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いにしえから人々を魅了する華やかなセビージャの町
スペイン南部のアンダルシア地方は、私たち日本人がイメージするスペインそのもの。情熱のフラメンコに闘牛、ひまわり畑、白い家、青い海と空に灼熱の太陽。正式にはスペイン最多の全8県からなるアンダルシア自治州といいます。今回は州都セビージャについてご紹介しましょう。
異なる文化が交錯した歴史ある町
ローマ時代から栄え、西ゴート時代には首都がおかれたこともあるセビージャの町は、イスラム時代にも繁栄し続けましたが、もっとも隆盛を誇ったのはコロンブスが新大陸を発見した後のこと。新大陸からの金銀財宝は、グアダルキビール川をさかのぼりセビージャの町へと着いたのです。スペイン黄金世紀を代表する画家のベラスケスやムリージョはセビージャの出身です。19世紀にはこの町を訪れ魅了される外国人も多かったようで、オペラの「カルメン」や「セビリアの理髪師」が生まれるきっかけにもなりました。
異なる文化が交錯した歴史のせいかエキゾチックな雰囲気を漂わせるセビージャは、現在ではスペイン有数の観光地です。町の雰囲気も住む人々もとても明るく、華やいだ印象のある町です。どんな見どころがあるのかみてみましょう。
大聖堂は世界で3番めに大きなキリスト教寺院
セビージャに来たら見逃せないのが、まずは大聖堂。完成までに100年以上の年月をかけた大聖堂は、バチカンのサン・ピエトロ、ロンドンのセント・ポールに次いで世界で3番目に大きなキリスト教寺院です。スペインの礎となったレオン、カスティージャ、ナバーラ、アラゴン各王の銅像に担がれたコロンブスの棺や、ムリージョ、ゴヤ、スルバランなどスペイン絵画の巨匠の作品群があります。
大聖堂に隣接する高さ97mのヒラルダの塔は、もともとイスラム寺院のミナレットでした。塔の中をぐるぐるとめぐるスロープで展望台まで登ると、町が一望できます。
エキゾチックで幻想的なアルカサル
次にオススメしたいのが、アルカサルです。イスラム芸術を好んだペドロ1世王が、14世紀にイスラム時代の宮殿を改築した建物で、中に入るとアラビアンナイトの幻想的な別世界が広がります。植物がうっそうと茂った庭園も素晴らしいので、ぜひ時間に余裕をもって楽しみたいスポット。このペドロ1世王を主人公にした少女漫画『アルカサル 王城』を読んで、ここを訪れる人も多いそうですよ。
大聖堂とアルカサルに隣接するサンタ・クルス地区は旧ユダヤ人街で、細い小道が迷路のように入り組んでいます。ところどころに花をたたえた窓や小さな広場もあり、ここを歩くと異国情緒を強く感じることができます。バルやお土産屋さんも多いので、散策にはもってこい。セビージャNo.1との評判のタブラオ『ロス・ガジョス』もここにあります。フラメンコを観るなら、開演時間の早いフラメンコ舞踊博物館もオススメ。セビージャはフラメンコがとても盛んで、フラメンコ留学のメッカでもあるんです。
ふんだんに使われた陶器タイルが美しいスペイン広場
セビージャでは1929年にイベロ・アメリカ博覧会が開かれましたが、その会場としてつくられたフォトジェニックなスペイン広場も訪れたい場所のひとつ。レンガ色の半円型の建物の内側には、スペイン各県を描いた美しい陶器タイルの絵やベンチが並び圧巻です。ボート遊びができる池にかかる橋にも陶器タイルがふんだんに使われています。この広場は、名画『アラビアのロレンス』や『スターウォーズ』のロケに使われたことでも知られています。
世界一のムリージョのコレクションを所蔵する県立美術館にも足を延ばしたいもの。ムリージョやスルバラン、ベラスケス、バルデス・レアルなどのスペイン画家の宗教画以外に、19世紀以降に描かれたフラメンコや闘牛士、あのカルメンが働いていたタバコ工場(現セビージャ大学)で働く女性たちなどの風俗画も見応えがあります。昔の修道院を改築した中庭もある建物も一見の価値あり。入り口前の広場に立つ銅像は、もちろんムリージョです。
名所見物をしなくても歩くだけで楽しい町
ほかには、2011年に完成した地元ではセタ(きのこ)と呼ばれる超近代的なメトロポル・パラソルや救済病院、インディアス古文書館、黄金の塔、闘牛場、ピラトの家、郊外にあるトラヤヌス帝やハドリアヌス帝が生まれたローマ時代の遺跡イタリカなどなど見どころはたくさんあります。また、こういった名所を訪れなくても、旧市街を歩くだけでも楽しいのがセビージャ。町のあちこちには個性的なバルや古い建物があり、グアダルキビール川沿いの遊歩道や川にかかる橋など、とにかく情緒にあふれる町なのです。夜は地元っ子のようにバルのはしごをしてみましょう。
春に行われるセマナサンタ(聖週間)のプロセシオン(宗教行列)とフェリア(春祭り)は盛大で、スペイン国内のみならず世界中から多くの人が見物にやってきます。できれば、どちらかのお祭りに合わせてセビージャを訪れたいですね。セビージャが忘れられない町となること間違いありません。
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田川敬子(Keiko Tagawa)
- 1996年スペインにひとめぼれ。以後何度も渡西し、2002年春に夢がかなってスペインで日系企業に就職。その後現地企業を経て、現在はオリーブオイルソムリエ/テイスターやライターとして活動中。