10月9日はバレンシア州の日。バレンシア州はスペイン東部海岸に面する州で、州都バレンシアはスペイン第3の都市です。この日は州の祝日で、あちこちで祝賀行事があるほか、一部地域ではバレンタインデーに似た習慣もあります。いったいどんな日なのでしょうか。

10月9日はバレンシアの歴史上とても大切な日

バレンシアではもう何百年にも渡ってこの日を祝い続けています。なぜ10月9日なのか。そこには歴史的な背景があるのです。8世紀はじめにイベリア半島に侵入してきたイスラム教勢力により北部に追いやられたキリスト教勢力は、以後800年近くの歳月をかけて徐々にイスラム勢を半島から追い出しにかかります。現在のバレンシア市がアラゴン国王ハイメ1世によってキリスト勢力下に戻ったのは1238年のことでした。この時、ハイメ1世王が新しい支配者としてバレンシアに入ったのが10月9日だったのだとか。以来、この日はバレンシアの日となりました。

美しい民族衣装で踊るホタ・バレンシアーナ

毎年10月になるといくつもの祝賀プログラムが始まりますが、もちろんメインは10月9日。まずは0時に華々しく花火大会が開かれます。当日の昼には、市役所広場でバレンシアっ子が大好きな爆竹ショーも（2017年は13時半開催でした）。2017年度は日曜日にあたる前日に行われましたが、美しい民族衣装で着飾った人々による民族舞踊ホタ・バレンシアーナのデモンストレーションは一見の価値があります。

延々と3時間も続くイスラム教徒とキリスト教徒のパレード

また、夕方には"イスラム教徒とキリスト教徒"のパレードがあり、これも見ごたえ十分。ラ・パス通りからサン・ビセンテ・マルティル通りを抜けて市役所広場に至るルートには、見物席が設置されます。予約席でない限り先着順で、ひと席4ユーロ。まわってくる係にお金を払うだけです。このパレードは延々と3時間も続くので、最初から最後まで見たいならば椅子に腰かけて見物できると楽ちん。2017年は30分前でも2席並んで確保することができました。

ちなみに、"イスラム教徒とキリスト教徒のお祭り"はスペイン語でモロス・イ・クリスティアーノス（Moros y Cristianos）と呼ばれ、バレンシア州のアリカンテ県を中心にスペイン各地でそれぞれ異なる日程で催される行事。もっとも知られているのは、アリカンテ県のアルコイです。バレンシアの日には、お祭りの一部であるパレードだけが開かれます。

バレンシアのバレンタインデーは男性から女性に

そして、この日はバレンシア市とその周辺の一部地域では、男性が愛する女性にプレゼントを贈るバレンタインデーに似た習慣もあるのです。日本のバレンタインデーは女性から男性なので、ちょうど反対ですね。バレンシアではチョコレートではなく、マジパンを贈ります。マジパンとは、アーモンドの粉と砂糖で作る練り菓子。10月9日が近付くと、お菓子屋さんのウィンドーには果物や野菜をかたどった小さくてカラフルなマジパンが並びます。このマジパンをスカーフに包んでプレゼントにするのがバレンシア流バレンタインデー。愛する奥さまや恋人、ときに母親に贈ります。

この習慣の由来には諸説あります。昔からバレンシアでは野菜や果物の栽培が盛んです。ハイメ1世王がバレンシアを治めることになったとき、農民たちが王妃に自分たちが作った産物を贈ったことを起源とする説をよく耳にします。また、スカーフに包むのは、バレンシアでは絹産業が栄えていた時代があることの名残なのだとか。最近は2月14日のバレンタインデーが主流ではありますが、昔ながらの10月9日のバレンシア流バレンタインデーがこれからも続くことを願います。この時期にバレンシアにいらっしゃる方は、お土産にマジパンはいかがでしょうか？

イベント見物や観光を目いっぱい楽しめる1日

<セラーノスの塔周辺では中世市場が開かれる>

日本では知られていないものの、花火や爆竹、民族舞踊、イスラム教徒とキリスト教徒のパレードなど数々のイベントを一度に楽しめるバレンシアの日。この期間は入場無料になる市内の観光スポットも多数あるので、10月9日のバレンシア滞在はオススメです！ なお、イベント内容や無料公開になる観光スポットは毎年変わりますので、詳しくは観光案内所でお尋ねくださいね。