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アマゾンの森の民シピボ族の泥染めとアマゾン屋
前回、アマゾン料理「Juane(フアネ)」の作り方を教えてくれたテレサさん。
彼女はペルー東部を流れるウカヤリ川周辺に暮らす、アマゾン先住民シピボ族の出身。
正式には「Shipibo=Konibo(シピボ-コニボ)」と呼ばれ、独特な模様を施した工芸品や民芸品で知られています。
シピボの衣装をまとったテレサさん。
彼女はシピボの伝統工芸「泥染め」の名手として、村内でも有名な女性です。
前述のフアネ作りに続き、今回は泥染めの制作過程も見せてもらいました。
シピボの泥染めとは、アマゾンの沼から採取した泥と、樹木の表皮を煮出して作った茶色い染料で布を染める技巧。
泥に含まれる鉄分と、樹皮に含まれるタンニンが化合し黒くなる性質を利用しています。
奄美大島の大島紬と似ていますね。
こちらが、泥染めに使用する鉄分をたっぷり含んだ泥。
昔はどこでも簡単に手に入ったこの泥、近年の環境破壊によって入手が難しくなったとか。
森の伐採も進み、木々の中でもタンニンを特に多く含むカオバ(マホガニー)がずいぶん減ってしまったそうです。
シピボ族が先祖代々受け継いできた貴重な伝統工芸、どうかこのまま後世に受け継がれて欲しいと思います。
あらかじめ茶色に染めておいた布に、テレサさんが先ほどの泥で絵を描き始めました。
布には下書きや目印になるポイントは一切ありません。
何の躊躇もなく自然に、思うままに泥をのせ、線を引いていきます。
考古学者のマリア・ルイサ・ベラウンデ博士によると、この模様は「天空の蛇(アナコンダ)の表皮の模様に由来する」のだとか。
でもテレサさん自身に蛇を描いているつもりはないようでした。
ただ脳裏に浮かび上がったイメージを、素直に表現していく。
まさに遺伝子レベルで受け継いだデザインといえるでしょう。
おしゃべりや休憩を挟み、自分のペースでのんびり絵を描くテレサさん。
こうして、世界にたった一枚しかない泥染めが少しずつ出来上がっていきます。
絵が完成しました!(※この写真は別の機会に撮影したものです。)
グレーに塗られた部分が、泥で絵を描いたり塗ったりしたところです。
水で泥を洗い流すと、ほら!
泥で覆われていた部分が見事に黒く染まっています。
この布を乾かせば、泥染めの完成です。
テレサさんが暮らすシピボ族の集落、サン・フランシスコ村を散歩すると、庭先でのんびりと泥染めや刺繍をする女性たちの姿をあちこちで見かけます。
村には地元の人たちが作った民芸品や工芸品を共同で販売するお店もあるんですよ。
とはいえ、サン・フランシスコ村はペルーの首都リマから遠く、気軽に訪問するわけにもいきません。
でもご心配なく!
アマゾンの森が育んだこの素晴らしい布が、日本でも手に入るんです!
都内の閑静な住宅街にある「アマゾン屋」。
オーナーのAyaさんは20年前からシピボの人々と交流を続けている女性です。
長くペルーに暮らしていた彼女ですが一昨年帰国。
今は自宅の一部を工房兼ギャラリーにし、シピボ族の伝統の技を紹介しています。
実はテレサさんを私に紹介してくれたのも、このAyaさんなんですよ。
テレサさんやその家族が作った素晴らしい泥染めが並ぶ、アマゾン屋の工房。
泥染めや、テレサさんが腰に巻いている刺繍入りの布のほか、Ayaさんオリジナルの商品がたくさんあります。
またアマゾン屋のサイトでは、泥染めの詳しい作り方やサン・フランシスコ村の様子も紹介されているので、ぜひご覧ください。
世界にたった一枚しかない布と、その布で作られた一点物の「作品」たち。
日本に居ながらアマゾンの風を感じられる、貴重なお店です。
★Comunidad Nativa San Francisco/サン・フランシスコ先住民集落★
住所:リマからアマゾンの都市プカルパまで飛行機で1時間15分。
プカルパからはボートで1時間、コレクティーボ(乗り合いタクシー/乾季のみ)で30分ほど。
★Amazon-ya/アマゾン屋★
ウェブサイト:amazon-dorozome.com
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原田慶子
- ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。