香港の大人たちのほとんどの人がきっときっと懐かしいと思うであろう冬菇亭。冬菇亭とは以前は団地の中にはかならずといっていいほど存在した庶民レストランのこと。その外観が椎茸のようだということで、冬菇（椎茸）の名で親しまれているのです。

最近はこの冬菇亭の数もすっかり減って来てしまいました。でもその一方でリニューアルされる子も少なくないようで、ここもそのひとつ。

美林邨

ベットタウンである沙田の隣駅大圍にある古い団地。その一角にこんな風に可愛く並んでいるのが、新しくなった冬菇亭なのです。

お目当ての店の前に見つけた日本料理店。香港の昔ながらの冬菇亭に日本料理、これは香港人にはどんな風に映るんでしょう。違和感なのか、それとも斬新なのか。

肉餅哥

本来の冬菇亭はたいてい複数のお店が一緒になっていたものですが、最近のはほとんどが1つに1軒という普通のレストラン形式のようです。ということでこちらは肉餅の専門店。

肉餅とは日本で言うなら味付きの蒸しハンバーグというところでしょうか。香港でも普通に見かけるポピュラーな料理のひとつです。でもそれが専門店ともなれば変わり種がたくさん出てくるのは想像できるというもの。

ロブスターそのまま肉餅に蝦親子丼肉餅

うん、なかなかのダイナミックさ。

珈琲練乳肉餅
特製ジャム肉餅
トムヤンクン肉餅
台湾風柚子肉餅

出来ることならまずは一口味見してみたいラインナップといえばいいのでしょうか。基本こういう肉餅は、これとご飯のみという組み合わせ。おかずは肉餅のみなので選ぶのも慎重になってしまいます。

そんな時に役に立つような立たないようなお店のイチ押しメニュー。メニュー見てあれこれ悩むタイプではないのですが、ここは若干ロシアンルーレット的な気分になるのか、そういう意味で悩んでしまいます。

昔ながらの肉餅から見たらこれだって立派な変わり種でしょう。チーズ肉餅。チーズハンバーグと同じようですが、肉餅のほうがちょっと塩見が効いています。そうそう、オーダー時には蒸すのか焼くのかを選択可能。今回は焼きでお願いすることにしました。

卵といっても乗っているのは香港でよく見る鹹蛋。その名の通り塩漬け卵でとってもとってもしょっぱいのが特徴です。これだけでご飯が食べられるのですが、かなり塩分とコレステロールが高いのでご注意を。

店内は家族連れや若い子で満席です。やはりお肉系ということでこんな客層になるのでしょう。

嬉しいことにここはサービス料10％が加算されません。そして面白いのが、伝票に書かれていたこの文句。サービス料はとらないけど、でもサービスがないかって？もちろんそんなわけはありません！！訴えたかったらこちらへ　9288XXXX。どれだけの人がこの文字に気づくかは分かりませんが、クスッとくる面白さです。

壁にもこんなものが。

もし「携帯で遊んでいる」スタッフを見つけたらすぐオーナーに彼らを褒めてあげるよう言ってあげてね。なぜなら彼らは一生懸命お客さんのオーダーを取っているんだから。最近は携帯を使ってオーダーを取るお店が多いですよね。残念ながらここがどうだったかは記憶にないのですが、もしそうじゃなくてこの文章を掲げてるとしたら、このセンスなかなかですよ。実際ここが携帯オーダースタイルだとしたら、この文章はそのまんまってこと。それじゃぁ面白みに欠ける気がするんですけど。

再訪したらまずはここ確認しないと。

敷地を贅沢に使う古い団地は、いつでも穏やかな空気が流れています。意味もない広場や、意味もなく外に座っているお年寄りたち。実際に意味があるかは別としても、こういう"無駄"な感じってある意味ゆとりとも言えますよね。最近のマンションはワンサイズ下のズボンを履くかのように、ギュウギュウパンパンに建てますから。

以前の姿は知らないけど、それでも贅沢な使い方をそのまま引き継ぐ新しい冬菇亭。満腹になってレストランを出た時に、大きな大きな空が見える。これ、なかなか贅沢なことですよ。

肉餅哥

大圍美田路30號美林邨熟食亭5-8號