【たびこふれ美術館】第10話:フィレンツェで迫る!世界で一番有名なヌードの謎「ダビデ像」

こんにちは!

たびこふれ美術ライターのやすおです!

いよいよ第10話の大台(?)まできました「たびこふれ美術館」!ですが、今回のテーマは完璧な美であると共に、お茶の間でじっくり流れたらちょっと気まずい空気が漂うあの彫刻、「ダビデ像」に焦点を当ててみたいと思います!!

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でもみなさん

そもそも、この彫刻・・・

・・・

・・・

「なんで裸なんですか???」

って聞かれたらなんて答えますか?

「え・・・だって彫刻って裸が多いし・・・意味なんかないんじゃないの?」

って思いませんか?

確かに古代ギリシャの時代から、理想的な人間の姿を神聖視し、神様への捧げものとして盛んに彫刻が彫られてきた歴史があります。なので、いろんな彫刻が裸であることに特に不思議なことではないんです。

ただ!

実はこの「ダビデ像」は上記の理由とはまったく別の理由から素っ裸に彫られているんです。

今回はダビデの裸について探っていきたいと思います!

目次

そもそもダビデ像とは・・・

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ダビデ像はイタリアのフィレンツェの彫刻家ミケランジェロ・ボナロッティ(1475~1564)によって作られた大理石の彫刻です。

誰しもが一度は目にしたことのあるこの作品は、彼の26~29歳ころのものと言われており、初期の傑作のひとつに数えられています。

5.17mの見るからにその威風堂々としたいで立ちや、バランスの取れた完璧なスタイルはまさに「ルネッサ~ンス♪」!

赤裸々なその裸の像は西洋美術史の金字塔として何度となく美術の教科書に取り上げられてきました。

私のご案内するツアーでもよくこの彫刻のご案内をするのですが、以前一人の男性に先ほどの質問をしてみました。すると・・・

「う~~~ん・・・

わかった!この人、肩に何か持ってるやろ!?

あれはきっとタオルで、お風呂上りに『あ~~~いい湯やった~♡』と言ってるとこちゃうか!!

・・・

・・・

いや、んなアホな(;^_^A

しかし!

すばらしい!よくぞそこに気がづきました!

この像、実は何か持っているんです。

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そしてそこに気がづければ、あとは物語を知るだけです!

知られざるダビデの物語

このダビデの物語は旧約聖書の中にある「第一サムエル記」第17章に記されています。

紀元前10世紀ごろ、サウル率いるイスラエル王国は他民族であるペリシテ人との戦いを長く繰り返していました。

そしてある日、ペリシテ勢がまた攻めてきて谷を隔ててサウルの軍勢とにらみ合いになったとき、ペリシテの兵士、ゴリアテが言いました。

「おい、サウルの民よ!そろそろ決着をつけようぜ。俺と一騎打ちをして、負けた方が全軍いさぎよく兜を脱ぐんだ!!さぁ、誰か出てこい!!

それを聞いて、サウルの民は震え上がりました。実はこのゴリアテは身長が3mほどもあるような巨人と呼ばれるペリシテ最強の戦士だったのです!

サウル側はみんな怖気づいて誰一人進みだそうとしないその時に、従軍している兄たちに食料を届けに来たダビデがそれを見て、

「私が行きましょう」

といいます。

驚いたサウルでしたが、ダビデの勇気に感心し自分の武器や鎧を与えます。しかし、戦士でない彼はそれらを使いこなせません。そして

「私にはこんなもの必要ありません」

と言い、それらを脱ぎ去り素っ裸になってゴリアテのもとに行き、キッと睨みつけました。

するとゴリアテは裸の若者がヒョロヒョロと出てきたので大笑いをします。

「なんだお前は、そんな恰好で出てきて!殺されに来たのか?ちょうどいい、お前の肉を鳥や獣の餌にしてやろう!アッハッハッハ!」

・・・すると、そう言って大笑いしているゴリアテの隙をついて、ダビデは背中に隠し持っていた投石器に右手に持っていた石を入れ、ブンブン回してゴリアテめがけて投げました!!

その石はゴリアテの額に命中!!

そのまま勢いで後ろに倒れたところを飛び掛かって、ゴリアテの剣を引き抜き首をはねました!!

「取ったど~~~~~~~~~!!」

それを見ていたサウル勢はダビデの勇気に鼓舞され、一気にペリシテ軍に総攻撃をかけ、サウル軍の勝利となりました・・・とさ。

めでたしめでたし(まだまだ話は続くけど)

ダビデ像が裸の理由とは

どうしてダビデにそんなことが出来たかというと、彼は羊飼いの少年で、当時の羊飼いは羊を追い立てるときに投石機を使用していたらしく、ダビデはその名手だったとのことです。

さて、この話を知るとこの彫刻は見る方向が変わります。

この彫刻は正面から見るとただの裸・・・ただの裸に見えるように彫られているんです。

何か持っているのが知られると、

「おめぇ、何持ってんだ!!」

と、ゴリアテに警戒されるかもしれませんからね。

ですので、この彫刻を見るときには是非、ダビデのプリっぷりのおしりの方角から眺めてあげてください。そうするとちゃんと、肩から投石器を下げ、右手に石が握られているのがわかるんです!

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それを確認できれば、この像は「ただの裸」から「敵を油断させるための勇気ある裸」であることに気が付きます。

そしてその勇敢な裸の像は都市国家フィレンツェ共和国の市庁舎前に飾られ、周囲を取り囲む強大な対抗勢力に脅かされるようになってもこのダビデ像のように「フィレンツェよ、勇敢であれ」という解釈がされるようになりました。(この解釈は後付けなんだそうですが)

いろいろな芸術家が表現するダビデ

この勇敢な聖書の一節は、古くから多くの画家の題材となってきました。

ミケランジェロは戦いを挑む張りつめた緊張感を像にしましたが、多くの画家はダビデがゴリアテの首を斬った後を表現しています。

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<カラヴァッジョ作「ゴリアテの首を持つダビデ」(1609年 - 1610年)>

上の画像は私の愛するカラヴァッジョ先生の作品です。

ダビデがゴリアテの首を落とし、影のかかった顔でそれを眺める構図。そしてゴリアテは額に石をぶつけられた傷をつけ、絶命の表情・・・ミケランジェロとは違った迫力がありますよね。

でも、みなさん思いませんか?

・・・

「服着てんじゃねぇか!!」と。

実は聖書には「素っ裸になって」とは一言も書いていません。

ダビデはサウルの王から武器や鎧を授けられた時に、いりませんと言って「それらを脱ぎ去り」ゴリアテに向かいました。

恐らくミケランジェロはこの「それらを脱ぎ去り」を、「着用していた服もすべて脱ぎ去り」と解釈をして素晴らしい肉体美を表現したかったのではないでしょうか?とっても裸の好きな人でしたので(←性的な意味ではない。いや知らんけど)

しかし、カトリックの強い西ヨーロッパではなかなか赤裸々な裸を描くことは奨励されることではなかったので、他の画家たちは服を着ているようになっているのだと思います。

もう一枚ご紹介しますね。

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<グイド・レーニ作「ゴリアテの首を持つダビデ」>

このダビデはなぜか貴族風、ちょっと色っぽいですね。

一つの物語でもいろいろな表現があるところも、美術の面白いところですね☆

これからのダビデを見る目線

いかがでしたでしょうか?

「昔からずっと知っているあの作品にこんな意味があるんだ!」と思っていただければ幸いです。

本物のダビデ像はフィレンツェのアカデミア美術館内に所蔵されており、ツアーでは入っていないことも多いですが、ミケランジェロ広場・ヴェッキオ宮前にもレプリカが置かれているので、イタリア旅行中では必ず目にする作品です。

フィレンツェに行くときにはダビデを、プリっぷりのおしりの方向から眺めることをどうぞお忘れなく!

それぞれのご家庭でも、テレビにダビデ像が映ることがあれば、ご家族様に教えてあげてくださいね!

ダビデ像が裸である本当の意味を知って

・・・

お茶の間の気まずい空気を断ち切るのはあなたです!(笑)

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山上やすお

国内外の添乗員として1年の半分ほどを現地で過ごすかたわら、日本にいるときには各地で美術のカルチャー講師をしています。博物館学芸員資格保有。「旅に美術は欠かせない!」の信念のもと、美術の見方、楽しみ方を記事にしていきます。

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