ジャズから派生するニューオリンズ・スタイルの音楽とは?

前編「ジャズ生誕の地ニューオリンズへ音楽ふらり旅」で綴ったのが、ニューオリンズで起きたジャズ生誕の歴史。

西アフリカから黒人奴隷と共に辿り着いたその原点からジャズは誕生し、ニューオリンズ・スタイルの音楽はジャズ、ファンク、リズム&ブルース、ケジャン、ザディコ、スワンプ・ポップ、ロック、ストリートミュージックなどのバラエティに富み、ブラックミュージックの始点でもある。

黒人奴隷として連れてこられた彼らの祖先のルーツによって築かれた音楽遺産は、後にアメリカのポピュラー音楽の成長に大きく影響を与えてきた。

ネイティブ・アメリカン、ブリティッシュ、フレンチ、スパニッシュ、カリビアン、アフリカンと多様な人種が集結した土地だからこそ、様々な文化や伝統が融合せざるを得ない環境だったのだろう。これらによって派生したニューオリンズの音楽は、まさにこの土地ならではの化学反応が起きたことを物語っている。

目次

ハイブリッドなニューオリンズ・ファンクの始まり"セカンドライン"

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<photo by [Derek Bridges]

ニューオリンズ・スタイルの音楽として欠かせない"セカンドライン"と呼ばれるブラスバンドのパレードは、ジャズ・フュネラルというニューオリンズ特有の伝統的な葬儀のパレードから始まった。

ジャズ・フュネラルは、ファースト・ラインとして先頭に故人の遺族や関係者が行進し、それに続いてセカンド・ラインとしてブラスバンドが演奏しながら参列する。さらに野次馬も空き缶や太鼓を叩いて音を出したり、踊ったりして参加していき、人々の列が音の波を作り出すお祭りとも言える儀式だ。これらは、黒人インディアン(混血)が広めた儀式音楽のビートがルーツとなっていると言われている。

伝統的な葬式形態から始まったブラスバンドの行進は、現在ではパレードの一環として浸透し、ジャズフェスティバルや、毎週日曜に開催されているローカルのパレードでも目にする事ができる。

この伝統的な儀式は、ファンキーでハイブリッドなニューオリンズ・ファンクのグルーヴへ発展し、独自のスタイルが生み出された。ニューオリンズのファンクサウンドを生み出した第一人者的な存在であるバンドThe Metersは、ヒップホップの世界でも数々のアーティストにサンプリングされ、ニューオリンズのグルーヴを全世界に広めた。太いベース、タイトなドラム、彼らの音楽の原点はニューオリンズ特有のこの伝統的な儀式と密接な関係にあるのだ。

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<photo by [Derek Bridges]

ニューオリンズならではのブルース・スタイル

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ブルースはアメリカ南部ミシシッピ州発祥、アフリカのリズム、黒人スピリット、教会音楽が起点だと言われる。ただ個人的な意見として、数々のニューオリンズのアーティストはファンク、ブルース、カリビアン音楽などを含めた多様なジャンルの音楽要素を織り交ぜ、遊び心満載でユニークなのがとても印象的である。

その中でもProfessor Longhairはニューオリンズ・ブルースを代表するシンガー、ピアニスト。彼のスタイルはルンバ、マンボ、カリプソなどの要素を取り入れたニューオリンズ・ブルースの元祖と呼ばれ、Dr. John、Fats DominoやAllen Toussaint などの地元の他のアーティスト達にも影響を与えた。

Professor Longhairが原点として音楽活動をしていたライブハウスTipitinas は、必見ナイトスポットの一つであるので是非訪れたい。そしてProfessor Longhairの自宅も博物館として一般に公開さている。

Tipitinas

The Professor Longhair Museum

  • 住所:1738-40 Terpsichore St, New Orleans, LA 70113

マルディグラ・インディアンの不思議なヴィジュアルとサウンド

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<photo by [Derek Bridges]

ニューオリンズでは、毎年2月にマルディグラというカトリックの年中行事に由来する大きなお祭りが開催される。

歴史上、このマルディグラには黒人が参加することは歓迎されていなかったらしい。そこで、黒人達が住むコミュニティでは、カラフルな羽根やビーズを全身にあしらった派手な衣装に身を包み、独自にマルディグラを祝福するようになった。彼らはマルディグラ・インディアンと呼ばれている。

なぜこのような衣装なのか。マルディグラ・インディアンという名の通り、黒人とネイティブ・アメリカンとの交流に関係がある。

御存知の通り、黒人は奴隷としてアメリカに連れてこられ、ひどい人種差別を受けていた。その中には雇い主から脱走したものも多く、脱走した先でネイティブ・アメリカンが脱走奴隷をかくまっていたという。この黒人とネイティブ・アメリカンの交流が源となり、恩人であるネイティブ・アメリカンへの感謝の気持から、羽根やビーズなどで身を飾るようになったという。

1954年、James "Sugar Boy" Crawfordが「Jock-A-Mo」という曲をリリースした。この曲はマルディグラ・インディアンを題材にしており、今年6月に亡くなったニューオリンズを代表するアーティストDr. JohnやThe Dixie Cupsなどにより「Iko Iko」という名でカバーされ、世界的にヒットした。日本でもCMに使われているので、聞いたことがある人も多いだろう。このメロディーやリズムは、ニューオリンズ音楽にスパイスを加える様な不思議なサウンドなのだ。

マルディグラ・インディアンの多くは、セント・ジョセフズ・デー(6月24日)に最も近い日曜日に、歌い、踊り、太鼓を叩きながらパレードをする。

この時期ではなくても、これらの背景や、華やかなコスチュームなどを見られるミュージアムを訪れてみても面白いのではないだろうか。

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<photo by [erica frank]>

Mardi Gras Museum of Costumes and Culture

まとめ

ニューオリンズのローカルは、決して華やかでリッチな街の雰囲気ではない。

ただこの土地の音楽はもちろん、食、宗教、アートなどのさまざまなものから多彩なニューオリンズの歴史を垣間見ることができる。

まさに郷土料理(ソウルフード)であるガンボの様にごちゃ混ぜに色んな素材がミックスされているのに、上手く調和されている感覚はアメリカの他の都市では味わえないだろう。

マルディグラ、ジャズフェスティバルのシーズンは当然ながら、この街では日常的に地元の人々が文化遺産、歴史、伝統を祝福しているため、いつでもニューオリンズの文化を楽しむことができる。

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