野菜が並んでいるかと思えば、南欧らしいオリーブやチーズ類、中東のナッツや甘味、アジアのスパイスや穀物類など、世界中の国々から集まった食材が並んでいます。

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<テラス席が並ぶ、朝のナッシュマルクト>

元々は食材のみを売る市場だったナッシュマルクトも、時代の流れに合わせて少しずつスタイルを変えつつあります。現在では、敷地の三分の一がレストランや飲食店となり、市場で売られている食材をその場で美味しくいただくことができるようになっています。また、ワインやチョコレート、手作り石鹸など、お土産にぴったりなものも売られています。

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<ナッシュマルクト最古のレストラン、ツァ・アイゼナー・ツァイト>

ナッシュマルクト建設当時からある最古のレストラン「ツァ・アイゼナー・ツァイト(Zur Eiserner Zeit)」は伝統的なウィーン料理のお店ですが、他にも様々な飲食店や屋台が並び、中東料理、イタリア料理やギリシャ料理、中華料理やインド料理など、世界中の味を楽しむことができます。

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<中東料理ファラフェル>

ここでテイクアウトの飲食店を営む中東料理店のオーナーは「私の祖国と隣の店のオーナーの祖国は戦争をしているが、ここでは同じ立場で、仲よくお隣さんをやっているよ」と言っていました。食文化だけではなく、働いている人やお客さんなども含めた、世界の縮図です。

また、土曜日午前中には、蚤の市も開かれていて、掘り出し物を探す人たちでにぎわいます。こちらは誰でも使用料を支払えば店を出すことができ、アンティークからガラクタまで、ちょっと変わったショッピングが楽しめます。

まとめ

オーストリアの季節の味や、世界中の食材が手に入るだけではなく、レストランでその場で本場の味を楽しめてしまう世界の縮図、ナッシュマルクト。その建物は100年以上前の風格を残しつつ、お店やレストランは時代と共に移り変わり、時代を超えて多くの人を惹きつけます。

海外旅行に行けなくても、世界中の味が気軽に楽しめるナッシュマルクトは、ウィーン人にとって、疑似世界旅行を楽しめる場所であり、ウィーンに住む外国人にとっては、懐かしい祖国の味を味わえる場所なのかもしれません。

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ひょろ

オーストリア、ウィーン在住。10年以上暮らしてもまだ新しい発見の連続のウィーンの魅力を、記事執筆、現地調査、ネットショップなどを通じてお届けしています。国際機関勤務を経て、バイリンガル育児の傍ら、ミュージカル観劇が趣味。

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