ペルーのリトル・ガラパゴス、パラカスのバジェスタス諸島

ペルー・イカ州パラカスの沖に浮かぶIslas Ballestas(バジェスタス諸は、多種多様な海鳥や海洋生物が暮らす野生動物の楽園。首都リマからパラカスへはバスで3時間半、パラカスの港から2時間ほどのボートツアーが毎日催行というアクセスの良さから、国内外の観光客が年間を通じて訪れます。

あまりの手頃感から『貧乏人のガラパゴス』と揶揄する向きもありますが、賢明な皆様はぜひその『ガラパゴス』という部分にご注目!フンボルトペンギンやオタリア、ペリカンやさまざまな海鳥たちが、私たちに自然のままの姿を見せてくれます。『リトル・ガラパゴス』の名にふさわしい野生の王国、バジェスタス諸をご紹介しましょう。

目次

北・中央・南の3島からなるバジェスタス諸島

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パラカスのエル・チャコ港から北西へ約20kmの沖合に浮かぶバジェスタス諸。日本語では一般に『バジェスタス島』と紹介されるので島は1つだけと思いがちですが、北バジェスタス、中央バジェスタス、南バジェスタス島の3つの島で構成されています(だからスペイン語では「Islas Ballestas」と複数形になっているんですね)。

また『パラカス国立自然保護区に属する』と紹介しているウェブサイトがたくさんありますが、実際は自然保護区に含まれていません。バジェスタス諸は、ペルー沖に浮かぶ22の島嶼(とうしょ)と11の岬(または砂嘴/さし)を管轄するRNSIIPGによって管理されています。RNSIIPGは海洋沿岸生態系の生物学的多様性の保全と、そこに生息する種の生物学的サイクルの持続性を守るための国家組織です。

ボートツアーは基本的に1日2回

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早速ツアーに参加しましょう。ツアーボートはパラカスのエル・チャコ港にある桟橋から出発します。出発時間は毎日朝8時と10時の2回。それ以降も観光客が40~45人集まれば臨時ボートが出航するそうですが、どれくらい待たされるか分からない上に、実施されるかどうかも確実ではありません。

また逆にどんなに希望者が多くても、最終出港時間は午後1時までと決められているそうです。滞在時間を有効活用するためにも、観光客は8時か10時のツアーどちらかへの参加を予定しておいたほうがいいでしょう。

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ボートの上は想像以上に風が強いので、帽子が飛ばされないよう十分注意してください。この写真の少年のように、帽子の上からストレッチタイプのネックウォーマーやヘアバンドで押さえておくと安心ですね。紫外線が強いので、サングラスも必須です。

また沖にはフンボルト海流(ペルー海流)という寒流が流れているため、晴れていても気温は低め。そのうえ航行中は向かい風が凄いので、疲れや船酔いを防ぐ意味から、夏でもウィンドブレーカーは必需品です。

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港を出航してから12~13分で、「Candelabro(カンデラブロ/枝付きの燭台)」が見えてきました。"航行の目印として描かれたもの"や"海賊が宝の在処を示したもの"などさまざまな説がありますが、現在ではおよそ2500年前に描かれたものということが分かっています。

長辺約170m、線の深さ約1.2mというこの巨大な絵は、ペルー初の文化的景観として2016年12月29日にペルーの文化遺産に指定されました。

オタリアの咆哮(ほうこう)や海鳥たちの鳴き声が圧巻!

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バジェスタス諸が近づくにつれ、海鳥たちの鳴き声が賑やかに聞こえてきました。最初に見たのは、黄色とオレンジ色のくちばしとその下の青みがかった袋が特徴の「Pelícano peruano(ペルーペリカン)」と、真っ白な頭が目印の「Piquero peruano(ペルーカツオドリ)」です。どちらもペルーの固有種で、ペルーの絶滅危惧種公式リストに登録されています。

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フンボルト海流が流れるチリからペルーにかけて生息している、カモメ科の「Gaviotín zarcillo(インカアジサシ)」。写真ではちょっと分かりにくいですが、赤みがかったオレンジ色のくちばしと足、頬にある白と黄色の線が特徴です。また岩場の波打ち際には、赤いカニがいっぱいいました。

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グアノ採掘船がグアノの積み下ろしに利用している桟橋が見えてきました。ケチュア語で「鳥の糞」を意味するグアノは、海鳥の糞が堆積・石化したものです。グアノは窒素やリンを豊富に含む天然肥料で、海鳥の生息域であるバジェスタス諸島や、同じくイカ州ピスコ沖に浮かぶチンチャ諸島に多く堆積しています。

19世紀半ばのペルーに経済的繁栄をもたらしたグアノは、無計画な採掘により1870年代には一度枯渇してしまったそう。しかし海鳥たちさえ生息していれば、その落とし物であるグアノは自然に溜まっていきます。現在はRNSIIPGの下、国の認可を受けた企業が野生動物たちの生態を守りつつグアノを採掘、資源の持続可能な利用を目指しています。

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一番人気の「Pingüino de Humboldt(フンボルトペンギン)」、文句なくかわいいですよね!動物園など人工飼育では25年ほど生きるというフンボルトペンギンですが、野生の場合その寿命は12~15年だそう。フンボルトペンギンは、グアノ採掘による産卵地の破壊や、餌となるカタクチイワシの乱獲及び気候変動による減少で個体数が激減、ペルーの絶滅危惧種公式リストに登録されています。

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バジェスタス島名物「Otaria Flavescens(オタリア/以前はOtaria Byroniaとも呼ばれていました)」のコロニー(集団繁殖地)にやってきました。「ウォーッ!ウォーッ!」という咆哮(ほうこう)が幾重にも重なって聞こえてきます。

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真っ黒でつやつやした赤ちゃんオタリアがいっぱい!お母さんオタリアのそばにぴったり寄り添っています。バジェスタス諸島にはオタリアと、峻険(しゅんけん)な岩場を好む「Arctocephalus australis(ミナミアメリカオットセイ)」の2種類のアシカ科動物がいます。

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この無防備な姿をご覧あれ!見ているほうも思わずなごみますね。RNSIIPGと、その上位組織である国家自然保護区管理事務局SERNANPによって管理・保護されているバジェスタス諸島は、海洋動物たちが安心して暮らせる数少ない聖域です。

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ツアーボートの基本コースは、3つ寄り添うように並ぶバジェスタス諸島の右側を反時計回りに進むというもの。前述の「カンデラブロ」も往路は左手に見えるため、一般にボートの座席は左側がよいといわれています。とはいえ右側のお客さんもしっかり楽しめるよう、ボートをこまめに反転させる上、ミナミアメリカオットセイが好む岩場は進行方向の右手に多く現れます。

どちら側に座っても動物たちをちゃんと見学できるので、その点はあまり心配しなくてもいいかもしれません。ただ復路はボートのスピードが上がるため、後部座席は水しぶきの犠牲になる可能性大!カメラや携帯電話が濡れないよう、十分お気を付けくださいね。

パラカスでお世話になったツアー会社の紹介

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小さな町に無数の旅行代理店が並ぶパラカス。ちょっと散歩するだけで、客引きがあちこちから声をかけてきます。そんな中で今回お世話になったのは、「Vive Perú Tours(ビベ・ペルー・ツアーズ)」。経験豊富なオーナーのビクトルさんが、気さくに対応してくれました。

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スタッフのみなさんもとても親切。スペイン語と英語の両方が通じるので、とても助かります。ビベ・ペルー・ツアーズではバジェスタス島ツアーのほか、パラカス国立自然保護区ツアーやイカ市内観光ツアー、ナスカ市内ツアーとナスカの地上絵見学フライト、サンドバギーやサンドボード、四輪バギーのような砂漠でのスポーツツアーなど幅広く取り扱っています。

またパラカス自然保護区をツアーではなく個人で回りたい人には、車の手配もしてくれます。

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「パラカスへ来たらぜひうちへ!」とビクトルさん。値段も良心的で安心です。パラカスでのアクテビティを検討している方は、ぜひ問い合わせてみてくださいね。

バジェスタス島ツアーの詳細

■Paracas/パラカス
リマ市内からバスで南へ3時間30分ほど。

■Vive Perú Tours/ビベ・ペルー・ツアーズ
住所:Av. Paracas Mz. D Lt. 10, Paracas
電話:+51 (056) 536706
HP:www.viveperutours.com

■Tour Islas Ballestas/バジェスタス島ツアー
出発時間:8:00と10:00の1日2回
料金:35ソレス(=1,090円)~※季節・参加人数によって多少変動あり
※バジェスタス入島料11ソレス(=340円)と港湾使用料5(=160円)ソレスは別途支払
※パラカス国立自然保護区入場料(11ソレス=340円)とセットになったお得なチケット(17ソレス=530円)もあり。

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原田慶子

ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。

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