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都会ではなかなかできない農業体験「山形/天童さくらんぼ収穫体験ツアー」
こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。
山形県といえばフルーツ王国。なかでも高級フルーツさくらんぼの収穫は日本一を誇っています。さくらんぼの収穫は例年6月~7月ですが、さくらんぼは非常にデリケートなフルーツで、収穫、出荷をすべて手作業で、短期間にスピーディに行わなければならないそうです。その為には集中して多くの労働力が必要となるのですが、山形でもさくらんぼの収穫期に必要な労働力を県内だけでは確保しきれず、農業就労の方々の高齢化も重なって農業は今厳しい状況に置かれています。
一方、都会に住む人々の中には自然回帰や田舎暮らしに関心を寄せる人たちも増えてきています。ただなかなか機会もなく、実際に行動に移せる人は少ないようです。そんな両方のニーズをマッチングする新しい試みとして旅行会社の阪急交通社が農業体験ツアーを企画募集しました。天童市観光果樹園連絡協議会主催の「農業体験プログラム」を組み込んだツアーです。
自身も広島県の田舎出身で農村に思い入れもあるシンジーノがそのツアーを取材してきました。
<目次>
- 農業体験ってどんなツアー?
- 事前準備は入念に
- 農業体験一日のはじまり
- さあ農業体験実践!
- さくらんぼはこのようにして"もぐ"
- お客さまの収穫の様子
- 農業体験したお客さまの声
- なんと!こんなお客さまも出現しました
- 自分が収穫したさくらんぼを家族にお土産で持ち帰る悦び
- 果樹園のさくらんぼへの思い
農業体験ってどんなツアー?
ツアーは2018年6月中旬~7月初旬にかけて5本催行され、合計で100名を越えるお客さまが参加されました。日程は5泊6日でツアー代金は25,000~35,000円(利用ホテルにより変動)というお得なお値段。農業体験といっても農家に寝泊まりするわけではなく、ホテルに滞在しながら農園まで往復し、農作業をするというスタイルなので初めてでも安心ですね。農業体験はツアー中4日間で中一日はフリータイムで近辺を自由に観光することもできる旅行の要素も含まれたなかなかに考えられたツアーだと思います。
私が参加したのは7/1出発。参加者は13名でご夫婦1組とその他はすべておひとり様参加でした。東京駅12時発の新幹線で一路山形県天童市へ。天童には15時前に到着し、駅からホテルまでは送迎バスで約10分で到着します。
事前準備は入念に
お客さまはチェックイン後、お風呂に浸かったり、ホテル近辺のスーパーやコンビニの場所の確認を兼ねてにお散歩したりしていました。初日の17時からオリエンテーションがホテル内で開催されます。オリエンテーションではお世話になる果樹園の方からこのツアーの趣旨、農作業の中身、流れを聞きます。(長靴、軍手、装備など について質問が飛んでいました)
今回宿泊したのは「ホテルビューくろだ」さん。決して豪華絢爛ではありませんが、館内は改装されていて清潔で過ごしやすいホテルでした。中でも良かったのは食事です。こちらも決して派手な宴会料理ではありませんが、おもてなしの温かさを感じさせる優しい味で5連泊するにはぴったりの宿だと感じました。
朝食でこれだけ品数があるんです。うす味で体に優しい家庭料理という印象でした。
農業体験一日のはじまり
翌朝7:30 ホテルロビーに集合し バスで出発。
農業体験場所には20~30分で到着です。国道48号線の周辺には約20軒の果樹園が並んでいます。
こちらから実際に作業をする果樹園へ向かいます。さくらんぼの果樹園はこんな感じで上にビニールが張ってあります。
この日は最高気温35度まで上昇し、とても暑い日でした。天童は盆地なので風が流れず、特に暑く感じました。
農業体験は果実をもぐ(現地では"摘む"ではなく"もぐ"と仰っていました)摘果作業以外にも箱作りや出荷作業、他のフルーツの収穫など多岐にわたります。参加者は同じ場所だけではなく他の果樹園やJAを日によって移動しながら幅広い農業体験が出来ます。
この日は4つの果樹園とJAに分かれて作業しました。私も摘果作業をお手伝いしました。
さあ農業体験実践!
果樹園の中に入っていくと・・・鈴なりの佐藤錦が迎えてくれました。うぉほほ~
王将果樹園の矢矧社長がじきじきに作業内容と手順、注意事項を教えてくださいました。
さくらんぼの木は高いので上の方の実は脚立に乗って収穫します。てっぺんの方はかなり高いので男性が中心となって収穫します。
腰に籠を結えて採った実を入れます。
実が入った籠はこんな感じです。
さくらんぼは、このようにして"もぐ"
さくらんぼの実をもぐのは比較的簡単でした。
さくらんぼの軸を手に取って、
生えているのと逆の方向にやや上向きにクキっ!
割と簡単にもげますが、軸が柔らかいものがあったり、鈴なりになっている実を選り分けながらもいでいくのは結構大変でした。
実も柔らかいので、安易に触ると実だけ落ちてしまったりと神経を使います。機械でごっそりではなく、ひとつひとつ手でもいでいく地味で気の遠くなるような作業、それがさくらんぼ収穫です。
お客さまの収穫の様子
収穫中は、高級フルーツのさくらんぼをもぎ放題、食べ放題です。(もちろん果樹園の方の了解を得ています)木からもぎたてのさくらんぼは甘くジューシーです。なんという贅沢!
ツアー参加の皆さんもそれぞれに農業体験を楽しんでおられるようでした。
作業の途中には小休止を入れて水分を補給しながら進みました。皆さん車座になって談笑する場面も。
収穫したさくらんぼは集めて選別されパック詰めされます。
他の果樹園の昼食休憩の様子です。他のスタッフの方と和気藹々とお話されていました。
こうして農業体験は休憩、お昼を挟んで朝8時から17時まで行われます。その後、迎えのバスが来てホテルまで戻ります。
農業体験したお客さまの声
実際に農業体験をしたお客さまに感想を聞いたところこんな声がありました。
「今までは誰かが採ったものを食べていただけ。実際に自分でも採ってみたかった。それが叶ってうれしい」
「農家の皆さんがどれだけ苦労されているかがわかった」
「果物がどのように作られ、収穫され、出荷されるのかという一連の流れを知ることができて勉強になった」
「暑い暑い!こんなところで作業するなんて農家の皆さんはすごい」
なんと!こんなお客さまも出現しました
お客さまの中には、体験ツアーが終わりに近づいた時、「ツアーが終わってもここに残って収穫作業をやりたい」と仰る方が出現しました。
私がお会いした時は、既に3週間天童にお住まいで、果樹園の研修センターに寝泊まりし、農家の方々と同じものを食べ、すっかりスタッフの一員になっておられました。この方はツアーが終了する7月中旬まで滞在予定だそうです。「東京におられるご家族の方はなんと仰っているんですか?」と訊いたところ「好きにすればいいんじゃない」と言われたそうです(笑)元は東京で大手ゼネコンの経理部長をなさっていた方で、リタイヤ後、こういった農業に興味を持ち、ツアーに参加してはまってしまったそうです。こちらがそのすごい方、森さんです。
農園側からすればやる気のある方がお手伝いをしてくれたらこれほどありがたいことはないでしょうし、ご本人もこのツアーで今まで知らなかったやりがいを感じる魅力的な世界に出会うことができたのは素敵なことですね。森さんはすっかりベテランとなられて体験ツアー参加の皆さんに採り方のコツや注意点をアドバイスして、もう完全に果樹園の方になられていました(笑)
自分が収穫したさくらんぼを家族にお土産で持ち帰る悦び
私は「さくらんぼはとても高い」というイメージを持っていましたが、収穫の大変な手間と作業が必要なことを知り、少々高い値段がついてもやむをえないなと思いました。写真は宝石箱のような大粒の紅秀峰です。
このツアーではお土産として500gのさくらんぼがプレゼントされますが、自分がもいださくらんぼを家族やお友達にお土産にしたり、送ったりするのってすごくいいなと思いました。「私がもいだのよ~」って家族に自慢できますね(笑)
この天童市観光果樹園連絡協議会の農業体験プログラムは農水省の農山漁村振興交付金の審査を通り、国として支援することが決まったそうです。今回の新しい試みは各方面から注目され、地元新聞社、テレビ局、のみならず全国紙も取材に来られたそうです。
私もまたこのような農業体験ツアーが企画されたらぜひ参加したいと思います。
美しい風景を見、美味しいものを食べて、温泉旅館に泊まり、お土産を買って帰るという物見遊山の旅行もそれはそれで楽しいですが、今回の農業体験のような、自分の行動がどこかの誰かの役に立つ、そして自分の人生に新しい発見ややりがいを与え、生きる価値のようなものを感じることができる、そんな旅もまたいいなと思いました。
果樹園のさくらんぼへの思い
今回受け入れていただいた農業体験プログラムの中心的役割を担われた王将果樹園にはこんな看板が立っていました。
こういう農家さんの思いと行動があって、私たちはお金を出すだけで美味しいフルーツを食べることが出来るんですね。
今回のツアー、気づきと学びがたくさんあった貴重な体験でした。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。