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【自転車世界一周の旅】アルゼンチン、秘湯を駆ける
友人のチャリダーのブログを読んでいると、ワイン街道の終着点カファジャテから200km進んだところに温泉があると書いていたので、宝石の道以来温泉に行っていないので、たまには湯船につかりたいと思い、温泉目指して走り出した。
- 場所:Cafayate~Baños Termales los Naciomentos
- 距離:200km
- 走行期間:5/15~5/17
目次
続・ワイン街道
ワイン街道の終着点カファジャテで2泊し、ワインを堪能した後再び国道40号線を走り出した。町を抜けるとブドウ畑が広がり、サルタ方面より規模の大きなブドウ畑がアンデス山脈のすそ野に広がっている。
この時期は早朝は吐く息が白くなるほど冷え込むが、日中は日が出れば20度を超すので走っていて頬をかすめる風が心地よい。
初日はSanta Mariaの町中にあるキャンプ場にテントを張り、この先は200km先のBelenまで大きな村が無いので、この町で3日分の食料を購入。
終わりなき道
サンタマリア村以降はブドウ畑が無くなり、低木がぽつぽつと生える荒涼地帯に変わってしまった。
アップダウンの少ないゆったりとした道だったが、一か所急な坂があり100mほど標高を上げると、そこにはさらに何もない平らな大地が広がっていた。十数km先に山がそびえ、山のふもとまで一直線に道が伸びている。
ここに来るまで小さなカーブが多かったので、まっすぐな道は久しぶりだ。相変わらず草木は少なく、民家もほとんどないのでもくもくと進むしかない。
道路の脇には次の町まで○○kmと書かれた看板が立っている。こんな変化の乏しい真っすぐな道では、看板や道路標識に書かれた距離を見ることで前進していると実感することができる。
山の位置から十数km程度と思った直線道は、走っても走っても一向に山に近づかず、かれこれ一時間は走っている。今は追い風なので20kmは走っているのだが・・・
おまけに、看板に書かれた次の町までの距離も、前回の看板から5km以上走っていたのにもかかわらず、次に現れた看板の数字は10km増えている。海外ではここに書かれた数字と言うのは結構適当なもので、10km20kmずれているのはざらにあり、先進国のアメリカですら酷いと100km近く間違っていることもある。
普段ならいつものここと大して気に書けないのだが、今回に限っては頭の中の距離と実際の距離に隔離がある為、進んでいたはずが再び元の所に戻り、まるでこの道がエンドレスに続くかの様な錯覚に陥ってしまう。
眩暈がするような終わりの見えない道が終わったのは入口から40km進んだ地点であった。山の位置から10kmと踏んだが実際は4倍もあったので、体力的そして精神的にも疲れてしまった。
泊まるか進むか
終わらないと思えた直線を抜けると緩くて長い下り坂となる。
時間は17時。この辺でキャンプでもしようかと、隠れられそうな場所を探して走るのだが、道路の両脇には柵が張られ奥に入ることができず、道路から見えない所にテントを張ることができなくなってしまった。
地図を確認すると温泉まではあと25km。温泉の1km手前には無料のキャンプ場があるので、頑張れば何とか今日中に着くことができるかもしれない。
そうと決まれば国道沿いで野宿する考えを捨て、一路キャンプ場を目指して進み、18時に温泉入り口の分岐に到着。入口には『Baños Termales los Nacimientos』と書かれた古い看板が立っている。
ここからキャンプ場までは3kmの距離。普通に考えれば楽勝なのだが、友達の話では川あり山あり、荒れ地ありと中々激しい道のりのようだ。時間を考えると日没の19時ギリギリ到着の可能性もあるが、もし着かなければその時はその時で、この道なら人も来ないし道端でテントを張れば良いので問題ないだろう。
秘湯を求めて
国道から細い道を降りていくと、早速川幅150m程のHualfin川が道を遮っている。と言っても雨季の終わりに近づいたこの時期は水量が少なく、流れがあるのは川幅の10%程で、後は乾いた石ころや砂が川底に転がっている。
水位は深い所でも脛ぐらいまでなので、浅い所を狙って押せば靴は濡れるが荷物は濡れなさそうなので、外さないでも押して行けそうだ。水量は無くとも冬のこの時期水温は低く、できるだけ足を濡らさぬよう慎重に場所を選びながら川を渡り、靴の中が少し濡れた程度で渡りきる事ができた。
川を渡ると今度は細かい砂地の道となり、濡れた自転車や靴に砂がついて押すのも一苦労。やっと抜けたかと思えば、今度は足場の悪い丘越えがあり、ここに来たことを少し後悔するような道のオンパレードだ。
小さな沢を越えて少し進むと、目の前に高さ200~300mほど崖が立ちはだかり、目を凝らしてみると崖っぷちの中腹に道が作られその先に、白っぽい建物が見える。
まさかあんなところに温泉があるのか!?
違っていてくれと願いながら地図を開くと、悲しいことに温泉は崖の上にある白い建物の位置をさしている。
ただキャンプ場は崖の手前にあるので、今日はこれ以上登る事は無いのでほっ胸をなでおろし、無人のキャンプ場にテントを張る。キャンプ場と言いつつ、電気もトイレも水道も無く、ただバーべーキュー台がポツポツと建てられているだけだ。何は無くてもバーべーキュー台だけはある所がバーベキュー(アサド)が大好きなアルゼンチンらしい。
18時半に着きテントを張り終えた頃にはすっかり暗くなってしまった。汗をかいたことだし、ここでざぶんと温泉に浸かったら気持ちいいのだろうけど、暗い中崖っぷちの道を進むのは怖いし、温度もぬるいと聞いたので明日行った方が賢明だろうと思い、今日は温泉を目の前にしてお預けしたまま眠りについた。
秘湯ロマン
この日はのんびり温泉に浸かる為、休息日にしたので太陽が出て気温が上がるまで惰眠を貪る。テント泊で連泊はパタゴニア以来だろうか、ものすごく久しぶりだ。
のんびりと朝飯を食べて昼前に温泉に向かう。着替えと石鹸、貴重品をもって歩いて温泉へ。崖に作られたヘアピンを抜け、15分ほどで温泉に到着。
コンクリートで作られた個室の温泉が6棟ほど並び、湯船には絶え間なくお湯がパイプをつたって流れ込んでいる。まさに源泉かけ流しの天然温泉。ただ話に聞いた通りぬるく、看板には37度と書かれていた。
個室ごとに若干温度が違い、暖かさを比べて辛うじて40度ありそうな個室を見つけ、湯船に栓をしてお湯を張る。
湯船の広さは縦2m横1m弱深さ1mと一人で入るには十分な大きさがあり、足を伸ばすどころか寝転がって入る事も出来る大きさだ。広くとも水量があるので肩までお湯が張るのに30分程度と早く、お湯に打たれている間にたまっていく。
ドアを閉めると暗いので、人も来ないし来たところで中まではっきりとは見えないのでドアを開けっぱなしにして、2時間ほど出たり入ったりを繰り返す。
極楽とはまさにこの事、足を延ばし気兼ねなくゆっくりつかり、満足したところでキャンプ場に戻る。
知る人ぞ知る秘湯感満載の温泉で、久しぶりに湯船につかる事で疲れがすっかり抜けたので、これでまた元気に走りだせそうだ。キャンプ場から国道に戻るのがこれまた大変なので、明日の事を考えると少し億劫になるのがこの温泉の難点ではあるが・・・
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syo
- 2014年から相棒ジムシー号に乗って世界一周中。キャンプと読書が好きな元書店員