ジャズ生誕の地ニューオリンズへ音楽ふらり旅

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<Photo by Robson Hatsukami Morgan on Unsplash>

街中のあちらこちらからジャジーな音が鳴り止まない、アメリカ南部ルイジアナ州ニューオリンズ。

この町全体が何か歴史博物館の様な情緒深さを醸し出している。アメリカ国内の他の都市に比べても独特で「アメリカっぽくない」雰囲気が漂う都市である。

その理由にアフリカ、カリブ、スペイン、フランスと多様な文化の混合により形成されたニューオリンズの生い立ちが深く関係する。1718年、植民地時代にフランスによって開拓され、ニューオリンズ中心部のフレンチクオーターには、現在でもフランス領帝国時代の風情が残っている。1793年にパリ条約により一時スペイン領となるが、フランス系住民が町には多く、ほとんどスペインの影響は見られなかった。1803年にアメリカへと売却され、その頃カリブ海のフランス領ハイチでの黒人革命が起こり、さらにフランス人やクレオール(フランス人と奴隷の混血の人々)が流入した。

そしてこの都市が起源だと言われ続けるジャズが生誕したのも、これらの歴史から始まったのだ。

目次

ジャズの聖地と語り継がれるコンゴ・スクエア

フレンチクオーターから北のルイ・アームストロング公園内に位置し、ジャズという音楽を型取った歴史を数々拝見する事が出来る。Congo Squareと呼ばれるこの聖地は、17世紀後半から18世紀にかけて、アフリカ系奴隷たち青空市場を開催し、アフリカやカリブの音楽を歌い、踊り、太鼓を叩き、社交場として機能していた。奴隷制度の厳しい取締りの中、当時の彼らが自由に解放されたのは毎週日曜のコンゴ・スクエアのみだったと言われている。

南北戦争を経て、有色クレオール人(黒人とフランス人やスペイン人との混血)たちがここでブラスバンドのコンサートを開催するようになった事から"ジャズの発祥の地"と呼ばれるようになった。ここでの自由解放は、我々の想像を遥かに越えるスピリチュアルなものだったのであろう。彼らのルーツ、西アフリカ起源の土臭いグルーヴはここで繰り広げられ、のちにジャズを始めニューオリンズ・スタイル音楽の基盤となっていったのだ。

その他にもジャズの育成に影響を与えたLouis Arms StrongやBuddy Boldenなどのレジェンドが、このルイ・アームストロング公園内で讃えられている。

キング・オブ・ジャズ:Buddy Bolden

"jass"という語源からJazzという音楽ジャンルとなった初期のニューオリンズ・スタイルrag-timeエラに、最も影響を与えたコルネット演奏者、バンドリーダー。

彼は道端で拾ったコルネットがキッカケで、楽譜が読めなかったにも関わらず見様見真似のアドリブから演奏を始めたそうだ。その後、ダンスホールからストリートパレードまで彼の黒人ブルース・スタイルと即興性のあるスキルで独自のスタイルを貫いた。

Boldenが最初にジャズを演奏したとされるのが1891年。黒人が音楽家として名を残すまで、1863年の奴隷解放から30年近くが必要だったという。彼のライフストーリーを物語る映画「Bolden」でも述べられたように、当時のBoldenの作品音源はほとんど残されていない。悲惨な時代の背景と共に、未だに謎めいた伝説を切り刻んだアーティストである。

Louis Armstrong Park

  • 住所:835 N. Rampart St., New Orleans, LA 70116

ストリートミュージックとニューオリンズ・ブラスバンド

街中に音楽が溢れているのが日常茶飯事な理由に、ニューオリンズ独自のストリートミュージックが健在していることが伺える。The Rebirth Brass Band、Dirty Dozen Brass Band、Louis Arm Strongなどニューオリンズ出身の多数のミュージシャン達は、路上パフォーマンスでの経歴を辿って来ている。むしろ路上での演奏にて"オーディエンスを沸かす"という観客一体型の親近感こそが、まさにこの町の醍醐味なんではないだろうか。ふらっと歩くだけでも道端で演奏する人々を度々見かけ、日常生活と音の波は一体化しているのだ。

New Orleans Jazz Museum

  • 住所:400 Esplanade Ave, New Orleans, LA 70116

そしてストリートミュージック文化に重要なのが、ブラスバンド。主に金管楽器トランペット、サックソフォーン、トローンボーン、打楽器バスドラム、スネアドラムとベースラインを演奏するスーザフォンによるものが伝統的な編成とされている。

お祭りやウエディング、葬式の形式としてもブラスバンドは現地の人たちの生活には欠かせない。 これらの高価なはずの楽器は、南北戦争後に南軍の軍楽隊のものが流通された為、貧困なアフリカ系アメリカ人が安価で手に入れる事が出来たそうだ。ジャズで使われる楽器がピアノやドラム、トランペットやサックソフォーンなのも、軍隊のマーチングなどに使われていたものからの使い回しだったと言われている。

まとめ

こういったルーツを探索することにより、ジャズという音楽はとても身近な音楽である事を感じられる。きっと"堅苦しい大人が聴く音楽"という我々の固定概念を変えてくれるのではないだろうか。そして次回は、ジャズから派生した様々なニューオリンズ・スタイルの音楽について綴ってみようと思う。

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