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無形文化遺産にも登録!南イタリア・チレント地方の"地中海式ダイエット"とは?
サムネイル(写真はイメージです):Pexlels
みなさんは、地中海式ダイエットという言葉を聞いたことはありませんか? 南イタリア・チレント地方発祥の地中海食は、痩身目的ではなく健康に生きるためのライフスタイル全体を指しており、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
この記事では、地中海ダイエットと呼ばれている食文化について紹介すると共に、発祥地のチレントについても概要をご案内しましょう。
※註:当記事は無形文化遺産としての地中海食文化や、チレントの特徴について紹介するものです。地中海式ダイエットによる効能を明示するものではありません。 また、ダイエットという表現は「地中海式ダイエット」というユネスコの登録名称として、またそれ以外の文章では「(健康になるための)食事療法または食事制限」の意味として使用しています。
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南イタリア・チレントが発祥の「地中海式ダイエット」とは
地中海式ダイエットは、イタリア語では「ディエタ・メディテッラネア(Dieta Mediterranea)」と言います。ダイエットと聞くと、体重を落とすための手段をイメージしがちですが、地中海式ダイエットはいわゆる"瘦せるためのダイエット"とは全く考え方が違います。
"ダイエット(Diet)"という言葉は、本来の意味では「(健康になるための)食事療法または食事制限」を表すものであり、痩せるだけではなく、適正な体重に増やすための食事や病気中の制限された食事、そして普段の食生活もダイエットと表現することができます。
そして地中海式ダイエットは、本来のダイエットの意味である「健康的な体を維持するための食事法」を指し、健康であるための生活や生活習慣など、ライフスタイルそのものを含めた総称として使われています。それによると、健康的な生活や体を維持するには、毎日の食事や食材、運動や睡眠など、生活習慣に関わる全てのことが重要な要素になるとされています。
地中海式ダイエットを唱えた、アンセル・キーズ博士
地中海式ダイエットの名付け親とされているのが、アメリカ人のアンセル・キーズ博士(1904-2004)。実は、地中海の人々が名付けたわけではありません。彼は生理学者としてさまざまな研究を行っていましたが、その中には「飢餓の研究」や「レーションの研究開発」など、人体の飢餓状態やカロリーに関するものが含まれています。
1950年頃、彼の母国アメリカでは心臓病が死因のトップであるのに比べ、イタリアをはじめとした地中海諸国では、その発症率はかなり低いものでした(※)。
これを知ったキーズ博士は、フィンランド、オランダ、ギリシア、イタリア、旧ユーゴスラビア、日本、アメリカの7カ国 で、死亡率と食事の関係について研究を行いました。その結果、地中海沿岸に住む人々の心臓病や癌などの死亡率が低いのは、食事やライフスタイルと深く関わっていると結論付けたのです。
※註:当時は第二次世界大戦のすぐ後でした。
ユネスコの無形文化遺産登録に認定されたライフスタイル
キーズ博士の研究などにより、地中海一帯で食べられていた伝統的な食事法が注目され、今日では地中海式ダイエットが世界各国でも知られるようになっていきました。さらに、地中海式ダイエットはギリシャ・スペイン・イタリア・モロッコの4カ国による合同申請によって、2010年11月 に世界無形文化遺産としてユネスコに認定されました。
ユネスコによる地中海式ダイエットの特徴とは、大きく分けて「1:食材や食べ方」「2:生活スタイル」に大別されます。
1:食材や食べ方
オリーブオイルや小麦を中心とし、季節の野菜やフルーツ、魚をたくさん食べること。ドレッシングや出来合いの物を食べずに、オリーブオイルに塩やレモンなどシンプルな調味料、スパイス、ハーブ等で調理します。
また、適量のワインも必要とされています。さらに、冷凍食品や出来合いの食品ではなく、季節の食材・地元の食材を生かし大切にするという考え方が含まれています。
2:生活スタイル
共にテーブルを囲み、みんなで食事をすること。 南イタリアでは今でも日曜日は家族で集まり、ゆっくり時間をかけて昼食を食べる習慣が残っています。私も南イタリアの小さな町に住んでいますが、毎週日曜日は家族が集まり、2~3時間ほどかけて語らいながらゆっくりと食事をとります。
時には友人を招いたり、親族の人や孫が来たり、大人数になることも。食事はただ食べるという行為ではなく、コミュニケーションや団らんの一部として機能しています。
南イタリアのチレント地方について
先ほどご紹介したアンセル・キーズ博士は、自らも地中海式ダイエットを実践していたそうです。いくつかの土地を巡った後に、ベストな土地としてたどり着いたのが南イタリアのチレント(Cilento)という地域でした。
キーズ博士が移住したほど魅力的なチレントとは、どんな地域なのでしょう? 日本ではあまり聞くことのない地名ですが、イタリア国内では美しい海や山などの自然と、そこで育まれるオリーブやモッツァレラチーズの名産地としても知られています。
以前、たびこふれでもご紹介したモッツァレラチーズ工場も、このチレントの中の「パエストゥム」という町にあります。
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チレントは観光に行くというよりは、ゆっくりリラックスして過ごす方が向いています。おしゃれなショップや豪華なレストランなどはありませんが、美しい海や山を眺めつつ、新鮮で美味しい食事をゆったり味わえるような、まさに地中海式ダイエットの生活様式をそのまま体感できる地域です。
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地中海の食文化を取り入れて、暮らしを見つめ直してみては
実際にチレントを訪れると、キース博士が移住を決断したのも納得できる、シンプルで美味しい食事が今でも変わらず食べられていることを実感できます。皆さんも旅行やバカンスを通じて、改めて自分なりの食やライフスタイルを考えてみませんか?
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La luce del Sud
- 人々の生活スタイルや風景に魅せられ、イタリアへ。現在は南イタリア・アマルフィ海岸にある小さな町に住んでいます。個人旅行のアテンド・各種視察のコーディネートや通訳をしています。