わずか30秒で7カ国を周遊!アムステルダムの『7カ国の家』

アムステルダムの一角にある「7カ国の家」は、オランダ、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ロシア、イギリスの建築様式を一度に鑑賞できる、隠れた観光スポットです。7カ国全ての家が、オランダの国家遺産に登録されている歴史的建造物でもあります。

目次

アムステルダムの家々

190130_01_facade.jpg

アムステルダムの運河沿いには、互いの美しさを競い合うように、様々なデザインの家が並んでいます。時代の流行を映すファサードや、美しく積み上げられたレンガ、色とりどりの鎧戸やアーチ窓など、街を散策するたびに新しい発見があります。 

かつて間口の幅によって課税額が決められたことから、アムステルダムの建築物は、幅が狭く奥行きのある構造になりました。限られた「家の顔」の装飾に趣向を凝らすことで、家主は個性を表現してきたのです。

裕福な商人の遊び心あふれる注文

190130_02_street.JPG

アムステルダム中心地のルーメル・フィッセル通りには、一際目をひく「7カ国の家 (Zevenlandenhuizen)」があります。高級住宅街にある閑静な通りの中ほどまで歩みを進めると、異国情緒あふれる7軒の家が現れます。各々がヨーロッパ7カ国の建築様式で設計されています。

この遊び心あふれる発注をしたのは、19世紀のアムステルダムで政治家としても名を馳せた、裕福な商人サミュエル・ファン・エーヘンです。若い頃よりオランダ領東インドに滞在するなど国際的な見識があり、旅行好きとしても知られていました。

「7カ国の家」は1894年に、オランダ人建築家チェールト・カウパースにより設計されました。19世紀の建築家にはエキゾチシズム、つまり遠方へのロマンチックな憧れがあり、カウパースもまた7カ国への敬意と憧れをもって、ヨーロッパ建築の潮流を再現しました。

40mに凝縮された19世紀のヨーロッパ

「7カ国の家」は東側から、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ロシア、オランダ、イギリスの順に並んでいます。わずか40m、徒歩にして30秒ほどで、ヨーロッパ7カ国の建築物を鑑賞できます。

190130_03_houses01.JPG
<右から順にドイツ、フランス、スペインの家>

ドイツの家はロマン主義様式で、堂々とした木造の出窓や、最上階の小さな塔が特徴です。赤レンガと黄色に塗られた扉には、古い街並みの雰囲気が漂います。

フランスの家は、ロワール地方の古城に倣った建築様式で、グレーの屋根と白い壁が落ち着いた印象を与えます。大きく開放的な窓があり、凛とした佇まいです。

7カ国のうち最も鮮やかなのは、ピンクと白のストライプに塗られたスペインの家です。かつてイスラム王朝が栄えた、グラナダのヴィッラをイメージしてデザインされました。馬蹄形アーチがイスラーム建築を彷彿とさせます。

190130_04_houses02.JPG
<右から順にイタリア、ロシア、オランダ、イギリスの家>

イタリアの家は、新古典主義のパラッツォ(イタリアの宮殿)をイメージしています。華美な装飾を排除したシンプルなフォルムで、荘厳さや崇高美といった新古典主義の思想が表現されています。

ロシアの家は大聖堂の様式で、十字架を載せたタマネギ型の屋根「オニオンドーム」が異彩を放ちます。オニオンドームは、人々の祈りが天まで昇っていくよう、ロウソクの炎を象ったものです。

オランダの家は意匠を凝らした切り妻屋根のルネサンス建築です。規則正しく並べられた赤レンガが美しく、屋根裏部屋の小窓が想像力を掻きたてます。

イギリスの家はコテージをイメージしたデザインで、三角屋根と大きな煙突が目を引きます。「7カ国の家」は住宅やオフィスとして利用されているため内部見学は出来ませんが、唯一イギリスの家だけはホテルとして宿泊できます。

190130_05_doors.jpg

それぞれの家にはオランダ語で国名が記されています。左上から時計回りに、イタリア、オランダ、イギリス、スペイン、ドイツ、フランス、ロシア。

周辺で人気の観光スポット

190130_06_vondelpark.jpg

「7カ国の家」の周辺には、アムステルダム国立美術館やゴッホ美術館、コンセルトヘボウ、ブランドショップが並ぶP.C.ホーフト通り、歓楽街のライツェ広場やホランドカジノ、フォンデル公園などがあります。観光の途中に、ぜひ19世紀のヨーロッパ7カ国まで足を伸ばしてみてください。

INFORMATION

7カ国の家 Zevenlandenhuizen 

建築主:Samuel van Eeghen (1853-1934)
設計:Tjeerd Kuipers (1857-1942)
竣工 :1894年
住所:Roemer Visscherstraat 20, 22, 24, 26, 28, 30, 30A
アクセス:トラム1, 2, 5, 11, 12番Leidseplein下車徒歩5分

クエンティン・イングランドホテル(イギリスの家)

Quentin England hotel

住所:Roemer Visscherstraat 30
URL: http://quentinengland.com/

Related postこの記事に関連する記事

Rankingオランダ記事ランキング

ランキングをもっと見る

この記事に関連するエリア

プロフィール画像

Kayo Temel

オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、イラストレーターとして活動中。20年の在蘭経験を活かして、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。

Pick upピックアップ特集

全国の動物園&水族館 徹底取材レポート特集!デートや家族のおでかけなど是非参考にしてみてください♪

特集をもっと見る

たびこふれメールマガジン「たびとどけ」
たびこふれサロン

たびこふれ公式アカウント
旬な情報を更新中!