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【山登り道】世界遺産 富士山頂で起こった15分間だけの奇跡
こんにちは!たびこふれ編集部のシンジーノです。
2017年7月29日、私は生まれて初めて世界遺産 富士山に登りました。
今回はその時起こった記憶に残るエピソードをお話します。
富士山は毎年7~9月の限られた期間が登山シーズンとなり、 日本中どころか世界中から年間約20万人もの人々が登ります。
それだけ多くの人々が集まる為、シーズン中の山小屋は大混雑、 特に週末は畳1畳に2人またはそれ以上の人が横になることもあります (山小屋は人命救助の役割もあるので、満室だから宿泊を断るということは基本的にできません。)
今回は事前に体力作りを怠らず、他の山でトレーニングをした後、日帰り登山で男3名(K隊長、N係員、そして私)にて挑みました。
註:これは2017年当時の話で、富士登山オフィシャルサイトでは、弾丸登山、軽装登山の危険を警告し、山小屋泊、無理のない登山計画の遂行を推奨しています。
私は最寄り駅朝4時59分発の始発電車に乗って、JR御殿場駅に8:00集合。 そこから路線バスに揺られること約1時間、登山口である須走口5合目に着きました。 登山口で標高約2000m。高地に体を順応させる為に茶屋で30分から1時間身体を慣らします。
今回私たちが取ったルートは須走ルートです。 富士山までのアプローチは4つあります。
一番メインの銀座コースである吉田口ルート、距離が最長の御殿場口ルート、距離は短いが急登が続く富士宮ルート、 そして岩と砂の多い富士山にあって歩き始めは緑に囲まれた道を歩ける、人も少なめで富士山リピーターに人気の須走ルートです。
ルートにもよって違いますが、富士山は概ね登りに6時間、下りに3時間位かかります。(消費カロリーなんと約4,000キロカロリー!)
10:30に5合目から登山スタート!
天気予報は、終日曇り、昼頃から少雨というイマイチな状況でしたが、朝5合目の時点で既に雨が降っていました。 前線はありませんが、台風の影響と思われる雲が居座っているようでした。 雲は厚くはないようなので、風が吹けば晴れ間も見えるだろうと希望を胸に出発!
標高差約1,700mをひたすらひたすら登っていきます。
途中、6合目、7合目、8合目、9合目と節目には山小屋があり、30分から1時間に一度小休憩しながら登っていきます。
高山病の恐れがあるので、できるだけゆっくり、一歩づつ上がっていきます。
雨の中レインウエアを着て登っていくのはなかなかつらいものです。
富士山は霊山で古来より修験者が登る山です。 正に修行者の気持ちで足を運びます。
富士山ならでは体験できることとは・・・
富士山では面白いことも体験できます。
それは「雨が下から降ってくる」ということです。
???
どういうことかというと、富士山は標高が高いので、雲が人間より下にくることがあります。 普通、雨は雲が発生してその下に雨を降らしますが、雲が自分たちの下にあり、 風が吹いて舞い上がり、雲の上では雨が下から降る(というか吹き上げる?)現象が起こるのです。 なんとも不思議な気分です。
さて、雨は朝から降り続き、止む気配はありません。 視界は悪く、眺望も真っ白で何も見えません。 見えるのは、黒い岩、砂、土、それだけです。
登り始めて約4時間、なんとか8合目まで登ってきました。
疲労はピークに、さあどうする?
須走ルートはここで吉田口ルートと合流します。 この先からは富士山神社の境内に入りますが、傾斜もきつくなり、空気も更に薄くなっていきます。 (酸素量は下界の60%~70%程度に)
8合目に着いたちょうどその頃、ゴロゴロ・・・ゴロゴロ・・・ 雷が聞こえてきました。 富士山では逃げ場がありません。 落雷の危険性もある為、雷がひどくなると登頂をあきらめ、下山するか山小屋に避難するかを 判断しなければなりません。
私の疲れはピークに達していました。 初めての富士山でとりあえず境内である8合目までは来ることができた。 この先は未知の世界だけれど、雷は怖いし、仮にどうにか登頂できたとしても朝からずっと雨で視界は最悪。 良い眺望など望むべくもないでしょう。 今回は日帰り登山ということもあり、下山後の最終バスに乗り遅れては大変です。 私は登山では登りよりも下りが苦手で人より時間がかかる為、そういった不安もありました。 それならここ8合目でさっぱりあきらめて早めに下山し、御殿場でゆっくり酒でも飲んだ方がいいんじゃないか・・・
そんなことを思っていました。
雨は降り続いていましたが、雷は聞こえなくなりました。
「よし、行こう!」K隊長とN係員は行く気満々です。 8合目から頂上までは1時間~1時間半、急な登りが延々続きます。
普段は8合目~山頂までは人が溢れて大渋滞になるそうですが、今日は雨のせいもあり、人は比較的少ないようでした。
登山の時、重要なのはリズムです。渋滞で止まったり、歩いたり、ペースが乱れると疲れも倍増します。
気力だけで目の前の一歩に足を出し、深呼吸で酸素を取り込む。 雨の為、めざす山頂の姿も見えません。
「山頂までたどり着いたら下りられる。とにかく山頂にたどり着いたら・・・」
その思いだけで私は、無言でゆっくりゆっくり足を前に出していきました。
そして山頂の鳥居をくぐろうとした瞬間・・・
まさにその刹那!
なんと太陽光が差し、今日一度も見えなかった青空がのぞいたのです。
ほんとうに登頂のその瞬間でした。
「最後まであきらめずに山頂をめざしてよかった、今日富士山に来てほんとうによかった・・・」
山小屋の屋根がキラキラと輝いているかのようでした。
そして写真を撮っている間に太陽は隠れ、再び曇天になりました。
その後、雨はずっと降り続き、下山まで一度も太陽が顔を出すことはありませんでした。
ほんとうにあの15分間だけ青空が見えたのです。
気象状況でいえばたまたまの偶然だったのでしょう。
ただ、8合目であきらめて下山していたら、山頂でのあの青空がなかったら、私はもう二度と富士山に登ろうとは思わなかったかもしれません。
あの山頂での15分間の奇跡を私は忘れないでしょう。
今回、十分に準備をして臨んだとはいえ、富士登山はかなり体力を使います。安易に登るのは危険です。
次回はたっぷり時間をとり、山小屋に泊まって富士山を楽しみたいと思います。
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シンジーノ
- 3人娘の父で、最近は山歩きにハマっているシンジーノです。私は「お客さまが”笑顔”で買いに来られる商品」を扱う仕事がしたいと思い、旅行会社に入って二十数年。今はその経験を元にできるだけ多くの人に旅の魅力を伝えたいと“たびこふれ”の編集局にいます。旅はカタチには残りませんが、生涯忘れられない宝物を心の中に残してくれます。このブログを通じて、人生を豊かに彩るパワーを秘めた旅の素晴らしさをお伝えしていきたいと思います。