たいやきと旅するカメラマン

たいやきと旅に出た。

旅がしたかったわけじゃない。

旅せずにはいられなかった。

はじまりは些細なこと。

海岸での撮影の日、おやつに食べようと人形焼のような小さな「たいやき」を持ってきていた。

さあ、長い待ち時間、海を見ながらおやつを食べようとしたその瞬間、「たいやき」は私の手からすべり落ちた。

私はなぜか砂にまみれた「たいやき」を拾い上げ、とっさに防波堤に置いた。

「たいやき」が海を見ているようにみえた。

食べられなくなった「たいやき」が息を吹き返した瞬間だった。

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©sudomika

近くの猫と遊んだり、魚屋さんに並べられたり、最初は国内で撮っていたが、

「たいやき」はもっと遠くに行きたがった。

一緒に暮らしていた17歳の妹が亡くなった頃だ。

見慣れた日常の景色、街中に流れる音楽、テレビのニュースまでもが私の居場所をなくした。

私は記憶に殺されかけた。

逃げよう。

「たいやき」と逃げ出した。記憶で記憶を消すために。

ペルーのマチュピチュ遺跡を一日中眺め、

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©sudomika

チュニジアではベルベル人のターバンに埋もれ、

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タンザニアの子供たちと遊び、

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©sudomika

フランスでエッフェル塔を見ながら泣いた。

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©sudomika

「たいやき」を撮っていると、人が寄ってくる。

あのアジア人は何をしているのか?と人だかりが出来ることもある。

小さなたいやきの目線になるために地べたに這いつくばっておかしな姿になっているからだ。

そして話しかけてくる。お互い言葉が通じなくてもいつの間にか会話をしている。

ネパール人のゴルカという、外国人があまり行かない村で「たいやき」を撮っていると、子供たちが集まってきた。

街並みの写真を撮っていたのだが、子供たちが写り込もうと、どんどん近くに寄ってきた。

主役になっている「たいやき」を手に持ってみたいようだったので、

「たいやき」を、一緒に旅している友達なんだ、と紹介してみた。

すると子供たちは「たいやき」をそっと優しく扱ってくれた。

よくわからないお菓子らしきものを、私の友達と認めてくれたのだ。

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©sudomika

旅をするたびに少しづつ癒されたが、

旅から戻ると、また旅に出た。

仕事をして、旅に出てを繰り返して、気づけば訪問国60ヶ国を超えていた。

自分を守るためだけにした旅だった。

何かしていなくては耐えられなくて撮っていた写真が、

「たいやきの旅」という作品となって、見てくれる人が出来た時、救われた気がした。

たいやきの旅はまだ続いているが、旅のあり方は変わりつつある。

たいやきと旅するカメラマン須藤美香が同行する「お散歩撮影会」ツアーの記事はこちら

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須藤美香

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