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ジョージア国の映画「葡萄畑に帰ろう」を観た感想
こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。
あなたはジョージアという国をご存じですか?
かつてはグルジアと呼ばれていた国ジョージアは、旧ソ連邦、コーカサスの麓の小国です。日本との関連で言えば、大相撲力士の栃ノ心関でしょうか。角界のニコラス・ケイジと呼ばれる男前で、2018年1月の初場所で初優勝を果たし、その国の名前を知った方もいらっしゃるかもしれません。
このジョージアという国はなんとワイン発祥の地なんだそうです。ワイン作りに8,000年の歴史を持ち、2013年UNESCOの世界遺産(無形文化遺産)に認定されました。日本の和食もその時、世界遺産に認定されましたね。
そんな世界最古のワイン発祥の地ジョージアを舞台に大らかなユーモアで故郷への愛を謳う人生賛歌の映画「葡萄畑に帰ろう」が日本でも公開されると聞いて観に行って参りました。
目次
映画のストーリー
~故郷に母を残し、大臣に出世した息子。突然の災難の結末は?~
故郷に残した母のことはすっかり忘れ、政府の要職で大臣の椅子の座り心地を満喫しているギオルギ。妻を早くに亡くし、上の娘とは少し折り合いはわるいが、地位も権力もあり、可愛い一人息子と義理の姉と立派な家に暮らして、順風満帆。ある日出会った元ヴァイオリニストのドナラとの恋まで手に入れた。しかし、嘘と騙し合いと忖度まみれの政界で、ギオルギは大臣をクビに。突然の災難に見舞われたギオルギとその家族は?
監督はジョージア映画界の名匠エルダル・シェンゲラヤ氏で、御年85歳。映画「葡萄畑に帰ろう」は21年ぶりの作品となる。監督自身が実際に政界に身を置いていた経験をもとに、権力社会への痛烈な風刺を、自由な空想力と大らかなユーモアで描きます。
映画を観た感想
権力社会への痛烈な風刺というと、深刻に考え込んでしまうような重い課題を問いかけられるイメージを持つかもしれませんが、映画「葡萄畑に帰ろう」はちょっと違っていました。
軽やかにユーモアたっぷりに物語は進行します。これが巨匠エルダル・シェンゲラヤ監督の腕前なのでしょう。権力に魅せられ、翻弄され、見捨てられる人たちを手のひらでころがします。権力の座に就こうとする当の本人たちは至って真剣なのに、その姿は滑稽で哀れです。そして権力におもねり、取り入ろうとする人たち、権力を持つ側の傘下に入ろうとする人たちをもシェンゲラヤ監督はユニークな振る舞いをさせることで表現します(この振る舞いがとても意外で面白いのです)。
監督は権力社会を「だからダメなんだ、みんなこうすべきじゃないのか!」と説教くさく語ることをしません。そこに映画「葡萄畑に帰ろう」のキレの良さがあり、結果的に観る側に考えさせる深みがあるのかもしれません。「どこの国も同じだなぁ」と私たち日本人も感じることでしょう。
映画「葡萄畑に帰ろう」は権力社会の腐敗を暴き、糾弾するのではなく、その哀れさ愚かさをユーモアで笑い飛ばし、さらには人間が生きていく上で一番大切にすべきことは何かを問いかけます。それも決して押しつけがましくなく(ここが大事です)。邦題は「葡萄畑に帰ろう」ですが、原題は「The Chair」です。その意味が映画を観るとよくわかるでしょう。
印象に残ったシーン
私が映画を観て印象に残ったシーンは3つあります。
一番好きなシーンは主人公ギオルギが故郷の母とテラスのテーブルで話すシーンです。このお母さん、顔がとっても良いんです。おもわず「おかあさーん!」と叫んでみたくなるほどおかあさんなんです(笑)これみよがしの演出もお涙頂戴のセリフもなく、ごく普通の家庭でみられるようなシーンですが、とっても良いシーンでした。葡萄畑をバックにしたカメラのアングルも良いですね。
ふたつめは権力の座に登った人が何人か出てくるのですが、その人たちが揃ってみんな同じ行動を取るのです。このシーン、笑えました。きっと自分もそういう場面になったらそうするかもしれません。この映画のテーマに関わる演出だと思います。ぜひ映画館で確かめてみてください。
3つめは、結婚パーティで賑やかに飲み、食べ、そして踊るシーン。みんなとっても楽しそうです。ジョージアでは角の形をした杯でワインを飲みますが、これはカンツィと呼ばれる羊や牛の角で出来た、中身を飲み干すまでテーブルに置くことができないという恐るべき杯です。そういえば同じような杯が日本にもありますね。高知県の「べく杯(杯に穴が開いていて飲み干すまで置けない)」。ジョージアも大酒飲みの国だということがわかります。
またダンスの踊り方がなんだか日本の盆踊りに似ているように感じたのは私だけでしょうか(笑)映画「葡萄畑に帰ろう」は見どころがあちこちに散りばめてありました。
ジョージアという国
(映画「葡萄畑に帰ろう」公式サイトより抜粋引用)
コーカサス山脈の南に位置し、黒海とカスピ海に挟まれた、北海道の80%ほどの大きさの国で人口は約400万人。大国の侵略、支配に翻弄されながら1918年ジョージア民主共和国として独立したものの崩壊、旧ソ連邦となるが 再び1991年5月独立を回復。
コーカサス山脈とうねるような丘陵地帯、鮮やかで豊かな緑に包まれたジョージアの大自然が随所に出てきます。ワイン発祥の地というのもうなづけるような気がして、私も訪れてみたくなりました。
日本ではまだまだ知名度の低い国ジョージアですが、なんとなく日本と似たところもあるんじゃないかな?なんて感じました。
2018年12月15日から東京を始め、日本全国で順次公開されます。(詳しくは映画「葡萄畑に帰ろう」公式サイトでチェックしてください)
あなたも映画館でぜひジョージアという国と出会い、感じてみてください。
葡萄畑に帰ろう
12/15(土)より 岩波ホール他全国順次ロードショー(配給:クレストインターナショナル、ムヴィオラ)
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- >>>ジョージアを訪れるツアーはこちらをチェック!(外部サイトへリンクします)
※編集部註:本記事は2019年2月の公開しましたが、2021年5月に修正いたしました。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。