カーマニア垂涎の的!南米最大のコレクションを誇るペルー「ニコリーニ自動車博物館」

高級住宅街として知られるリマ市ラ・モリーナ区。商業地区ではないため観光客にはあまり馴染みのないエリアですが、ここには車好きな方にぜひ足を運んで頂きたい私立博物館があるんです。「Museo de Autos Nicolini(ニコリーニ自動車博物館)」は、ホルヘ・ニコリーニさん所有の約130台におよぶクラシックカーが展示されている南米最大のカーミュージアム。世界にたった1台しかないという貴重なコレクション3台を含む、優雅で洗練されたオールドカーを見学することができるんです。

目次

リマ市ラ・モリーナ区にある私立自動車博物館

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リマの中心部から車で約40分。高級住宅街を抜け、ラ・モリーナ通りを東へ延々と進むと、右手に"Museo de Autos Nicolini"の看板が見えてきます2002年7月24日にオープンしたこの博物館は、敷地面積約6,200平米。中に入って左手に展示室、右手に修理工場、奥にはカフェがあります。

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レンガ造りの展示室には、ピカピカに磨き上げられたクラシックカーがずらり!各自動車の正面には、その車種や製造年、排気量や簡単なエピソードを記した英語とスペイン語の解説パネルが設置されています。

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博物館の壁には、古き良き時代を彷彿させるセピア色の写真がいくつも飾られていました。中にはカラー写真もあり、そこにはにっこり微笑む白髪の男性が写っています。彼がホルヘ・ニコリーニさん、この博物館のオーナーです。

57年かけて集めたコレクションは圧巻!

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「ようこそ、ニコリーニ自動車博物館へ」と声をかけてくれたホルヘさんは、御年75歳。18歳で人生最初の1台を手に入れて以来、57年間にわたってコレクションを増やし続けてきました。国内をはじめ南米各地で開催されるクラシックカーレースにもたびたび参戦しているホルヘさん、そのレースや表彰式の様子を伝える写真もたくさんありました。そんな彼の一番のお気に入りは、この真っ赤な1935年型 Auburn Speedster 851 SC。オーバーンは20世紀初頭のアメリカを代表する高級自動車メーカーです。

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「この美しいボディを見てください。この時代に8気筒ですよ。後ろ姿もなんとも言えず優雅でしょう」とまるで愛しい恋人を紹介するような口調で話してくれました。

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こちらがニコリーニ・コレクションの第一号である、1925年型 Lincoln Model L Phaeton by Brunn。1960年代にリマでタクシーとして利用されていたというこのリンカーンとの出会いが、ホルヘさんの運命を大きく変えました。

「クラシックカーといえば今はとても高価だけど、当時はとても安かったんですよ。しかも新しいモデルが次々登場する時代だったから、みんな古い車を処分して新しいものを買いたがっていたしね。だから金持ちの車庫で眠っている古い車を安く買い受け、少しずつ修理しては大切に保管していたんです」とホルヘさん。
彼のような人物がいたからこそ、これらの貴重な自動車がスクラップにならずに済んだんですね。

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この博物館で一番古い車は、1901年型 Boyer Voiturette。フランスで生産された自動車の中でも最も初期のタイプで、マグネトー式点火措置がついています。排気量402ccで最高時速25km。華奢なボディがなんだかおもちゃのようですね。ニコリーニ・コレクションのすごいところは、すべての車がナンバープレートを取得している点。すなわち公道を走れるということです(車体保護のため、一部の車には敢えてプレートを取り付けていないそうです)。

今も週に1度、1時間ほどかけてこれらの車を順番に走らせているそう。コレクションを骨董品扱いするのではなく、いつでも走れるよう最高の状態に保っておく。ホルヘさんのクラシックカーへの愛をひしひしと感じます。

ペルー歴代大統領や明仁皇太子(当時)を載せた車も

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ニコリーニコレクションの中には歴史的な車もたくさんあります。1928年型 Stutz BB Sedan Convertible Victoriaは、リマ初の女性市長アナ・マリア・フェルナンディーニ女史が使っていたもの。米スタッツ社の技術をベースに、フランスでボディをデザインし、イギリスで組み立てたそうです。当時の自動車テクノロジーの粋を集めた、世界で唯一のオリジナルカーです。

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1953年型Cadillac Fleetwood Series 75 は、マヌエル・オドリア、マヌエル・プラド・イ・ウガルテチェ、フェルナンド・ベラウンデ・テリー、フアン・ベラスコ・アルバラードといった歴代ペルー大統領の公用車。1967年に国際親善のためペルーを訪れた明仁皇太子殿下(当時)と美智子妃殿下(当時)も、このキャデラックに乗ってリマの街を凱旋されたそうですよ。

ところで、「一個人がこれほどの自動車をどうやって手に入れたのだろう?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか?

1950~60年代半のペルーは、アメリカ資本の投資拡大と鉱物や水産資源の輸出による好景気に沸いていました。国内経済を牛耳っていた大富豪たちが競い合うように外車を買い求めたこともあり、当時のペルーは世界15ブランドの自動車が輸入されていた南米唯一の国だったそうです。一家に高級車が数十台あることも珍しくなかったと言いますから、大したものですね。

ところが、1968年の軍事政権誕生と同時に高級車の輸入は完全にストップ。農地改革で富の分散を余儀なくされた富裕層の中には、車庫を埋め尽くす自動車を持て余す人が出てきました。世代交代で親の車を処分したいという人たちの車や故障車など、埃をかぶったまま放置されていた自動車を1台ずつ譲り受け、丁寧に修理してきたのがホルヘさんだったのです。ニコリーニ・コレクションの約97%はペルー国内で入手されたもの。こうした時代背景が一個人による収集を可能たらしめたと言えるでしょう。

レストア工場も見学できる

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次は工場を見学。入口にはボロボロの1963年型 MAZDA R360 coupeが鎮座していました。こんな状態からどうやって修復するのだろうとお思いの方、ご安心を!先ほどの展示室には、この4月にレストアを終えたばかりという色違いのR360 coupeが展示されていますよ。

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ご覧ください、この見事なレストア技術!エンブレムやバンパーもすべてこの工場で復元したそうです。

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この博物館では、ガイドや修理工など10人のスタッフが働いています。自動車のパーツやアクセサリーは、メーカーから取り寄せたり世界中のコレクターから譲り受けたりしていますが、どうしても入手できないものは一から手作りしなければなりません。そのため、使えそうな素材が市場に出回ったらすぐ手配して、工場の2階にある倉庫に保管しておくそうです。

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1台のレストアには短いもので8か月、長いものだと2年ほどかかるそう。時間や手間を惜しまず、在りし日の最も美しかった姿に戻す。オーナーのホルヘさんが純粋なコレクターだからこそできることですね。ニコリーニ自動車博物館の修復技術は、各自動車メーカーのお墨付き。アウディーやフィアット、フォードといった名だたるメーカーから、いくつもの認定書を贈られているそうです。

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このニコリーニ・カーミュージアムでは、すべてのコレクションを一冊にまとめたカタログを販売しています。カラー180ページでお値段はUS$40(またはS/130)、スペイン語だけなのが残念ですが、車の外観だけでなく、インテリアやエンジンなど細部まで丁寧に紹介されており、クラシックカーファンなら見るだけでも十分楽しめるようになっています。

日本の方にはまだほとんど知られていない、リマのニコリーニ自動車博物館。旧車ファンもそうでない方も、貴重なコレクションが勢ぞろいするこの自動車博物館をお見逃しなく!

Museo de Autos Nicolini(ニコリーニ自動車博物館)

  • 住所:Av. La Molina, cdra. 37 Urb. Sol de La Molina, La Molina
  • 電話: (01) 368-0373
  • 開館時間:9:30~19:00(無休)
  • 入場料:20ソレス(ガイド料込み)
  • URLhttp://www.museodeautosnicolini.com

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原田慶子

ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。

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