世界遺産の遺跡巡りをする前にぜひ立ち寄って!国立トルヒーヨ大学・考古学人類学歴史学博物館

目次

遺跡の街、トルヒーヨに位置する博物館

ペルー北海岸エリアに位置するラ・リベルタ州の州都、「Trujillo(トルヒーヨ)」。国内第三の都市であり、世界遺産に登録されているチャンチャンを始め、さまざまな遺跡見学の拠点となる街でもあります。そのトルヒーヨの中心にある「Museo de Arqueología, Antropología e Historia de la Universidad Nacional de Trujillo(国立トルヒーヨ大学・考古学人類学歴史学博物館 ※以下:国立トルヒーヨ大学博物館)」は、北海岸エリアの古代文化に焦点を当てた1939年開設の歴史ある博物館。トルヒーヨ周辺の遺跡訪問の前に押さえておきたい博物館です。

17世紀に建てられた美しい屋敷を利用

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国立トルヒーヨ大学博物館として利用されているこの建物は、17世紀に建てられた大変古いもの。現在はペルー住宅銀行が所有していますが、この屋敷の最後の持ち主がトルヒーヨの名門リスコ家だったことから、「Casa Risco(リスコの家)」としても知られています。青く塗られた壁と、そこに描かれた風景画が印象的なリスコの家のパティオは、在りし日の華やかさを静かに伝えてくれます。リスコの家は、1995年から国立トルヒーヨ大学博物館として使用されるようになりました。博物館の展示室が少々入り組んだ造りになっているのは、もともと個人宅用に設計された建物だからなんですね。

博物館の様々な展示物たち

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まずはベーリング海峡を渡ったとされる人類の軌跡と、ペルー北海岸の気候風土の説明から始まります。こちらはトルヒーヨ北部のチカマ渓谷で発見された1万200年前の少年の骨で、年齢はおよそ12~13歳。身長は140㎝、足の骨の太さからその筋肉はずいぶん発達していたと考えられています。顔は縦長で幅が狭く、頭蓋骨は後ろに長く伸びています。アンデス文明では古くから頭蓋変形が行われてきましたが、1万年以上も前からその風習があったのでしょうか?副葬品は見つかっていませんが、もしかしたら特別な人物だったのかもしれませんね。

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次に、「Cupisnique(クピスニケ/紀元前1500~500年)」や「Salinar(サリナール/紀元前500~200年)」、「Gallinazo(ガジナソ、もしくはガイナソ/紀元前200~紀元200年)」各文化の展示が続きます。日本人にはあまり耳慣れない文化ですが、モチェやチムー文化よりずっと以前にこの地に栄え、個性的な土器を多数残しました。

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表面がつるっとした仕上がりで、シンプルなデザインのガジナソ文化の土器。真一文字にひかれた目や口の表現が、とてもユーモラスです。

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この博物館のメイン展示室、「Sala Moche(モチェの部屋)」。壁にはモチェ文化を代表する遺跡「La Huaca de Luna(月のワカ)」を彩る、巨大レリーフの模型があります。紀元前200~紀元700年にかけて栄えたモチェは、現在のトルヒーヨを中心に、北はピウラ州、南はアンカッシュ州のワルメイまで広大なエリアを支配していました。

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精巧な土器と色鮮やかなレリーフ、黄金製品で有名なモチェ。特に人物の顔をかたどった肖像土器はどれも写実的で、モデルがいたとしか思えないほど表情が豊かです。アンデスだけでなく、アフリカやアジア、ヨーロッパ風の顔までさまざま。当時の交易範囲は、現代の私たちが考えるよりもずっと広かったに違いありません。

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「Las Huacas del Sol y la Luna(太陽のワカ・月のワカ)」遺跡の模型。向かって左が太陽のワカで、右が月のワカ。月のワカの背後にそびえるのは、セロ・ブランコと呼ばれる聖なる山です。今ではすっかり崩れてしまった太陽のワカも、かつてはこんな形をしていたんですね。現地ではただの平野にしか見えない両ワカの間にも、これほどたくさんの建物があったとは驚きです。こうした模型を事前に見ておけば、遺跡を訪れた時の感動もまた違ってくるのではないでしょうか。

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モチェ時代の漁の様子を表した模型。このトトラと呼ばれる葦舟は、21世紀の今も現役で活躍しているんですよ。トルヒーヨ郊外のワンチャコ海岸に行くと、この模型と同じような光景を見ることができます。2000年経った現代でも通用する技術を有していたモチェの人々。アンデス文明の奥深さを感じずにはいられません。

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「Sala Chimú e Inca(チムーとインカの部屋)」。ここではチムー王国の都市とされる世界遺産「チャンチャン遺跡」の解説を中心に、チムーの土器や黄金製品、織物の道具、同じくチムー時代の「La Huaca del Dragón(ドラゴンのワカ)」で発見された木像などが展示されています。チムーの優れた冶金技術が、のちのインカに伝えられました。

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国立トルヒーヨ大学博物館では、これらの常設展のほか企画展も定期的に行われています。私が訪ねた時は、ナスカやチャンカイなどペルー中南部の文化を取り上げていました。豊かな髪が印象的なこの頭蓋骨は、紀元前200年頃の女性司祭のもの。大きく2つに束ねられたその髪は、なんと280㎝もの長さがあるのだとか。当時の人々にとって、髪は神聖なものだったんでしょうね。

スペイン語以外の解説がないのは残念ですが、パネルや模型も多く、それらを眺めるだけでもいろんなことがわかってきます。トルヒーヨ周辺の遺跡を訪れる前に、ぜひ足をお運びください。

国立トルヒーヨ大学・考古学人類学歴史学博物館

現地語表記:Museo de Arqueología, Antropología e Historia - Universidad Nacional de Trujillo
住所:Jr. Junín N°682, Trujillo
電話:(044)474-850
開館:月/9:00~14:30、火~土/9:00~16:30(休み:日祝)

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原田慶子

ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。

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