【オランダ】15世紀の教会で鑑賞する『世界報道写真展2019』

アムステルダムの中心地、ダム広場にある新教会(Nieuwe Kerk)は、1980年より展覧会・イベント会場として使用されています。15世紀に建造された由緒ある教会の中で、アート展やコンサートなど、多様なジャンルのイベントを楽しめます。

目次

時流に合わせて再生するオランダの教会

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オランダでは近年、利用されなくなったり、閉鎖の危機にさらされている教会の再利用が進められています。オフィスや住宅、書店、カフェ、スーパーマーケットなど、各地の教会が様々に転身を遂げるなか、アムステルダムの中心に建つ新教会(Nieuwe Kerk)もまた、1980年より展覧会・イベント会場に生まれ変わりました。

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<1898年9月6日に新教会で行われたウィルヘルミナ女王の即位式>

15世紀初頭に建造された新教会は、ゴシック様式の荘厳な建物で、代々のオランダ国王・女王の即位式が行われてきた由緒正しき教会です。

19、20世紀に高額な修復工事が続いて教会の運営が困難になったことから、1980年に教会の所有権が文化財団に移され、展覧会・イベント会場になりました。ただし再利用とはいえ、教会建築やインテリアはそのままの姿で保存されています。15世紀の神聖さは守られ、静謐な空気に包まれて展覧会を鑑賞できます。

2019年4月13日から7月7日まで開催された『世界報道写真展(World Press Photo Exhibition)』の様子と、新教会の見どころをご紹介します。

15世紀の聖堂×現代を映す報道写真

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『世界報道写真展』は、世界報道写真財団(World Press Photo)が開催する『世界報道写真コンテスト』の受賞作を紹介する展覧会です。1955年にアムステルダムで世界報道写真財団が発足して以来毎年開催され、アムステルダムの新教会を皮切りに世界約100会場を巡ります。

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第62回目を迎えた2019年は129の国と地域から4,738人の写真家が参加し、78,801点の応募がありました。

その中から世界報道写真大賞を受賞したのは、ジョン・ムーア(John Moore)の「国境で泣く少女(Crying Girl on the Border)」です。メキシコとアメリカの国境で、母親の取り調べ中に泣き叫ぶホンジュラスの少女の姿を捉え、ドナルド・トランプの移民政策の現実を伝えています。

展覧会では「現代社会の問題」「一般ニュース」「長期取材」「自然」「環境」「スポーツ」「スポットニュース」「ポートレート」の全8部門、25か国43人の受賞者の作品が展示されました。

展覧会場そのものが芸術作品

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<教会堂内観。説教壇は17世紀に作られたものです>

新教会で展覧会を鑑賞するといつも、その崇高な雰囲気に背筋が伸びます。天に向かう高い天井や、壮麗な装飾、やわらかな光を宿すステンドグラスが、現代の芸術作品を静かに見守っています。

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きらびやかな内陣障壁は、オランダ黄金時代の1650年ごろに建造されたものです。アムステルダムでは画家レンブラントが『夜警』を描いていた時代です。

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本来なら内陣は、主祭壇を安置するための聖職者専用の空間ですが、新教会では展覧会スペースとして利用されています。『世界報道写真展』では映像作品を鑑賞するためのスクリーンが設置されました。心地良い広さと程よい薄暗さで、作品をゆっくり鑑賞することができます。

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周歩廊に沿ったチャペルも展示ブースのように利用されています。

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地下埋葬室に安置されたオランダの海軍提督ミヒール・デ・ロイテルの棺も、展覧会の途中で見られます。

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新教会には1655年に作られたオランダ最大のパイプオルガンがありコンサート(orgelconcert) も開催されています。

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展覧会を鑑賞した後は、ミュージアムショップでお土産を購入したり、併設のカフェで食事を楽しんだりできます。王宮の傍にたたずみ、アムステルダムの歴史を見守ってきた信仰の場所、そして現在は多彩な展覧会を大らかに包み込む新教会に、ぜひ足を運んでみてください。

新教会(De Nieuwe Kerk Amsterdam)

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Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

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