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スペインの伝統的なクリスマスデコレーション、"ベレン"
もうすぐクリスマス! そこここでツリーを見かけ、町を歩くとどこからともなくスペインのクリスマスソング"ビジャンシーコ"が聞こえてきて、夜の町にはイルミネーションが輝き、そして"ベレン"もあちこちにお目見えしました。
"ベレン"はスペインの伝統的なクリスマス飾り。イエス・キリストが生まれたシーンを再現した人形のことです。スペイン以外でもカトリック国ではポピュラーなデコレーションで、日本では教会やカトリック系の学校で何度か目にしたことがあります。
<今年のバレンシア市役所前のクリスマスツリー>
<世界のベレン展で見たバラエティー豊かなベレン>
ベレン(Belén)とは、スペイン語でキリストが生まれた町、ベツレヘムのことを指します。シンプルなものだと、聖ヨセフと聖母マリアと幼子イエスの3人だけの人形で、それに天使や東方の三賢王、羊飼いや牛、ヒツジの像が加わったもの、さらにはジオラマ式に町の様子まで再現し何体もの人形がいる大掛かりなベレンも。凝ったジオラマ式だと、聖書のシーンまでが織り込まれています。サイズは手の平に乗る小さなものから、原寸大まで実に様々。個人宅以外に、教会や学校、商店、銀行、ショッピングセンター、お役所、広場などに飾られ、ベレン巡りはこの時期の人々の楽しみのひとつになっています。
<とある商業施設に飾られたジオラマ式ベレン>
<上のベレンのイエス・キリスト生誕シーン>
<別のジオラマ式ベレンで見つけた新約聖書の受胎告知のシーン>
ベレンは始めからセットになっているものと、パーツを買って自分で作るタイプのものもあり、クリスマス前になると後者の人向けにベレングッズを売る露店や売り場が出ます。私もいつかオリジナルを作りたいと思いつつ、何年も始めていません(^^;)ベレン作りが趣味のベレニスタと呼ばれる愛好家の中には職人並みの腕前の人もいて、私の住む町のお花屋のおじさんは、12月になると商売そっちのけでほかのお店のウィンドーや教会のベレン作りに勤しんでいます。また、息子の学校では毎年近所のベレニスタのおじさんの家にベレン見学に行っているそうです。
<ベレン用品を売る露店>
<私の町で12月のみオープンするベレン用品屋さんが、毎年パーツを足して作っているベレン>
もともとスペインでは、12月8日(無原罪の御宿りの日)から2月2日(聖燭祭)までベレンを飾る伝統がありましたが、最近では1月6日の公現祭が過ぎると片付ける傾向が見られます。イエスの人形は12月24日の夜まで、東方の三賢王の人形は1月6日まで飾らないというこだわりを持った人もいるそうです。ジオラマ式のベレンでは、それまではイエスに会いに行く途中と想定して置かれていた三賢王を、公現祭の日にイエスの前に移動させることもあるとか。面白いですね。
<高級ポーセリンブランド・リヤドロの洗練されたベレン>
このベレンの歴史は長く、1223年のクリスマス・イブにアッシジの聖フランシスコがイタリアのグレッチョ近くの洞窟で執り行ったミサに起源があると言われていますが、既にその前から小さな人形を使ってキリストの生誕シーンを表すことは行われていたそうです。14世紀のイタリアではクリスマスにベレンを飾ることが一般的になり、その習慣は15世紀にかけて徐々にヨーロッパに広まりました。
15世紀後半にはパリに世界初のベレン工場ができ、次いで1471年にスペインのアルコルコンに2番目にあたる工房ができたとのこと。記録によると、現在ベレン用品をはじめとするクリスマス・グッズの販売で有名なバルセロナのサンタ・ルシア市は1786年にはすでに存在していたようです。
<原寸大の大きなベレン>
スペインのクリスマスには欠かせないベレン。観光案内所に行くとその町オススメのベレンを教えてくれますので、この時期にスペインに来られる方はぜひベレン見物も楽しんでくださいね。
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