閲覧注意!ガイコツとミイラがいっぱいのペルー南部「イカ地方博物館」

荒涼とした砂漠が広がる南米ペルーの海岸部。特に南部のイカからナスカにかけては乾燥が激しく、埋葬されたあと白骨化せず、ミイラとして残る遺体がたくさんありました。2000年以上前に栄えたパラカス・ナスカ文化の遺跡。ここからはたくさんのミイラが発掘されていますが、中には皮膚だけでなく眼球まで残っている例もあるそうです。また、開頭手術をはじめ、頭蓋骨を変形させたり干し首を作るなど、当時の人々は人体の「頭部」に強い興味を抱いていたといいます。そんなパラカス・ナスカ文化のミイラや頭蓋骨を惜しみなく展示しているのが、イカにある「イカ地方博物館」。日本ではまず見られない驚きの遺物がいっぱいです。

アンデスならではの死者の世界へようこそ

イカ地方博物館の正式名称は「Museo Regional de Ica "Adolfo Bermúdez Jenkins" ("アドルフォ・ベルムデス・ヘンキンス" イカ地方博物館)」。イカの中心・アルマス広場の南西、広場から砂漠のオアシスとして有名なワカチナ湖へ向かう途中にあります。1階にはパラカス・ナスカ文化を中心にワリやチンチャ、インカの土器や織物、ミイラなどが、2階にはスペイン植民地時代からペルー独立後にかけ使われていた、アンティーク家具や絵画が展示されています。裏庭にはナスカの地上絵の500分の1サイズの模型もあるので、そちらもお見逃しなく。今回は、パラカス・ナスカ時代のミイラと頭蓋骨の画像を中心にご紹介していきます。

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「Museo Regional de Ica "Adolfo Bermúdez Jenkins" ("アドルフォ・ベルムデス・ヘンキンス" イカ地方博物館)」。

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こちらは紀元1500年ごろの女性のミイラ。木製の農業儀式用の杖と道具、食べ物が入ったヒョウタンの容器、織物、食器などの家財道具が一緒に埋葬されていました。かわいらしい刺繍がちりばめられた衣装は、彼女が若くして亡くなったことを想像させます。レントゲン検査の結果、彼女が妊娠していたことも分かりました。もしかしたら、村の有力な家に嫁いだにもかかわらずすぐ亡くなってしまった若妻だったのかもしれませんね。

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紀元前のパラカス期の墓地から発見された、陶器に収められた赤ちゃんのミイラ。顔は見えませんが、頭に残った産毛がなんともいえず生々しい。今にも「ばぁ」っと顔をあげそうでちょっと怖いです。

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頭髪だけがきれいに残った頭蓋骨がずらり。長い髪を頭に巻いたり、そのままたれ流したりと、いろんなスタイルがあります。三つ編みやドレッドヘアなど、今でも十分通用しそうなくらい個性的でかっこいいですね。2000年以上前に生きた人々がこれほどヘアスタイルにこだわっていたなんて、なんだか親近感が湧いてしまいます。

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この人形模型は、当時行われていた開頭手術の様子を表したもの。呪術師らしき人物が見守る中、左側の男性が患者の頭蓋骨を石のナイフで削っています。古代ペルーの人々は、戦闘などで陥没骨折した患者を開頭し、脳内に溜まった血を取り除く高度な外科手術を行っていたそうです。もちろん患者には薬草由来の麻酔などを使用したと思いますが、どこまで効いたかはわかりません。男性が2人がかりで患者を押さえつけているところが、とてもリアルですね。

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開頭手術に使われていた黒曜石のナイフ。こんなもので皮膚をはがし頭蓋骨を削って穴をあけたとは・・・・・・想像するだけで身震いがします。

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でもご安心ください。この再生した骨の様子からも分かるように、少なくともこの患者は開頭手術が成功し、その後もしばらく生存していたことが分かります。人間の生命力って本当に素晴らしいですね!またこの頭蓋骨は少し変形しています。これは頭蓋変形とよばれるもので、古代アンデス文明では広く行われていました。イカ地方博物館には、まるで七福神の福禄寿のように、もっと長く変形させた長頭頭蓋骨も展示されています。生後間もないころから板や紐を使って少しずつ変形させたようで、成長過程における頭部への負担が気になるところです。その圧迫が原因で発育障害を起こしたり、最悪死亡する例もあったそうですが、なぜ彼らがそれほど頭蓋変形にこだわったのかはまだわかっていません。

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この不気味な面構えのものは、「Cabezas Trofeo(トロフィー・ヘッド)」を模した陶器。本物のトロフィー・ヘッドは眼球を抜き取りますが、この陶器には目らしきものが描かれています。しかし額に持ち運びのための紐が出ていることから、これがトロフィー・ヘッドだと判断できます。

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こちらが本物のトロフィー・ヘッドです。ナスカの人々は、戦(いくさ)の相手の首を戦利品として加工するだけでなく、神への捧げものとしてトロフィー・ヘッドを作りました。脳や眼球を抜き取った後、眼窩(がんか)に布を詰め、口が開かないようサボテンの棘で唇を縫うように閉じています。このトロフィー・ヘッドの紐は耳のあたりから垂れ下がっているように見えますが、額にも穴が開いていることから、ここにも紐が通されていたことが分かります。

砂漠に覆われたナスカでは、命を育む水は何よりも貴重なものでした。ナスカの地上絵に雨ごいの儀式用の順路説があるほど、常に水が求められていたのです。儀式では、貴重なスポンディスル貝(ウミギクガイ)をはじめとするさまざまな貢物が奉納されましたが、それでも雨が降らない時は人間を生贄にし、首をはね頭部を捧げたといいます。残酷な行為の一方で、丁寧に死者を埋葬していたパラカス・ナスカの人々。私たちとは全く違う死生観に支配されていた古代アンデスの世界。イカ地方博物館は、その暮らしを垣間見ることができる貴重な博物館です。

Museo Regional de Ica "Adolfo Bermúdez Jenkins" / "アドルフォ・ベルムデス・ヘンキンス" イカ地方博物館

住所:la Calle Ayabaca, cuadra 8 S/N, Urbanización San Isidro - Ica
開館:火~金/8:00~17:00、土日祝/8:30~16:30
入館料:S/7.5
※無料開館日:毎月第一日曜日、3月30日、5月18日

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原田慶子

ペルー・リマ在住ライター。ペルーの観光情報からエコやグルメの話題などを幅広く執筆。ペルーに関する情報誌等の取材協力。

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