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バレンシア・マニセス焼きの伝統を守る工房
スペインを訪れ、ベランダや建物の外壁を飾るカラフルな陶器の植木鉢や陶器タイルの装飾、明るい色合いの素朴な絵皿などに目を奪われる人は少なくないでしょう。
スペインの生活には陶器が根付いています。バレンシアも陶器産業が盛んな地域のひとつで、世界的に有名な高級ポーセリン人形のリヤドロもバレンシア企業。そしてバレンシアの陶器と言えば、マニセス焼きです。
マニセスはバレンシア市に隣接する国際空港のある町。8世紀はじめにイベリア半島のほぼ大半を勢力下においたアラブ人がもたらした陶芸文化は、アンダルシア地方からマニセスへと伝わってきました。当時のマニセスには陶芸に適した良い土と用水路があったため、陶器産業が発展したとか。キリスト教徒が国土を再征服した後は、マニセスの領主が産業を積極的に推進。15世紀にはギルドも存在し、中南米へも輸出をしていたそうです。
今回は、仕事が縁で知り合ったマニセス焼きの工房La Ceramica Valenciana de Jose Gimeno(セラミカ・バレンシアーナ・デ・ホセ・ヒメノ)をご紹介します。http://www.lcvgimeno.es
1925年創業のこの工房を切り盛りするのは、創始者ホセ・ヒメノ・マルティネスの孫にあたるビセンテとマリア・ホセ兄妹です。ほかに成形や絵付けの職人さん達が数名。オーダーメイドの製品以外は、昔の陶器のレプリカを専門に作る工房です。
まず工程を簡単に説明すると、最初に数種類の陶土と水を混ぜ原料を作ります。それから型かろくろを使って成形、乾燥させた後に1000~1080度のガス窯で9~10時間かけて焼きます。約1日かけて冷まし、全体に釉薬をかけたら絵付け、そして再び焼成という具合です。
<ろくろで成形をする職人さんの年季の入った作業ぶり>
<成形後、乾燥させたらこの台に並べ最初の焼成。窯はこれともう1つあります>
<霧吹きで軽く水を吹きかけたらすぐに釉薬に浸します>
<絵付けの職人さんがひとつひとつ丁寧に手描き>
<右は絵付け直後のアルバケラ、左は絵付け後に最終焼成をしたもの>
この工房が作る伝統ある陶器の中でもっとも特徴のあるものをご紹介しましょう。すぐ下の写真の陶器です。これはアルバケラと呼ばれ、スペインでもマニセスのみで作られているのだとか。スペイン語のアルバアカ(バジル)から派生したこの壺は、中にハーブを入れて部屋に置いて香りを楽しむために使われていたそうです。
工房の2階は展示スペースになっており、90年近い歴史の中で作ってきた製品のサンプルが置かれています。ここがもう美術館のように素晴らしく、うっとりする空間なのです。
<天井から壁までに陶器が施された部屋>
<スペイン各県の紋章が入った陶器が埋め込まれた天井>
<まだ塗料の色数が極端に少なかった14~15世紀のゴシック様式の陶器。陶器も年を追って進化>
<陶器タイルの宗教画。今でも階段や床に陶器タイルを使用する家があります>
<陶器タイルをふんだんに使ったバレンシア風キッチン>
<レプリカを生産しているだけあって古い陶器のコレクションも。これは15~16世紀の陶器タイル>
ここにはほんの一部しか紹介できないことが残念!割れ物ですが、バレンシアに来たら伝統のマニセス焼きをお土産に買って帰りたいですね。
この工房の作品をバレンシア市内で買うなら、大聖堂と中央市場の中間に位置するレドンダ広場(円形広場)のCOLLA MONLLEOというお店が品揃え豊富だそうですよ。
住所:Plaza Redonda, 11-12 Valencia 電話:96-392-3043
営業時間:10時~14時、16時半~20時(土曜の午後定休)
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