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"死にゆく村"チヴィタ・ディ・バニョレージョ。その歴史と魅力
※2018年4月、加筆修正をいたしました。
※サムネイル写真:Pixabay(CC0)
チヴィタ・ディ・バニョレージョは、まるでファンタジーの世界のように幻想的な村。そこから見られる絶景と趣のある村は、イタリア内外から注目を集めています。
現在では日本でも「天空の村」として注目されるようになっていますが、その歴史についてはご存知でしょうか? 古代ローマから続く建築様式によって作られた、この村の魅力をご紹介します。
※掲載写真はイメージです。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づき掲載しています。
参考:クリエイティブ・コモンズ・公式サイト(外部サイトに遷移します)
目次:クリックで各項目に移動します
- ローマの外れに佇む、イタリアの絶景「チヴィタ・ディ・バニョレージョ」とは?
- 古代ローマ時代から続く、要塞の村
- チヴィタ・ディ・バニョレージョへ行くには
- 時間が止まっているかのような趣に感動...
- 今ではイタリアでも注目を集める観光地に!でも......
ローマの外れに佇む、イタリアの絶景「チヴィタ・ディ・バニョレージョ」とは?
イタリア中部、ウンブリア州とラツィオ州の国境近くに、ぽつねんとある小さな丘上都市。
そこは某アニメ作品のモデルの一つとも言われ、空に浮かぶような姿から"天空の村"とも称されているチヴィタ・ディ・バニョレージョです。
類稀な景観を持ち、牧歌的なイタリアの自然風景に幻想的な趣を加えている小さな村。しかし一方では、"死にゆく村"とも言われています。
今回は、このチヴィタ・ディ・バニョレージョの素顔と共に、なぜ"死にゆく村"と言われているのか、その謎に迫ってみることにしましょう。
古代ローマ時代から続く、要塞の村
チヴィタ・ディ・バニョレージョの起源は、なんと古代ローマ時代以前。実に2000年を優に超える昔、まだローマが建国される前にまで遡ります。ここは、それ以前に暮らしていた民族エトルリア人(※)の造った村でした。
Photo by Pixabay(CC0)
彼らは敵から身を守るため、切り立った崖や標高の高い丘上の狭い場所を天然の要塞として、村を築いたのです。 この辺りの土地は凝灰岩で出来ており雨風に侵食されやすく、侵食によってできた崖や丘は彼らが都市を築くのに好都合でした。
※註:エトルリア人とは、紀元前8世紀頃には存在していた人々の名称。古代ローマ人と同化したことによって消滅したとされます。当時としては高度な建築文化を持っていたとされるのですが、その歴史は未だ不明な点もあります。
ところが、この辺りはイタリア半島でも地震の多い地帯。過去に何度も地震に見舞われ、少しずつ村は崩壊していきました。
徐々に人口の流出が続き、丘上の村部分を繋いでいた唯一の道が崩壊してからは、古くから住む老人と崩壊した建物が残るだけとなり、チヴィタ・ディ・バニョレージョは近代化から取り残された、文字通り"死にゆく村"となったのです。
出典:Flickrより
Photo by ho visto nina volare[Civita di Bagnoregio](CC-BY-SA2.0)
チヴィタ・ディ・バニョレージョへ行くには
チヴィタ・ディ・バニョレージョへ訪れるには、ウンブリア州テルニ県オルヴィエートの村を起点として30分ほど。近くまでは車でアクセスします。辺りになだらかな丘の続く道、ブドウやオリーブの畑が点在する美しい景色の中のドライブです(※)。
近くのバニョレージョ村を抜けると、まもなくあの幻想的な村が姿を現します。
車で行けるのはここまで。現在チヴィタ・ディ・バニョレージョに入るには、聳える丘上に続く全長300m超の橋を徒歩で渡るより方法がありません。
※註:主要都市からの距離は、ローマからチヴィタ・ディ・バニョレージョまで約130km、フィレンツェからは約200km離れています。現地の交通網につきましては、最新情報をご確認いただきますようお願いいたします。
時間が止まっているかのような趣に感動
村に続く橋を歩くと、周囲は360度自然の織りなすダイナミックなパノラマ。 イタリアの秘境とも言えるべき、素晴らしい風景を目の当たりにすることができます。
エトルリア起源の立派な城門をくぐると、そこだけ流れる空気が違っているように感じました。 文明と隔絶された小さな小さな村の息吹が感じられるようです。
現在ここで暮らしている住人は僅か20人(2015年初出時)。 30分ほどで周れてしまうほど小さな村には、彼らがひっそりと暮らしている様子も見てとれます。
出典:Flickrより
Photo by ho visto nina volare[Civita di Bagnoregio](CC-BY-SA2.0)
村の中心には中世の趣を伝える古びたサン・ドナート教会が、今なおわずかな住民たちの信仰の拠り所となっています。車が入りこめないため、イタリアの大都市で感じるような煩いエンジン音やクラクション、排気ガスとも無縁。
そこには、澄んだ空気と自然の音のみが存在するのです。
Photo by Helena Photo by Helena[San Donato](CC-BY2.0)
今ではイタリアでも注目を集める観光地に! でも......
住民が減る一方で、その歴史的価値と美しい景観からチヴィタ・ディ・バニョレージョは近年徐々に注目を集め、観光客が訪れるようになってきました。
お陰で村の修復が進み、小さいながらもトラットリアやバールは営業を始め地産のワインやスローフードを味わえる店もオープンしています(※)。
訪れる人が増えてきたことで、この村はある意味活気を取り戻しつつあるのかもしれません。 けれど、観光客が増え続け設備や修復が整うことと引き換えに、住民だけがひっそりと暮らしていた頃にあった独特の静けさや一種の物悲しさ、計算されない天然の美しさなどが徐々に失われていくのもまた事実です。
また、自然の力には抗えず、村の土台となる凝灰岩質の丘は確実に侵食が進んでいきます。 そういった意味では、チヴィタ・ディ・バニョレージョはやはり"死にゆく村"なのかもしれません。
この村が、かつての姿をすっかり失い"死んでしまった村"になってしまう前に、一度訪れてみてはいかがでしょうか。
※註:現地のレストランレポートはこちらをご覧ください。
「天空の村」のレストラン!?チヴィタ・ディ・バニョレージョの人気オステリアへ行ってみました。
チヴィタ・ディ・バニョレージョ基本情報
名前(イタリア語):civita di bagnoregio
Googleマップ:以下をご覧ください。
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「イタリアの最も美しい村」クラブに加盟しているチヴィタ・ディ・バニョレージョ。同じクラブに加盟する村はイタリア各地にあり、それぞれが魅力に満ちています。
以下の2つも、クラブに加盟しています。
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